主権者教育とは

・ 主権者教育とは、主権者としての意識を醸成し、主権者に求められる力を養うための教育。2016年7月の参議院議員選挙から、選挙権年齢が18歳に引き下げられたことを受け、2015年後半ごろから主に高校で行われるようになった。

・ 欧米では1990年代以降、子どもの公共意識、市民としての意識を高めるシチズンシップ教育が定着していたが、日本で主権者教育が盛んに議論されるようになったのは近年のこと。2011年に総務省が初めて、主権者教育について文書で次のように定義した。

「社会参加に必要な知識、技能、価値観を習得させる教育」の中心である「市民と政治との関わり」を教えることを「『主権者教育』と呼ぶことにする」

(引用元:産経ニュース|そもそも主権者教育って? 18歳選挙権で副教材

・ 教育界では主権者教育の定義は不明確なままであったが、2015年6月に選挙権年齢が18歳に引き下げられることが決まると、同年11月に文部科学省が、主権者教育のあり方について話し合う検討チームを設置して初会合を開催。主権者教育の目的と内容について検討が進められ、2016年3月には中間まとめが、6月には主権者教育の実施状況調査結果を含む最終まとめ報告書が発表された。

・ 文部科学省の資料では、主権者教育は「主権者に求められる力の養成」と表現され、その目的は次のように説明されている。

単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身に付けさせること

(引用元:文部科学省|「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ~主権者として求められる力を育むために~

主権者教育の内容

・ 文部科学省がまとめた報告書では、特に高校における主権者教育の内容について、次のように記載されている。

授業において現実の具体的な政治的事象を扱うことや、模擬選挙や模擬議会など現実の政治を素材とした実践的な教育活動を積極的に行うことを促す。その際、高等学校等において、政治的な中立性を確保した上で、教育指導がなされるよう、同通知の内容や、教職員等の選挙運動の禁止事項等について、周知徹底を行う。

(引用元:同上)

・ これについて、主権者教育における「中立性の確保」に関する言及が、主権者教育への妨げになっているとして、教員の間で解釈が揺れている。例えば、「普段の言動から政治的な中立には気を使っているので、主権者教育で中立性が言われたところで特段問題はない」「法律に照らせば当たり前」とする意見から、「普段の授業では教員は自分の意見を表明するのに、主権者教育だけは中立でなければならないというのは奇妙」「教員は政治的意見を持てないのに生徒には意見を持ちなさいと言うのは無理がある」といったものまで、さまざまな意見がある。各党の主張を並列してすべて比較する、新聞は主要5紙を必ず網羅するなどすれば問題ないとされるものの、教材づくりや現場運営にはハードルが生まれている。

・ 主権者教育には、学習者自身が主体的に学ぶアクティブラーニングの活用が奏功すると見込まれている。模擬選挙などを行ったり、政治的・社会的テーマに沿って話し合う場を設けたりすることで、政治や投票、社会のありかたに関する考えを深めさせることは、「主権者として自立し、課題解決を主体的に担う」という主権者教育の目的に資することであり、主権者教育のなかで大きな役割を担うことが期待される。

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2016年夏の参議院議員選挙に向けた主権者教育

・ 文部科学省が2016年4~5月に全国の高校を対象に実施した調査によると、高校3年生以上に主権者教育を行った高校は94.4%にのぼったものの、その内容別割合は次の通りの結果であった。

「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」が89.4%なのに対して、「現実の政治的事象についての話し合い活動」は20.9%、「模擬選挙等の実践的な学習活動」は29.0%にすぎませんでした。

(引用元:産経ニュース|18歳選挙で「主権者教育」の実態は?

・ この結果からは、体験による実践的な授業や話し合いを交えた授業が充実させられていないことが分かる。アクティブラーニングが奏功するという期待がある反面、教育現場ではそれを実行できていないことから、このあたりの充実が今後の主権者教育の課題であると言える。

・ 一方で2016年の参議院議員選挙の投票率を見ると、18、19歳の合計投票率は45.45%で、18歳が51.17%、19歳が39.66%だった(全体の投票率は54.70%。最近の国政選挙での20代の投票率は30%半ば)。18歳と19歳の投票率の差は、高校3年生である18歳のほうが、多くの19歳にくらべ、充実した主権者教育を受けることができたために生まれたと見られている。この点で、主権者教育には一定の成果があったと言える。

・ 主権者教育は、学校だけで行われるべきものではなく、各家庭でも行われるべきものである。文部科学省も、主権者教育の活動は学校・家庭・地域で実施することが必要であると述べている。これについては、ジャーナリスト細川珠生氏の以下の主張が、大いに参考になる。

選挙制度や国会の仕組みをおさらいするだけでは、ほとんど効果がない。
(中略)
学校教育では限界があるとすれば、本当に主権者教育ができるのは誰であろうか。それは親である。つまり家庭において、政治に対し、どのように考えるかを教えるべきなのである。
(中略)
日ごろから、政治で議論されていること、社会で話題になっていることを、家庭での食卓の話題にできれば、あるいは父親と母親が話題にしていれば、それを一方的に聞くだけであっても、子供は自然と関心を持つようになる。
(中略)
ぜひ、各家庭でそれらを話題にし、まっとうな主権者を育ててもらいたい。そのためにはまずは大人自身が学び、若者のお手本であるという自覚を持つことが重要である。

(引用元:産経ニュース|主権者教育の基本は家庭に ジャーナリスト・細川珠生

(参考)
Weblio 辞書|主権者教育
産経ニュース|そもそも主権者教育って? 18歳選挙権で副教材
文部科学省|「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ~主権者として求められる力を育むために~
文部科学省|「主権者教育の推進に関する検討チーム」最終まとめ~主権者として求められる力を育むために~
産経ニュース|18歳選挙で「主権者教育」の実態は?
産経ニュース|主権者教育 選挙後こそ本格的に
朝日新聞DIGITAL|政治的中立性は主権者教育の制約? 高校教師たちに聞く
朝日新聞DIGITAL|(2016参院選 投票前に考える)「主権者教育」縛られた教室で
時事ドットコムニュース|「主権者教育に効果」=18歳投票率5割超え-実践の高校教師ら【16参院選】
産経ニュース|主権者教育の基本は家庭に ジャーナリスト・細川珠生
日本経済新聞|主権者教育検討チーム初会合 文科省