会議中にメモをとっても、あとで見返すと何が重要だったのかわからない。年始に立てた目標を、もう覚えていない。毎日残業しているのに、なぜか仕事が片付かない――。
こんな状況に心当たりはありませんか?
「あの人はいつも定時で帰っているのに、なぜか結果を出している」「同じ仕事量なのに、あの人のほうが評価が高い」。職場を見渡すと、そんなデキる人が必ずいるものです。
じつは、そうした優秀なビジネスパーソンたちには共通点があります。それは、効率的なメモ術を身につけているということ。難しいスキルは一切必要ありません。今日から始められる、シンプルで実践的な方法ばかりです。
この記事では、周囲に差をつけるための3つのメモ術を、実際の効果検証とともにご紹介します。
- 1. ビジョンや目標を意識するための「付箋活用術」
- 目標を付箋にメモして、ノートの冒頭に貼ってみた
- 2. やる気の出る「ToDoリスト」
- やる気が出るToDoリストをつくってみた
- 3. 問題解決をするには「図で考える」
- 「深堀りの図」で問題解決に挑んでみた
1. ビジョンや目標を意識するための「付箋活用術」
「自己啓発本を読んだあと、モチベーションが上がって学んだ習慣を実践したくなったのに、数日後にはすっかり忘れていた……」
「年始に1年の目標を立てたのに、2月にはもう、目標がなんだったのかさえ思い出せなくなっていた」
——なんて経験はないでしょうか。
実際、多くのビジネスパーソンが同じ悩みを抱えています。せっかく立てた目標も、日常の忙しさに追われているうちに記憶の片隅に追いやられ、気がつけば1年が終わっているという状況は決して珍しくありません。
目標やビジョン、新しい習慣などは、自分自身にポジティブな変化を起こすために重要ですが、日々の行動に落とし込めなければ意味がありません。それにはまず「書き出す」ことが大切です。
米国で人気のライフコーチであるマリー・フォーレオ氏によると、夢を書き出す人は、書き出さない人に比べて42%も達成確率が上がるという研究結果があるそう。頭のなかでは漠然とした望みも、書き出せば具体的なものになる、と同氏。目標を紙に書いたらそれを頻繁に眺め、常に意識し続けることが理想だと言います。
しかし、手帳に目標を書いても、そのページを開く習慣がなければ結局見返すことはありません。デスクに目標を書いた紙を貼っても、慣れてしまえば風景の一部となってしまいます。
そこでおすすめしたいのがこちら。コクヨ株式会社が『コクヨのシンプルノート術』(KADOKAWA)で紹介している、付箋を活用した、目標やビジョンを叶えるためのノート術です。やり方は以下の通り。
- 付箋に、自分の目標・ビジョンや、取り入れたい習慣を書き出す。書くのは、ひとつの付箋につきひとつの項目。
「1年以内にエリアマネージャーになる」「TOEICで800点をとる」など大きな目標と、「なるべく笑顔で人に接する」「毎朝15分早く出社する」など比較的取り組みやすい目標を織りまぜるとよい。 - それらの付箋を、普段使っているノートの最初のページに貼る。目標を達成したら、付箋を入れ替えてもかまわない。常に確認・実行し、アップデートしていく。
目標を付箋にメモして、ノートの冒頭に貼ってみた
このメモ術の効果を確かめるため、上記の手順のとおり、以下2種類の目標を立ててみました。
「クライアントから信頼される人になる」「12月末までに月間売上2倍」という【大きな目標】と、「『疲れた』『面倒くさい』と言わない」「笑顔を心がける」「月に3冊以上仕事に役立つ本を読む」という【小さな目標】です。
やってみると、目標やビジョンが常に目に入ることで、自分が向かいたい方向が明確になり、それにともなった行動を自然ととれるようになりました。付箋は、頻繁に使うノートに貼ると、より効果的だと思います。
「目標を立てる」というと、つい高すぎる目標ばかり設定して三日坊主で終わってしまうケースが多いものです。しかし、達成しやすい小さな目標を混ぜることで、定期的に達成感を味わえ、行動を継続するモチベーションを維持できることがわかりました。
付箋の「すぐにはがせる」という特性を活かし、実際にやってみた習慣が自分と合わなかったり、方向性が変わったりした際でも、柔軟に目標を調整することが可能です。これも、挫折せずに行動を継続できる要素だと感じました。
単なるメモや目印として使われることの多い付箋ですが、戦略的に目標達成のツールとして活用すれば、確実に周囲との差を生み出すことができるでしょう。
2. やる気の出る「ToDoリスト」
「今日もなんとなくやる気が出ない」「仕事に対するモチベーションが上がらない」「同じような作業の繰り返しで、達成感を感じられない」——こうした状態が続いているようでは、デキる人からはほど遠いものです。
多くの人は、やる気の問題を精神論で解決しようとしがちですが、ToDoリストの作り方を工夫するだけで、劇的にモチベーションを改善することができます。
ご紹介するのは、企業研修やセミナーで3万人以上を指導してきたビジネスインストラクターの鈴木真理子氏が、著書『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』のなかですすめる、やる気が出るToDoリストです。朝の就業前に、その日のToDoを書き出す際、以下の要素を取り入れます。
- 最初に仕事を終える時間を決め、仕事が終わったら何をするのか具体的に書く。
「お気に入りのドラマを観る」「コンビニでスイーツを買う」など、楽しみになるような予定にすることがポイント。 - 次は、昼休みに何をするのか具体的に書く。「話題のランチスポットに行く」「近くの公園を15分散歩する」など、こちらも楽しみなことを意識。
- タスクの横にチェック欄をつくり、タスクが完了するごとにチェックを入れる。自分で自分をほめるコメントを書くのもおすすめだとのこと。
仕事後や昼休みにやりたいことをあらかじめ決めておくのは、ダラダラと残業するのを防いだり、めげそうなときに踏ん張る糧にしたりするため。
学会誌Journal of Personality and Social Psychologyに発表されたコーネル大学の研究によると、短期的に報酬が得られることで「内因性動機づけ」が増すことが判明したそう。内因性動機づけとは、外的な報酬(給与や評価)ではなく、活動そのものから得られる満足感や達成感によって生まれるやる気のことです。この動機づけが高まると、人はタスクを行なうこと自体に喜びややる気を感じるようになります。
通常の職場環境では、一つひとつのタスクを完了するたびに上司からほめられたり、即座に給与が上がったりすることはありません。しかし、自分で設計した報酬システムを活用すれば、日常的にモチベーションをコントロールすることが可能になるのです。
やる気が出るToDoリストをつくってみた
こちらも筆者が実際に試してみました。
まず、帰る時間を18:00に設定。次に、昼休みと終業後に楽しみになるような予定を考えました。そして18:00に帰れるよう、1日のスケジュールを組み立てます。午前は本日中に必ずやらなければならない重要な予定、午後はすでに決まっていたミーティング以外は、急ぎでない作業や研修を設定しました。
朝一番に、楽しみなイベントをタスク完了の “報酬” として書き出したことで、1日頑張れそうな気持ちになりました。お昼休みや終業後など、短いスパンでご褒美を設定すると、意外とやる気が出ることを発見。昇進や給与アップなどの大きな目標があっても、日々モチベーションを保つのは難しいものなので、このテクニックは使えるなと感じました。
また、チェックリスト形式にしたことで、やるべきことの抜け漏れが防げただけでなく、チェックを入れるたびに達成感を覚えました。さらに、自分自身をほめたり労ったりするコメントを書くことで、不思議といい気分になりましたよ。
ぜひあなたも、スマートに仕事をこなす大前提として、自分のやる気を自分でコントロールできるToDoリストをつくってみてはいかがでしょう。
3. 問題解決をするには「図で考える」
「売上が下がった原因を分析したいけれど、要因が多すぎて何から手をつけていいかわからない」「同じミスが繰り返し発生するので再発防止策を考えたいが、思考が整理できずに混乱してしまう」——このような経験はないでしょうか。
こうした課題の根本原因は、複雑な問題を頭の中だけで整理しようとしていることにあります。しかし、お手持ちのノートに図を書きながら問題解決に取り組むだけで、驚くほど思考がクリアになります。
オンラインメディア『NewsPicks』のインフォグラフィック・エディター櫻田潤氏によると、失敗や成功には多くの場合、ひとつではなく複数の要因が絡み合っているとのこと。問題の要因をひもとき、可視化し、解決に導くため、「深堀りの図」を使うことを櫻田氏はすすめています。
やり方は次の通り。
- 解決したい問題や、気になっている課題を書き出し、四角で囲む。
- それに対して「なぜ?」と自分に質問し、回答をふたつ以上考える。
- 最初の四角から矢印を下に引いて、回答を書き出し、回答それぞれを四角で囲む。
上記を何回か繰り返すことで、問題を分解し、本質的な原因を明らかにしていく――これが、深堀りの図を書く目的です。
「深堀りの図」で問題解決に挑んでみた
筆者が試しに書いてみると、このようになりました。
近頃、残業が多すぎることが悩みだったのでそれを「解決したい問題」として設定しました。何度か「なぜ?」という質問を繰り返すことで、複数の要因に細分化することができます。最終的に「自分の問題」「チームの問題」「上司の問題」「会社の問題」と、いくつか違った角度の要因が浮かび上がりました。
会社や上司を私が変えることは難しくても、自分が問題である部分は、すぐ改善に取り組めます。また、チームの問題である部分は、同僚と話し合う価値があるとわかったのです。
問題が複雑であればあるほど、頭で考えるだけでは解決できないもの。ですが、今回筆者が「なぜ?」を繰り返し、最終的に「自分の問題」と「周囲の問題」とに分けられたように、図にして可視化すると、悩みや解決したい事項を楽に細分化できるとわかりました。
この考え方を仕事に取り入れれば、要因を可能な限り細かく洗い出してから対策を立てることができるようになるので、抜け漏れが少なくなり、効率もよくなるでしょう。複雑なこともサッと整理できる知性を、磨いていけるのではないでしょうか。
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デキる人に近づくための3つのメモ術をご紹介しました。それほど時間もかからず、難しくもないですが、大きな効果が期待できるはず。ぜひ参考にしてみてくださいね。
PRESIDENT Online|目標を紙に書き出すだけで、なぜ目標達成の確率は42%も上がるのか
コクヨ株式会社(2016),『コクヨのシンプルノート術』, KADOKAWA.
APA PsycNet|It’s about time: Earlier rewards increase intrinsic motivation
鈴木真理子(2016),『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』, 明日香出版社.
櫻田潤(2017),『図で考える。シンプルになる。』, ダイヤモンド社.
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。