
金曜の夜、タスクリストを見返すと、今週も予定の半分しか終わっていない。残ったタスクを来週に送りながら、ため息がひとつ。来週こそはと思いながら、その「来週」が何度も過ぎていく。
真面目に働いているのに終わらないのは、能力や努力の問題ではなく、抱えているものが多すぎるだけかもしれません。
STUDY HACKER編集部はこれまで、脳や心の専門家、経営コンサルタントなど、仕事の質を高める知見をもつ方々に数多くの取材を重ねてきました。そこで繰り返し語られてきたのは、仕事が速い人は新しい何かを足すのではなく、当たり前にやっていることを「やめて」いるという事実です。本記事では、その知見をもとに、今日から手放せる仕事の習慣を紹介します。
- 引き算1 「即レス」を、やめてみる
- 引き算2 「100点の仕上げ」を、やめてみる
- 引き算3 「全部自分でやる」を、やめてみる
- 引き算4 「終わらなかった自分を責める」を、やめてみる
- よくある質問(FAQ)
引き算1 「即レス」を、やめてみる
資料をつくっている途中でチャットの通知が鳴る。すぐに返して作業に戻ると、さっきまで組み立てていた考えがきれいに消えている。思い出すのに数分。そしてまた通知が鳴る……。
作業療法士の菅原洋平さんは、こうした状態を「マルチタスク」の典型と指摘します。菅原さんによれば、私たちを消耗させるマルチタスクの多くは、じつは自分自身がつくり出しているものなのだそう。通知が来るたびに確認する、ToDoリストを常に目につく場所に貼っておく、自分あてのリマインドメールをいくつも設定する。こうした行動が、脳に次々と情報を送り込み、目の前の仕事から注意を奪っているのです(『マルチタスクによる脳への負担を減らす方法。「○○を正す」のが意外と効果的』参照)。
菅原さんが勧めるのは、情報が届くタイミングを自分で区切ることです。たとえばリマインドメールなら、予定ごとにバラバラに届かせるのではなく、始業時に午前の予定、昼休みに午後の予定とまとめて届くようにする。チャットやメールの返信も同じ発想で、確認する時間帯をあらかじめ決めてしまえば、中断の回数そのものを減らせます。
仕事を遅くしているのは、返信の速さが足りないことではなく、中断の回数が多すぎることです。返す速さで示していた誠実さは、「この時間帯には必ず返ってくる」という確実さで示せば十分に伝わります。
やめてみること
通知が鳴るたびに手を止めて、すぐ返信すること
かわりにやること
確認する時間帯を決めて、まとめて返すこと
中断の回数が減り、途切れない集中の時間が戻ってくる。これが引き算1のベネフィットです。

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引き算2 「100点の仕上げ」を、やめてみる
社内の定例会議で使う資料なのに、気づけばフォントの調整や図の配置に30分。丁寧につくり込んだ資料は、会議では数十秒しか映されなかった。そんな経験に心当たりのある人は多いはずです。
トヨタ式のマネジメントに詳しい中小企業診断士の森琢也さんは、成果を出す人の働き方を「まじめに手を抜く」と表現します。そのための道具として森さんが紹介するのが「ECRS(イクルス)の原則」です。作業を前にしたら、まず「なくせないか」を考え、次に「まとめられないか」「順序を替えられないか」「簡素にできないか」と順に問う。最初に問うべきは「どうやってうまくやるか」ではなく、「そもそもこの作業は必要か」なのです(『成果を出す人は「まじめに手を抜く」。トヨタ式マネジメントに学ぶ無駄ゼロの仕事術』参照)。
すべての仕事を100点で仕上げようとすると、本当に100点が必要な仕事に使う時間がなくなります。着手する前に「これは誰が、何を判断するための仕事か」をひと呼吸おいて考え、求められている水準を見極める。社内確認用なら伝わる粗さで出し、浮いた時間を勝負どころに回すのが、仕事が速い人の配分です(『「中途半端な仕事」で効率も評価も上げる4つの極意。仕事は “60点” でOK!』参照)。
やめてみること
どの仕事も同じ熱量で、100点を目指して仕上げること
かわりにやること
着手前に「誰が何を判断するための仕事か」を確認し、求められる水準だけ仕上げること
勝負どころの仕事に使える時間が増える。これが引き算2のベネフィットです。

引き算3 「全部自分でやる」を、やめてみる
後輩に説明する時間があったら、自分でやったほうが早い。そう考えて仕事を引き取り続けた結果、残業しているのはいつも自分だけ。しかも、自分が手放さないせいで、まわりはいつまでも経験を積めません。
仕事を任せることは、マネジメントの世界では「チーム全体の成果を最大化する」ための重要なスキルと位置づけられています。適切な相手に適切なタイミングで仕事を渡せば、自分は自分にしかできない仕事に集中でき、渡された側は成長の機会を得る。抱え込みは責任感の証のようでいて、実際には自分とチームの両方の速度を下げるボトルネックになりえます。
これはマネージャーだけの話ではありません。同僚への依頼、上司への相談、ツールによる自動化。「自分以外に渡す」という選択肢は、どの立場にもあります。まずは、自分のタスクリストから「自分でなくてもできる仕事」をひとつ選んで、渡す練習から始めてみてください。
やめてみること
「自分でやったほうが早い」と、仕事を引き取り続けること
かわりにやること
「自分でなくてもできる仕事」をひとつ選び、依頼・相談・自動化のいずれかで手放すこと
自分にしかできない仕事に集中でき、チームには経験が残る。これが引き算3のベネフィットです。

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引き算4 「終わらなかった自分を責める」を、やめてみる
帰り道、今日終わらなかった仕事を頭のなかで数え直して、また自分にダメ出しをする。反省しているつもりなのに、翌朝の足取りは重くなるばかり……。
セルフ・コンパッション研究の第一人者である中央大学教授の富田拓郎先生によれば、自分を責めやすく追い詰めやすい人は心の平静を保つことが難しくなり、パフォーマンスも仕事へのモチベーションも上がりにくくなるのだそう。つまり自責は、反省の顔をして、翌日の仕事の速度を削っているのです(『あなたの “自責グセ” はどのぐらい? 12項目で測るテストを紹介。低い人は要注意』参照)。
富田先生が紹介する対処法のひとつが、セルフ・コンパッションで「ひと休み」と呼ばれるメソッドです。しんどい状況にある自分に「しんどいね」と声をかけ、そのうえで「この状況だったら誰でもしんどいよね」と続ける。しんどさを感じているのは自分だけではないと意識することで、自分を責めたり追い詰めたりせずにすむのです。5分もあればできる方法ですから、仕事が終わらなかった日の夜にこそ試してみてください。
やめてみること
終わらなかった仕事を数え直して、自分を責め続けること
かわりにやること
「この状況だったら誰でもしんどいよね」と、自分に声をかけること
明日の仕事に向かう気力が残る。これが引き算4のベネフィットです。

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4つの引き算に共通するのは、頑張りを増やさないことです。即レスも、100点の仕上げも、抱え込みも、自責も、どれも真面目な人ほど無意識に続けてしまう習慣ばかり。だからこそ、やめるだけで差が生まれます。
📝 今日から「やめてみる」4つのこと
「即レス」/「100点の仕上げ」/「全部自分でやる」/「終わらなかった自分を責める」
仕事を速くする第一歩は、新しい何かを始めることではなく、いま抱えている何かをやめることです。全部やめる必要はありません。いちばん心当たりのあるひとつから、今日、手放してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 即レスをやめたら、周囲からの評価が下がりませんか?
Q. マネージャーではなくても「全部自分でやる」の引き算はできますか?
Q. 4つのうち、どの引き算から始めればいいですか?
岡 健作(おか・けんさく)
株式会社新恵社代表取締役/スタディーハッカー(現(株)イングリッシュカンパニー) 創業者。
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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