スラッシュキャリアとは

・ スラッシュキャリアとは、スキルや経歴、肩書などを一つに限定せず複数持ち、多方面で仕事をするキャリア形成の方法のこと。肩書を「/(スラッシュ)」でつなぎ続けて書き表すことから、スラッシュキャリアという。スラッシュキャリアを実践している人を「スラッシャー」と呼ぶ。近年、特に20代後半~30代の間で増えている。

・ スラッシュキャリアでは、例えば「弁護士/ジャーナリスト」「Webデザイナー/コピーライター」「俳優/モデル/料理研究家」のように、複数の仕事を掛け持つ。ここには、必ずしもビジネス色の強いものだけを並べなければならないわけではなく、「弁護士/ジャーナリスト/母親」「Webデザイナー/コピーライター/PTA役員/父親」のように、プライベートな肩書を載せても良い。

・ スラッシュキャリアとは、2007年にアメリカの作家・ジャーナリストのMarci Alboher氏が、著書『One Person/Multiple Careers: A New Model for Work/Life Success』のなかで生み出した言葉。Alboher氏がスラッシュキャリアという言葉を作ったことで、複数の肩書を持つことに対し人々がもつイメージは、従来のネガティブなものからポジティブなものへと変わったと言われている。ファッション誌『ELLE』副編集長の三宅陽子氏は次のように解説する。

今まで一つ以上の肩書きがあると「副業」とみなされることが多く、どうしても「副業」という言葉には、経済的に不安定なため行っているというマイナスなイメージがありましたが、スラッシャーという言葉の誕生により、プラスなイメージに払拭されました。

(引用元:J-WAVE NEWS|渡部建がお手本? 現代に増える「スラッシャー」とは

スラッシュキャリアが注目される背景

・ スラッシュキャリアには、複数の仕事を同じ比重で務める場合や、メインの仕事を持ちながら他の会社での副業を持ったり個人事業を展開したりする場合など、いくつかの種類がある。いずれの場合においても、副業にはもともと、ひとつの肩書による収入では十分でない場合により収入を多く得るために行われるものだというマイナスなイメージが伴うことが多かった。

・ しかし近年、複数の肩書を持つことにはメリットがあると考えられるようになり、スラッシュキャリアの考え方が見直されるようになってきた。日本では従来、社員の副業を認めない風潮が強かったが、最近では社員がスラッシュキャリアを築くことが企業にも良い影響をもたらすとして、社員の副業を認める制度を導入した例も出てきている。ロート製薬は2016年2月、社員が休日や就業時間外に社外で働き収入を得ることを認める制度を始めた。その狙いとは、以下のように、スラッシュキャリアにより得られる経験に価値があるとする考えからきている。

ロート製薬株式会社のプレスリリースには、同社が従業員の兼業を解禁する理由としては「社外でも経験を積むチャンスは、個人の中に秘められた可能性を伸ばすことができると考えています。新たな挑戦をする際にも、人の力が必要です。自立・自走する人を一人でも多く育てていきます」と明確なビジョンを掲げています。

(引用元:DAILY ANDS|キャリア形成の新トレンド「スラッシュキャリア」とは

・ スラッシュキャリアが企業にもたらす他の影響として、人脈の広がりから新たな取引が生まれる可能性も期待される。ソフトウェア開発のサイボウズは社員の副業を認めているが、そのことについて社長の青野慶久氏は次のように説明している。

副業がOKなのも、結局は社員が別の働き口で新しいノウハウを身に着けることができるし、場合によっては、サイボウズの導入を薦めてくれるかもしれません。

(引用元:美ノ匠|世界中の女性たちがもっと自由に、もっと輝く!女性の自立した生き方や働き方の鍵は、『スラッシュ・キャリア』??

・ 近年の日本では終身雇用よりむしろ転職することのほうが一般的になってきている。そのため、ビジネスパーソンとしての価値を高めるためにも、スラッシュキャリアは注目されている。スラッシュキャリアとは、異なる肩書を別個に持つことにとどまらず、異なる専門性を掛け合わせることでその人の希少性を高めることでもある。転職やライフイベントなどを繰り返す中で自然とスラッシュキャリアが形成される人もいれば、ビジネス市場での価値を高めるために、意図的にスラッシュキャリアを形成していくという生き方もある。

・ メディア企画や広告代理事業などを手掛けるHARESの社長で、自身もスラッシュキャリアをもつ西村創一朗氏は、戦略的なスラッシュキャリアの築き方について次のように提案している。

どんな仕事をしていても、必ず何かしらの専門性は身についているはずです。例えば、IT業界の人事担当であれば、IT/HRという2つのタグがつけられます
(中略)
ただし、これだけではキャリアとしては「弱い」です。なぜなら、同じタグを持っている人は世の中にごまんと存在するからです。では、一体どうしたらより市場価値の高い、食いっぱぐれない人材になれるのでしょうか?
(中略)
一番の近道は「市場から求められているが、まだ保有している人が少ないキャリアタグ・スキルタグを獲得する」ことです。

(引用元:Work Switch|あなたのキャリアのタグを増やそう。「スラッシュキャリア」のススメ

・ 西村氏の提案では、例えば「IT/HR」というスラッシュキャリアを持つ人ならば、新たなスキルを身に着けて「IT/HR/Webマーケティング」「IT/HR/データ分析」といったスラッシュキャリアを持つ人材になれば、唯一無二性の高い、より魅力的な人材になることができる。多くのビジネスパーソンにとって、キャリアの築き方の参考になる考え方だといえるだろう。

(参考)
Work Switch|あなたのキャリアのタグを増やそう。「スラッシュキャリア」のススメ
DAILY ANDS|キャリア形成の新トレンド「スラッシュキャリア」とは
日本経済新聞|ロート、社員60人が副業スタート 地ビール製造も 
J-WAVE NEWS|渡部建がお手本? 現代に増える「スラッシャー」とは
Cue|【スタッフコラム】「スラッシュ・キャリア」を知っていますか?
Create Beautiful Life 大園麗花 Official Site|スラッシュキャリアという生き方
Trigger|スラッシュキャリアって知ってる? 複数の仕事で希少価値の高いキャリアを目指せ!?
ELLE ONLINE|アラサー&アラフォー女子必読! スラッシャー” / “として生きていく術
美ノ匠|世界中の女性たちがもっと自由に、もっと輝く!女性の自立した生き方や働き方の鍵は、『スラッシュ・キャリア』??
Wikipedia|Marci Alboher