世界一有名な投資家のウォーレン・バフェット氏は、自分が決めたルールに従って生きることを大切にしています。なかでも「苦手なことには手を出さない」といったルールは、あのビル・ゲイツ氏や、故スティーブ・ジョブズ氏にも共通するのだとか。
そのためには、まずは自分の得意なことを見極める必要があります。今回は天才たちに学び、「自分の強み」を探ってみました。
バフェット氏の「能力の輪」
経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥氏によると、バフェット氏は自分がよく理解できている得意な分野を「能力の輪」と呼ぶそうです。そして、その輪の外にあるものには手を出さないというルールを、忠実に守っているのだとか。その例としてよく挙げられる、こんなエピソードがあります。
ITバブルに湧いた頃、バフェット氏は自分のルールに従い、よくわからないITビジネスへの投資を避けていた(※)。「時代遅れ」などと揶揄されたが、2001年頃にはITバブルが弾け、結果としてバフェット氏の正しさが再認識された。(※現在はITビジネスが一般的になり、理解が深まったためか投資を行なっている)
作家で実業家のロルフ・ドベリ氏によれば、バフェット氏のビジネスパートナーであるチャーリー・マンガー氏も、「能力の輪」の外でキャリアを築こうとしても、うまくいかないと明言しているそう。
バフェット氏は、自分の「能力の輪」を知り、その境界をどこまで厳密に見極められるかが大事だと言います。他人の考えや行動、評価は重要ではないとのこと。
「みながやっているから」「流行だから」「すすめられたから」と苦手なものに手を出し、ムダな時間を浪費するのを避け、“得意” に集中することが成功の秘訣なのですね。
「自分の強み」をつかむ方法
では、私たちはどうやって「能力の輪」を見極めたらいいでしょう?
たとえば数字が得意だからデータサイエンティストや公認会計士を目指そう、読み書きが得意だから出版業界やWEBメディア業界で活かせる、といった観点もあります。しかし今回は、どんな業種・職種でも、「この部分は私に任せて!」と言えるような「自分の強み(長所)」に焦点を当ててみることにしました。
キャリアコンサルタントの資格を持つライターの青木典子氏によれば、意外と「自分の強み」を正しく認識できていない人は多いのだとか。青木氏は、「自分の強みをつかむためのチェックポイント」を紙に書き出し、それを「ポータブルスキル」に当てはめ、「自分の強み」を探るようアドバイスしています。
「ポータブルスキル」とは、持ち運び可能なビジネススキルのこと。職場や仕事が変わっても、どこに行っても活かすことができます。青木氏の解説をもとに、詳しく説明していきましょう。
1. チェックポイントを書き出す
まずは、以下のチェックポイントを書き出します。紙に書き出すことで、客観的になれるそうです。
- 目標に向けてどんな戦略を立てたか?
- 具体的にどんな行動を起こしたか?
- どんな人と、どうコミュニケーションをとったか?
- うまくいかないときは、どう分析し行動を変えたか?
- トラブルやアクシデントはどう乗り越えたか?
書き出す対象は、現在の仕事、これまで最も長く携わった仕事、過去に最も頑張った仕事など。担当したプロジェクトごとでもいいそうです。
2.ポータブルスキルに当てはめる
次に、書き出したものを、ヒューマンスキル・セルフコントロールスキル・タスクマネジメントスキルの3つからなる以下ポータブルスキルの、どれに当てはまるか確認していきます。
- 主張力:意見や考えを言う
- 傾聴力:真剣に話を聞き理解
- 否定力:意見や提言を否定できる
- 受容力:人の要求を聞き入れる
- 説得力:人を納得させる
- 支援力:人や集団をサポート
- 統率力:集団を監督・指図
- 協調力:人や集団と力を合わせる
- 慎重力:注意深く行動する
- 冒険力:危険を恐れず行動
- 自制力:自分の欲求を抑える
- 高揚力:やる気を出す
- 忍耐力:苦しみや怒りに耐える
- 柔軟力:変化に対応する
- 規律力:秩序通りに事を進める
- 曖昧力:曖昧さを受け入れる
- 持続力:一定状態を継続する
- 瞬発力:集中的に力を発揮
- 推進力:物事を前に進める
- 変革力:物事を新しく変える
- 機動力:すばやく状況に対応
- 確動力:確実に実行
- 創造力:考えを発想・発展させる
- 分析力:物事の仕組みを解明
(以上参考:森本千賀子著(2014),『後悔しない社会人1年目の働き方』,西東社. / リクナビNEXTジャーナル|自分の「強み」、正しく認識していますか? よくある勘違いケースと自己分析のポイントとは)
こうすると、自分が仕事でどのスキルをよく使っているかわかるわけです。つまり、それが自分の強みです。自分の強みがわかれば、自分のアプローチすべき部分が明確になり、どんなスキルアップが合っているのかも把握できるはず。では、筆者もさっそくやってみましょう。
「自分の強み」を探ってみた
今回筆者は、過去の最も楽しくて、最も大変で、最も頑張った仕事を選びました。具体的にはお店を開くまでのプロセスです。
書き出すことで、当時は意識していなかったことも言語化されていきます。
「こんなに頑張ったのか」と再認識できますね。
こうして書き出したものをポータブルスキルに当てはめていったところ、意外な結果が出ました。
「自分の強み」を探ってみた感想
筆者が当てはまったのは、説得力・協調力・高揚力・推進力・確動力でした。傾聴力・受容力・慎重力・忍耐力・創造力あたりだろうと思っていたので驚きです。一度の検証では限定できませんが、これまで自分が狙っていた路線は、ピントがズレていた可能性がありますね。
しかし、意外な自分の強みを発見できたので、未来予測がガラリと変わり、なんだか楽しくなってきました。こんなふうに思わぬ収穫もありますよ! ぜひお試しください。
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「自分の強み」を探れば、指針や方針を決めやすくなるはず。新しい自分だって発見できるかも?
(参考)
BEST T!MESコラム|【世界一の投資家・バフェットに学ぶ。その究極にシンプルな投資哲学】
プレジデントオンライン|大富豪の口癖が"私は天才ではない"のワケ 「能力の輪」の外には手を出さない
リクナビNEXTジャーナル|自分の「強み」、正しく認識していますか? よくある勘違いケースと自己分析のポイントとは
LISTEN|リスナーズ株式会社 青木 典子|人々の「想い」を聴き 紡いだストーリーで 企業の成長に貢献する
講談社|マネー現代|GAFAなんかに投資した神様・バフェットは大丈夫なのか?
ロルフ・ドベリ 著, 安原実津 訳(2019),『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』, サンマーク出版.
桑原晃弥(2011),『ウォーレン・バフェット 賢者の教え―世界一投資家思考の習慣 』, 経済界.
森本千賀子(2014),『後悔しない社会人1年目の働き方』, 西東社.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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