「聞き上手」はいいことだとは言うけれど……。聞かされすぎて疲れるあなたに知ってほしい、「共感の種類」の話

肩をさすり話す女性

「ちょっと聞いてよ、また部長に書類を差し戻されちゃってさ」。仕事中、そう話しかけてくる同僚が、職場に一人はいるかもしれません。

相槌を打って共感しているうちに、自分の作業は進まず、気持ちまで少しずつすり減っていく。聞き上手って、じつは損な役回りなのかもしれない。そう感じたことがあるなら、続きを読んでみてください。

聞き方そのものを変える必要はない

「話してよかった」「少し楽になった」と相手が言ってくれたことがあるなら、あなたはこれまで、「相手の話を丁寧に聞けていた」ということ。

人は、話を聞いてもらえるだけで気持ちが整理されるものだといわれます。「一人で抱えていない」という安心感があって初めて、人はアドバイスを受け入れる状態になるもの。あなたが傾聴に注いできた時間とエネルギーは、相手のなかでその安心感になっていたはずです。

そんな「聞き上手」のあなたが消耗するのは、聞いているあいだに、気づかないうちに相手の感情まで引き受けているということの裏返し。

要は、聞くことと引き受けることが、同時に起こっているということかもしれません。

そこでまずは「聞くこと」と「引き受けること」を切り離すための、次の3つの境界線を見てみます。

すり減らずに聞くための3つの境界線

時間の境界線 聞く時間を先に区切っておく

責任の境界線 聞くことと解決することを分ける

感情の境界線 聞き終えたら気持ちを切り替える動作をひとつもつ

話を聞く前と聞いたあとに、小さな動作を挟むだけです。それぞれ、あとで具体的に紹介します。

欠けたパズルのピース

消耗の正体は「共感の種類」にある

「共感」とひとくくりにされがちですが、じつは共感は2種類に分類されています。相手の苦しみを自分の苦しみとしてそのまま感じてしまう「共感的苦痛」と、相手を思いやりながらも自分は巻き込まれない「コンパッション」です。

この2つは、脳の使う場所からして別物だという研究があります。*1

前者「共感的苦痛」がつらさやネガティブな感情が強めるのに対し、後者「コンパッション」では同じ場面を見てもネガティブな感情が減り、前向きな感情が増えた、という報告もあります。*2

聞くたびに苦しくなる人、聞くたびに「力になれた」と感じられる人。

その差は、このどちらのスイッチを主に使っているかで生まれているということです。

さらに、「情動感染」という現象もあります。人は相手の表情や声のトーンに無意識に引っ張られて、同じ感情を自分の中にも生じさせやすい、というものです。*3

目の前で辛そうな顔をされて、こちらまでその気分に引きづられるという経験は、覚えがあるのではないでしょうか。人間なら誰にでも起きる反応で、意志の強さで防げるものではありません。

そして、カウンセラーや看護師のように日常的に人の苦しみと向き合う仕事の人たちの間でも、「共感疲労」という状態が知られています。*4

訓練を積んだプロでも意識的な工夫なしには消耗するわけですから、あなたが疲れるのも当然のことです。

つまり、消耗を防ぐには、相手の感情をそのまま受け取る「共感的苦痛」のスイッチが入りかけたとき、「思いやりながらも、自分は巻き込まれない」というコンパッションのスイッチに意識的に切り替えればいいのです。

2種類の共感の違い

共感的苦痛 相手の苦しみを自分の苦しみとしてそのまま感じる。聞くたびに苦しくなる

▼ 意識的に切り替える

コンパッション 相手を思いやりながら、自分は巻き込まれない。聞くたびに「力になれた」と感じられる

次の章のチェックと、そのあとの3つの境界線は、そのための具体的な入口になります。

相手の感情を引き受けすぎていませんか?

共感的苦痛のスイッチが入りやすい人には、いくつか共通するサインがあります。自分に当てはまるか、軽い気持ちでチェックしてみてください。

  • 相談された悩みが、しばらく頭から離れない
  • 相手が救われないと、自分の責任のように感じる
  • 夜や休日でも、連絡が来ればつい聞いてしまう
  • 聞いたあと、どっと疲れて何も手につかない
  • 「あなたにしか話せない」と言われると断れない

いくつか当てはまったとしても、落ち込む必要はありません。当てはまるのは共感力が高いからで、その共感力はあなたの長所です。ただ、対策を持たないままでいると、いずれ「もう誰の話も聞きたくない」と感じる日が来てしまいます。そうなる前に、次の3つを試してみてください。

窓際でコーヒーを持つ女性

すり減らずに聞くための3つの境界線

時間の境界線

話しかけられたときに「ごめん、あと5分で会議だから」「今ちょっと立て込んでて、お昼に聞かせて」など、区切りをひとこと添えておきます。

じっくり聞きたい話なら「週末にゆっくり聞かせて」でも構いません。区切りを設けておくと、次に話しかけられたときも聞ける自分でいられます。終わりが見えているぶん、相手も要点から話しやすくなります。

責任の境界線

「聞くこと」と「解決すること」を分けます。相手が結論を求めていないなら、無理にアドバイスを探さなくて構いません。「私は聞く係。決めるのはあなた」と心の中で唱えておくと、答えを探さずに聞いていられます。

決めるのを相手に任せることは、相手には自分で決める力があると信じることでもあります。

感情の境界線

聞き終えたら、場所を変える、外の空気を吸う、コーヒーを淹れ直す、身体を軽く動かすなど、「切り替えの動作」をひとつ決めておきます。話を聞くモードから自分の時間へ戻る合図を、身体に持たせておくイメージです。

動作自体はなんでもよく、大事なのは毎回同じ動作をすることです。同じ動作を繰り返していると、身体がその動作で「聞く時間は終わった」と覚え、感情を次に持ち越さずに済むようになります。

そもそも、話しかけられた瞬間に「その話、聞きたい!」と思っている人は、そう多くはいません。忙しいときに限って声をかけられ、内心では「いまは勘弁してほしい」と思いながらも、相手に悪いからと相槌を打っている人が多いはずです。

だとすれば、無理に「聞きたい自分」になる必要はありません。この3つの境界線があれば、聞くことは気づけばすり減っている行為から、気負わずに付き合える行為に変わっていきます。

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人の話を聞き続けるためには、まず自分を大切にすることが欠かせません。境界線を引きながら聞ける人が、この先もずっと「話せる相手」でいられます。今日だけ無理をして完璧に聞くよりも、明日もまた聞ける自分でいることを優先したほうが、相手との関係も長く続きますよ。

よくある質問(FAQ)

Q. 相談を断ったら、冷たい人だと思われませんか。
境界線を引くのは、関係を長持ちさせるためです。「あと5分で会議だから」とひとこと添えて切り上げれば、この先も話を聞ける自分でいられます。
Q. 家族の話でも、境界線は必要ですか。
むしろ近い関係ほど必要になります。心理的な距離が近いほど、感情は伝染しやすいからです。
Q. 共感力が高いのは短所なのでしょうか。
共感力の高さは強みです。守り方を知っておけば、長く使える力になります。
Q. 聞いたあとの疲れが取れないときは、どうすればいいですか。
まずは睡眠や休息を優先してください。疲れや落ち込みが長く続く場合は、一人で抱えず、信頼できる人や専門家に相談することも選択肢に入れてみてください。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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