聖地巡礼とは

・ 聖地巡礼とは、アニメ作品や映画・ドラマなどのファンが、作品の舞台・モデルとなった地域やロケ地などを実際に訪れ、その作品の世界に浸ること。聖地巡礼とは本来、宗教において信者が聖地を参拝して回ることであるが、近年では、若者を中心とするアニメファンが作品中に登場する土地や建物を聖地に見立てて訪ねることを指して、聖地巡礼と言う。

・ 聖地巡礼は、観光学においては「コンテンツツーリズム」と呼ばれる。この言葉が初めて使われたのは2005年のこと。国土交通省・経済産業省・文化庁によって発表された「映像等コンテンツの制作・活用による地域振興のあり方に関する調査報告書」のなかで言及されており、当時すでに注目され始めている現象だった。

・ 現在の聖地巡礼の流行の先駆けとされるのは、2007年にテレビ放映されたアニメ『らき☆すた』。この作品には、埼玉県久喜市の鷲宮神社をモデルにした神社が登場するが、テレビ放映後の2008年の正月三が日に鷺宮神社を訪れた初詣客は、前年比2倍の約30万人。また、久喜市商工会鷲宮支所の試算によれば、アニメ放送開始以後8年間で約20億円もの経済効果がもたらされている。こうした事例からわかるように、聖地巡礼型の観光はアニメや映画などのコンテンツを地域の観光資源として活用する動きであるとして、各地方から高い関心が寄せられている。

・ 2010年代以降は、スマートフォンやSNSの普及により、アニメの舞台を訪れたファンらが情報を拡散させることで、聖地巡礼の流行が加速した。2016年にはその流行に拍車がかかり、同年8月に公開された大ヒットアニメ映画『君の名は。』の舞台となった岐阜県飛騨市がファンによる聖地巡礼の場として注目されたことから、聖地巡礼という言葉は「現代用語の基礎知識」選 2016ユーキャン新語・流行語大賞でベスト10に選ばれた。

なぜいま聖地巡礼が流行しているのか

・ 京都大学教授の楠見孝氏(認知心理学)は、聖地巡礼という行動が、聖地巡礼を行う人にとってどのような影響を与えるかについて、心理学的な観点から次のように解説している。

(楠見氏は)聖地巡礼について、「作品世界を追体験し、登場人物と同じ気持ちを味わいたいというのが最も強い動機だろう」と語る
(中略)
現場に行くことで、想像の中で広がっていた作品の世界を、身体感覚をもって味わうことができ、自分自身も作品と一体化したような没入感を得られるという。

(引用元:yomiDr.|聖地巡礼、ゆかりの地訪ねる…「作品世界」追体験し没入感

・ 聖地巡礼は従来、ファンが作品の舞台となった場所を調べて特定し、その情報がインターネット上で広められ、さらに多くのファンが巡礼する、という流れで行われてきた。しかし近年のアニメ作品の中には、実際の街を舞台にし、本物の風景とそっくりに丁寧に描かれるものが増えている。そのような作品の舞台となった地域が一丸となって聖地巡礼を歓迎し、現地の観光案内所でマップが作られていることも珍しくない。こうした背景から、聖地巡礼がやりやすくなっただけでなく、「聖地巡礼をして作品により没頭したい」というアニメファンが増えてきた。

・ 例えば、2012~2013年にテレビ放映され、2015年には映画にもなったアニメ『ガールズ&パンツァー』には、作品の舞台となった茨城県大洗町の風景が詳細に描かれている。大洗町では町ぐるみで、作品を活用した観光客誘致に積極的に取り組んでおり、町内の喫茶店で作品に関連するメニューを提供したり、関連グッズを販売したりしているほか、町内の各所をめぐることで現地でしか味わえないオリジナルのシナリオを楽しめる体験型のアドベンチャーゲームを実施するなど、聖地巡礼者のさらなる増加につなげている。

・ また、聖地巡礼に役立つスマートフォンアプリも開発されている。2013年リリースの「舞台めぐり」というアプリでは、AR(拡張現実)の技術によって、目の前の風景とアニメに登場するキャラクターを重ね合わせた写真を撮ることができる。アプリの仕組みは次のとおり。

登録作品の数は58作品(16年12月6日時点)に及ぶ。スマホの地図機能と連携し、自分の現在位置と照らし合わせ、作品ごとに舞台がどこにあるかを作中のシーン別にわかりやすく教えてくれる。しかも、単に場所を教えてくれるだけでなく、作品中で実際に使われたカット付きで紹介されるようになっている。

(引用元:dot.|ただの商店街を“テーマパーク”に…アプリが描くアニメ「聖地巡礼」の新たなカタチ

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聖地巡礼がもたらす影響

・ 前述のように、聖地巡礼には観光振興の役割が期待される。アニメ作品の舞台となったことを軸に観光客を呼び、現地での消費を促すことは、地域経済の活性化になる。こうした聖地巡礼の動きを全国に広げるべく、2016年9月、KADOKAWAやJTB、JALなど、出版・旅行業界の5社が、アニメツーリズム協会を設立した。協会は、全国88か所の「アニメ聖地」を認定し、それらをつないだ広域の観光ルートを整備する方針。聖地巡礼を海外からの観光客にもアピールし、2020年に国内外から年400万人の観光客にアニメ聖地を訪問させる目標を掲げている。

・ 聖地巡礼は、地域振興や観光の活性化の観点で大いに歓迎されているが、行き過ぎた聖地巡礼が問題となるケースもある。例えば、2016年に放送され大ヒットしたテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)では、一部のドラマファンが、ドラマの中で主人公らが暮らすマンションのロケ地を特定してインターネット上で公表し、マンションの住居スペースに立ち入ったり写真撮影をしたりするなどして、マンション住民に迷惑をかけていることが問題視された。聖地巡礼をする際は、節度と常識のある行動が求められる。

(参考)
コトバンク|聖地巡礼
日本経済新聞|アニメ「聖地巡礼」 地域振興に
NIKKEI STYLE|アニメの舞台がスマホARで進化 新・聖地巡礼(上)
NIKKEI STYLE|大洗の割烹旅館が名所に 新・聖地巡礼(下)
NHK|アニメを旅する若者たち “聖地巡礼”の舞台裏
NHK|“アニメ聖地”を全国に 目標400万人
yomiDr.|聖地巡礼、ゆかりの地訪ねる…「作品世界」追体験し没入感
dot.|逃げ恥「マンション騒動」、“聖地巡礼”見直すきっかけにも?
dot.|ただの商店街を“テーマパーク”に…アプリが描くアニメ「聖地巡礼」の新たなカタチ
Kabutan|【特集】「聖地巡礼」400万人へ、カドカワらアニメツーリズム協会設立 <株探トップ特集>
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞 全授賞記録|第33回 2016年 受賞語 聖地巡礼
コンテンツツーリズム学会|設立趣意
Wikipedia|コンテンツツーリズム