
「目の前の仕事に集中したいのに、あれこれ考えてしまって気が散る」
「次の仕事の段取りのシミュレーションなどで、常に頭のなかが忙しい」
このように、頭のなかが思考で渋滞していませんか?
脳がパンパンの状態では、新しい情報を整理したり、判断したりするためのスペースが足りません。
そんなときは、頭のなかにはびこる思考をいったん忘れてしまいましょう。
本記事では、「忘れる力」を鍛える3つの実践方法と、それを支える脳科学的根拠をご紹介します。
実践1. 寝る前の「捨てメモ」
東千葉メディカルセンター センター長で医師の岩立康男氏は「忘れることは、自分の頭で考え人間として進化していくために重要」だとし、脳を「鍛えるだけでなく、きちんと休ませる」ことが大切だと話します。*1
脳を休ませるためには「睡眠」がとても重要です。
岩立氏はその理由を「睡眠中は記憶を整理、定着させる作業が行われていますし、記憶に関係するたんぱく質の合成、不要になったたんぱく質の排出も行われて」いるからだと説明します。*1
しかし、「ベッドに入っても、今日の出来事や明日のタスクが次々と脳裏に浮かび、眠れない」という人も多いのではないでしょうか。
これは、脳のなかで思考の渋滞が起こっているサインです。
そこで、脳を思考の渋滞から解放するために、寝る前の「捨てメモ」習慣をおすすめします。
捨てるものなので、きれいに書く必要も誤字脱字も気にする必要もありません。
ここでのポイントは「紙に書く」ことと「捨てる」こと。
思考の整理家®鈴木進介氏は、紙に書き出す意味について次のふたつを挙げています。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| ① 心を鎮める効果 | 頭のなかの思考を外に出すことで、冷静さを取り戻せる |
| ② 客観視できる効果 | 自分の思考を「紙上」で俯瞰できるようになる |
さらに同氏は、「役割を果たしたページは破って捨てる」ことも推奨。
目的は「記録」ではなく「整理」だからです。*2
仕事で必要な情報は、スケジューラーや手帳に記録しているはず。寝る前に思い返す必要はありません。
「捨てメモ」で脳をクリアにし、翌日のパフォーマンスを上げるための儀式としてみませんか?

実践2. 覚えない基準を決める
普段から「覚えない基準」を決めておくのも、脳をクリアに保つのに有効です。
たとえば、次のような基準はいかがでしょうか?
▼筆者が提案する「覚えない基準」
| 対象 | 具体例 |
|---|---|
| 反復しない情報 | 終わった議論・過去の提出書類・済んだ人間関係 |
| 検索ですむ情報 | インターネットでいつでも調べられる知識 |
| 自分が抱える必要のない情報 | 噂話・他人の問題・違和感のある他人の言動 |
このように基準を設け、該当する情報が浮かんだら「忘れる」と宣言しましょう。
情報を自らフィルタリングし、脳をクリアに保つのです。

実践3. 「リマインダー機能」を活用
ずっと覚えておく必要のないことは、スマートフォンのリマインダー機能で「思い出す日」を設定するのもおすすめです。
▼筆者のリマインダー登録例
- お客様への告知:告知内容整理日と実施日をリマインド
- シフト:提出日
- 買い物リスト:外出予定に合わせて設定
- 「あとで読もう」と思っているWEB記事のリンク:夕食後に通知
- 期限が決まっているタスク:作業日と締切日の2段階でリマインド
「リマインダーに登録しておけば、自分が忘れてもリマインドしてくれる」という安心感が脳のリソース消耗を防ぎます。
リマインダーを「外部の脳」としてうまく活用し、脳のリソースを目の前の「やるべきこと」に注力させていきましょう。

科学的根拠—―指示忘却
ここまで紹介した3つの実践方法には、共通する科学的メカニズムがあります。それが「指示忘却」です。
脳は「指示忘却」の特性をもっています。
「指示忘却」とは「忘れる力」のことで、「忘れる」と指示することで、思考処理をいったん中断する力のことを指します。
山形大学 准教授の小林正法氏らによる研究では、「忘れる」と指示された単語は記憶されにくく、感情的価値も低下することがわかっています。*3
思考の渋滞を感じたら、「忘れる」と自分に指示を出しましょう。そうすれば、脳は指示忘却の特性を発揮し、思考と感情の影響力を弱めてくれます。
この記事で紹介してきた「捨てメモ」「覚えない基準」「リマインダー機能の活用」は、脳に「忘れる」ことを指示する具体的手法というわけです。

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忘れることが考える力を育みます。脳に余白をつくることで、新しい情報を整理したり、判断力を高めることができるのです。思考の渋滞を解消し、最高のパフォーマンスを発揮しましょう!
*1 ロート製薬 太陽笑顔fufufu|"忘れる"は脳の健康な働き!?脳科学が解き明かす記憶の仕組み
*2 STUDY HACKER|「ノートに書く」と脳内が整理される2つの理由。すべての情報は1冊にまとめよ
*3 山形大学|指示忘却による感情的価値の低下の再現
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。