いまさら聞けない戦略的思考の基本。仕事の質を上げる3つの”定番”分析手法

その場しのぎで対応している多忙なビジネスパーソン

戦略的思考は、ビジネスパーソンの成長に欠かせないビジネススキルです。しかし、実際の業務では...…

「今週の数字がまた目標に届かない...…」
「チームメンバーから改善案を求められても、具体的なアドバイスが出せない...…」
「もっと抜本的な対策を立てたいのに、日々の業務に追われて考える時間もない...…」

こんな悩みを抱えている方は少なくないのではないでしょうか。

実際、よくある例を見てみましょう。営業部門のマネジメント職のAさん(34歳)は、毎月の実績報告資料をつくる際、いつものフォーマットに数字を更新するだけで精一杯です。「より効果的な意思決定のために、もっと分析を深めて次の施策につなげたい」という思いはあるものの、締切に追われ、ついその場しのぎの対応で終わってしまいます。

これは単なる「時間がない」という問題ではありません。じつは、問題解決力やマネジメントスキルの向上を目指す多くのビジネスパーソンが陥っている「思考の罠」かもしれないのです。

資料づくりのような日常業務であれば、その場しのぎでも何とかなる可能性があるでしょう。しかし、それが課題の解決を求められる新規プロジェクトの立ち上げや、部下の育成計画、キャリアの方向性といった重要な判断になったとき、同じように場当たり的な対応でよい結果を出すことはできません。

では、なぜ私たちは「その場しのぎ」の対応に陥りがちなのか。そして、それを克服するために何が必要なのか。本記事では、ビジネスパーソンの成長を妨げるこの課題について、実践的な解決策を探っていきます。

戦略的思考とは? 目先の解決策に飛びついてしまう要因

冒頭でに述べたように、人々がつい目先の解決策に飛びついてしまうのは、まず第一に日々の業務に追われているからです。また、過去の成功体験や直感に頼る傾向が強いと、その場の判断に依存してしまうことが多いかもしれません。

そのほかにも、心理的な要因が影響している可能性があります。私たちがいま存在しているのは、予測不可能な時代だといいます。人は未知なるものや、将来が見通せない状況に恐怖や不安を感じるもの。つまり、不確実性への恐れから、長期的な計画やリスクをともなう決断を避け、すぐに結果が見える方向へと流れてしまうのです。

そうしたなか、New Level Work(旧称 BetterManager)の共同創設者であり、文化・エバンジェリスト責任者の Wendy Hanson 氏は、戦略的思考のための時間をスケジュールに組み込んでいなければ、目の前のことに反応するだけで日々を過ごすことになり、よりよい結果を得る機会を逃している可能性があると指摘します。*1

Hanson 氏いわく戦略的思考とは、行動の決断前に、全体像をとらえたうえで目標を見ること。計画を策定するうえで重要なステップです。*1

また、単に目の前にあるものではなく、周囲で起こっている物事を見ることだといいます。それは、現在の視点から、より高いレベルに視点を上げることであり、決断が将来にどのような影響を及ぼすかを、理解することでもあるのです。*1

つまり、出たこと勝負や場当たり的になってしまうのは、戦略がないから。そして、それは、戦略を立てるための時間を確保していないからです。

Hanson 氏は、戦略的思考が会社の幹部のみならず、誰にとっても重要だとして、思考の時間を確保することが必要だと伝えています。*1

日々の業務に追われるビジネスパーソン

戦略的思考を身につけるための3つの手法

Hanson 氏は戦略的思考のやり方として以下3つを挙げています。ひとつずつ紹介していきましょう。*1

SWOT分析による現状把握

強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威(Threats) の4要素を特定する「SWOT 分析」の実践。

たとえば、新しい業務改善施策を検討する際のSWOT分析は以下のような観点で行います。

強み
Strengths
  • 既存の業務プロセスの知識が豊富
  • チーム内のコミュニケーションが活発
  • 基幹システムが整備されている
弱み
Weaknesses
  • 部署間の連携に時間がかかる
  • マニュアルの更新が追いついていない
  • 新しいツールへの抵抗感
機会
Opportunities
  • リモートワークの定着で柔軟な働き方が可能に
  • デジタルツールの選択肢が増加
  • 若手社員のITリテラシーの高さ
脅威
Threats
  • 競合他社の業務効率化の進展
  • 人材の流動化
  • コスト削減要請の強まり

(※編集部が構成)

このように、SWOT分析を行うことで、現状の把握だけでなく、今後取るべきアクションのヒントも見えてきます。*2

たとえば上記の例では、「若手社員のITリテラシーの高さ」(機会)を活かして「新しいツールへの抵抗感」(弱み)を克服したり、「チーム内のコミュニケーションが活発」(強み)という特徴を生かして「部署間の連携」(弱み)の改善に取り組んだりすることが考えられます。

ギャップ分析で目標までの道筋を明確に

現在の状況と目標の「ギャップ」を書き出し、その理由を分析して解決策を探ります。これは単なる目標との差を知るだけでなく、そこに至る道筋を明らかにする手法です。

たとえば「顧客満足度を現在の75点から90点に上げる」という目標がある場合:

現状
As Is
  • 顧客満足度:75点
  • 問い合わせ対応:平均2営業日
  • クレーム発生:月平均5件
目標
To Be
  • 顧客満足度:90点
  • 問い合わせ対応:当日中
  • クレーム発生:月0件
ギャップの理由
Gap Causes
  • 問い合わせ対応マニュアルが古い
  • 担当者によって対応にばらつきがある
  • システム上の制約で確認に時間がかかる

(※編集部が構成)

このように現状と目標のギャップを具体的に書き出し、その理由を特定することで、優先的に取り組むべき課題が明確になります。

「なぜ?」を5回繰り返して本質を見極める

また、「なぜ」を繰り返し重ねることで問題の本質に迫ることができます。ひとつの答えから次の「なぜ」が生まれ、原因を深く掘り下げることで、実際に取り組むべき課題が見えてきます。

課題:「なぜ営業チームの成果にばらつきがあるのか?」

なぜ1:なぜ成果にばらつきがあるのか?

顧客への提案内容に差がある

なぜ2:なぜ提案内容に差があるのか?

商品知識の深さに違いがある

なぜ3:なぜ商品知識に違いがあるのか?

自主的な学習時間に差がある

なぜ4:なぜ学習時間に差があるのか?

優先順位の付け方が人によって異なる

なぜ5:なぜ優先順位付けが異なるのか?

明確な学習目標が設定されていない

(※編集部が構成)

こうして見ると、Hanson 氏が示す戦略的思考のやり方には、おおむね現状・目標・ギャップ・隠れているものの把握、認識、理解があります。この意識をもつだけでも、戦略的思考に歩み寄れるのではないでしょうか。

意識を変えて戦略的に考え始めたビジネスパーソン

戦略的思考の身につけ方

Hanson氏が示すように、戦略的思考を身につけるには、まず「考える時間」を意識的に確保することから始めましょう。そして、SWOT分析、ギャップ分析、「なぜ」を重ねる思考法など、状況に応じて適切なツールを選んで活用していきます。

たとえば明日から、通勤時間やミーティングの前の5分間を使って、自分なりに「戦略的に考える習慣」を始めてみるのです。

1. 今週の頭を悩ませている課題をひとつだけ書き出す
2. 「なぜ」を5回繰り返す、あるいは先ほどの分析手法のいずれかを使って考えを整理する
3. すぐに取り組めそうなことをひとつ決める

このように小さな一歩から始めて、徐々に戦略的な思考を習慣にしていくことで、より良い仕事の実現につながっていくはずです。

***
戦略的思考は、ビジネスパーソンの重要なスキルです。本記事では、SWOT分析、ギャップ分析、「なぜ」を繰り返す手法など、具体的な分析方法を紹介しました。通勤時間や会議の前など、すきま時間を活用して少しずつ実践することで、より良い意思決定ができるようになります。ぜひ始めてみてください。

【ライタープロフィール】
Shinya

大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。

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