「たった1行の○○」を考え抜いて仕事の行き詰まりを打破! 現状を変える「1行思考」のすごさ

「1行思考」をやってみた01

「会議で上司の顔色をうかがってしまい、言いたいことが言えない……」
「仕事に対するモチベーションが上がらず、タスクが一向に減らない……」

このように仕事に行き詰まって現状を変えたいと考えている人は、「1行思考」を試すとよいかもしれません。1行思考とはどのようなものなのか、そのやり方と効果を、筆者の実践例も交えてご紹介しましょう。

「1行思考」が問題解決に効果的な理由

1行思考とは、コピーライターの中村圭氏が著書『1行思考 目的をたった30文字書くだけですべての問題は解決する! 』で提唱している思考術。「自分が行動する目的を1行で意識し続けること」です。(カギカッコ内は同書より引用。以下同じ)

同書によれば、最近のコピーライターには、企業が進むべき方向性を表した言葉を書く依頼が増えているのだとか。そうした事情を個人にも当てはめ、「どんどん変化する時代でも、『私はこの方向に進むんだ!』と、1行で表現するチカラを個人も持つべきだ」と中村氏は説いています。

この方法を仕事に行き詰まったときに行なうメリットは、次のふたつ。

1. 書くことで、思考を整理できる

1行思考のプロセス(詳しくは後述)には「書くこと」をともないます。この書くという行為が、何に悩んでいるかを明確にするために有効なのだとか。

人は自分が何に悩んでいるかを意外と把握していない。モヤモヤという言葉はよくできている。まさに実態が掴めない状態でいることが悩みを大きくするんだな。だから問題を書きだすというのは、まず必要なステップなんだ。

(引用元:中村圭 (2022), 『1行思考 目的をたった30文字書くだけですべての問題は解決する! 』, KADOKAWA)

頭のなかだけで考えず、パソコンでも手書きでもいいので書き出すことにより、問題を「客観視」することが大切なのだそうですよ。

2. 明確な目的をつくることで、迷いなく行動できる

中村氏は、「自分が行動する目的を1行で」考えることを、「『自分の仕事の基準はこれだ』という1行を考える」ことであるとも表現しています。そして目的をもつと、自分の行動に次のような変化が生まれるそうです。

  • モヤモヤしていた悩みがパッと解決する
  • 全然終わらなかった仕事があっという間に終わる
  • 他人に何を言われても自信をもって行動できるようになる

(引用元:同上)

たとえば、作業がうまくいっていない部下に、作業中のよくない点を指摘したが、あれでよかったんだろうか、言い方が厳しすぎたかな……とモヤモヤしているとします。「事業に貢献できる人材を育てる」という目的をもてば、自然と「誤っていると思われる点を部下へ指摘する。あとできちんとフォローもする」という行動基準が生まれ、迷わず行動できるようになるわけです。

「1行思考」をやってみた02

3ステップでできる! 「1行思考」のやり方

では、1行思考の具体的なやり方についてご説明しましょう。中村氏は、次の3ステップで行なうようすすめています。

  1. 「問題」を把握する
  2. 問題を解決してどうなりたいかという「未来」を考える
  3. 未来につなげるのに必要な「目的」を1行で考える
( 『1行思考 目的をたった30文字書くだけですべての問題は解決する! 』よりまとめた)

1.「問題」を把握する

まず、いま抱えている問題(悩み)を書き出して、「WHY」を3回自問自答します。たとえば、次のような感じです。

問題(悩み):営業先で使う資料の作成を上司に頼まれたが、やる気が出ない。
WHY1回め:気が重くて作業がはかどらないから。
WHY2回め:忙しいのに書類を何度もブラッシュアップするのが面倒だから。
WHY3回め:頑張って作成したところで、上司は「自分で作成した」と取引先へ伝えるだろうから。

このプロセスによって、「自分の中でこの仕事への問題点が浮かび上がって」くるそうです。

なお、中村氏いわく「朝のスッキリした気分のときに書くと、自分を客観的に見やすくなる」とのこと。「仕事が終わって疲れ切った思考でやっても問題はなかなか整理されない」そうなので、夜は避けましょう。

2. 問題を解決してどうなりたいか「未来」を考える

次は、自分が目指す未来像を模索するステップ。中村氏は次のふたつの考え方をすすめます。

  • 「現状の不満を解決する」
    ……「現状の不満に対して、どういう状態になっていたら解決するか」を考える
  • 「理想となるモデルから抽出する」
    ……「自分がこうなりたいと思う人」の「思考回路」を想像する

先の例なら、次のように書き出すことができるでしょう。

未来:専門知識を身につけ、先輩のAさんのように転職して活躍できる人になる。

これは、上記のふたつめの考え方で未来を描いた例です。先輩のAさんを「ロールモデル」とし、専門知識をつけて転職できるほどに自分の価値を上げたいと考えているわけですね。

なお中村氏によれば、ロールモデルは身近な人に限らず、歴史上の人物や、ビジネス書の著者などでもかまわないそう。ロールモデルの思考回路を探って、その人ならどうするかという視点から、自分がなりたい未来を探るといいそうですよ。

3. 未来へつなげるのに必要な「目的」を1行で考える

最後に、目の前の作業の「目的」を考えます。現状から理想の未来へつなげるために、いまやるべき仕事にどんな意味をもたせられるかを考えるのです。

ポイントは、人は「長い目的を覚えていられない」ので「30文字」以内で、かつ「断定」表現で書くことだそう。

先の例の場合、上司への不満を抱えたまま資料を作成するだけでは、どの会社でも活躍する未来は実現できません。そこで、次のような目的を設定してみます。

目的:商品知識や市場動向といった専門知識を身につける。(24文字)

この例の場合……

「上司の手柄にされる資料を作成しなければならない」という現状を、「先輩のAさんのように、転職して活躍できる人になる」という未来につなげるには、資料作成をするなかで調べ物をしながら「商品知識や市場動向といった専門知識を身につける」と目的を決めれば、資料をつくること自体が自分への投資になる!

このように考えているわけですね。

こうして決めた目的は、ふせんでパソコンに貼るなど、「常に意識できる場所に書いておく」とよいそう。「モチベーションが落ちそう」なときも「自分の目的に立ち返れるようにする」ためです。

「1行思考」をやってみた03

「1行思考」をやってみた

筆者もさっそく、「1行思考」を実践してみました。今回使用したのは、100円ショップで買ったB5サイズ(罫線7mm、30行)の大学ノートです。

中村氏の本にはパソコンでもよいとあったのですが、筆者はあえて手書きに。世界中で知られるノート術「バレットジャーナル」の発案者ライダー・キャロル氏の著書に、

  • 「文字を書く作業には時間がかかるからこそ、文字を認識して理解する能力を高めてくれる」
  • 「『脳の複数の領域を同時に活性化』するため(略)深いレベルで脳に刻み込める」

ということが説明されているそうで、手書きをしない選択肢はないなと思ったのです。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|【世界で話題のノート術】脳が整い、思考力が高まる「手書きの効能」

手順にならって作成した紙面がこちら。

「1行思考」をやってみた04

各項目を見分けやすくするために、自己判断で
「問題=青色」「未来=赤色」「目的=緑色」に色分けした

たとえば、ある仕事のモチベーションが上がらなかったとき、以下のように問題を掘り下げました。

問題(悩み):〇〇の仕事がゆううつ
WHY1回め:とにかく修正が多い
WHY2回め:そのときどきで担当者の言うことが変わる
WHY3回め:コンテンツ作成の経験者が少ない

こうすると、「担当者の指示内容に一貫性を感じられないことにモヤモヤしている」と気づきました。そこで、思いきって担当者と話をする時間をつくった結果、相手側もさまざまな事情で迷いがあると発見。その状況をふまえて、未来を次のように考えました。

未来:マニュアル作成に携われるほど信頼される人になる。

現行のルールやマニュアルに不備が多いので改良を重ねたいという担当者の声を聞き、そこに貢献できるだけの信頼を得たいと思うようになったのです。

そしてさらに、現状から理想の未来へつなげるための目的を、ふたつ考えてみました。

目的

  • 成功、失敗のサンプルを集めて模索する時期と考える。
  • ゼロからコンテンツ作成に携われる貴重な経験を積む。

中村氏によると、目的はひとつに絞らなくてもよいとのこと。実際、複数の目的を決めたことで、目の前の作業がより意義あるものに感じられ、モチベーションが高まりました。

「1行思考」をやってみた05

「1行思考」をやってみたら、明確な指針が生まれた!

1行思考を実践して感じた効果や、提案したいことを以下へまとめます。

1. 悩みにひとつずつ向き合うと、心が軽くなった!

1行思考のいいところは、問題(悩み)をひとつに絞ってじっくり深堀りできること。

仕事やプライベートなど多岐にわたる問題(悩み)について、解決しないまま、頭のなかでぐるぐるさせて放置することは多いもの。それらひとつずつに正面から向き合ったところ、行動の目的や考え方の基準が明確になり、心が徐々に軽くなっていきました。

2. 素直に自問自答すると、行動の「目的」を自然と明確にできる!

目的を1行で決めるうえで最も大切なのは、自問自答を繰り返す最初のステップだと感じました。

これからやってみる方には、「WHY」を3回繰り返す過程で、自分の気持ちを思いきって素直に書いてみることをおすすめします。素直になればなるほど理想の未来が具体的に浮かび上がるので、現状と未来をつなぐ「目的」も書きやすくなりますよ。

***
行動の「目的」を明確にすることで心を軽くしてくれる「1行思考」。ぜひ、試してみてくださいね。

(参考)
中村圭 (2022), 『1行思考 目的をたった30文字書くだけですべての問題は解決する! 』, KADOKAWA .
ダイヤモンド・オンライン|【世界で話題のノート術】脳が整い、思考力が高まる「手書きの効能」

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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