「本をたくさん読んでいるのに、内容がすぐに頭から抜けてしまう…」
「読書は好きだけど、読んだ内容を実生活に活かせている気がしない…」
こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。効果的な読書には、じつのところ「読み方」だけでなく、「読んだあとの処理」が重要なカギを握っています。
読書の真価は、知識をただ受け取るだけでなく、それを自分のものにする過程にあります。そこで今回は、本から得た情報を確実に自分の知識として定着させる、実践的なアウトプット術を3つご紹介します。これらのシンプルな方法を取り入れるだけで、読書の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
「要約3ステップ」で本の知識を自分のものに
教科書や参考書、書籍など、テキストを読んだあとの「要約」は、本の知識を「自分の知識」にするための大切な工程です。内容を整理して自分の言葉でまとめることで、記憶が定着し理解が深まります。
東大医学部卒で株式会社MERACLE代表・医師の佐々木京聖氏は、要約によって理解度を把握し、思い出しやすくして、あらゆる場面で活用できる「生きた知識」にすると説明しています。*2
佐々木氏が紹介する要約のステップは以下の通りです。*2
- 「セクションごとの要約」各20~30字
- 「章ごとの要約」各150字
ステップ1の要約をつなげてまとめる - 「一冊の要約」200字
ステップ2の要約をつなげてまとめる
このステップで要約すると、何度も読み返さずとも全体像を把握できます。最終ステップでは著者の意図や自分の新たな気づきを効率よく振り返ることができるのです。*2
筆者も早速、この方法で本の要約を試してみました。
この要約プロセスを通じて、読書が身にならないのは情報の整理が不十分なことにも原因があると気づきました。各ステップで感じたメリットは次の通りです。
要点を効率よく整理して、自分の知識にしたい人に最適なメソッドです。
「疑問の結論」で理解を深める
西岡壱誠氏(現役東大生で株式会社カルペ・ディエム代表取締役社長)は、本を読んでも感想がなく他者に説明できないなら、それは読んでいないのと同じだと指摘します。*3
西岡氏によれば、身になる読書に必要なのは疑問を持ちながら読み、読後に「感想をアウトプット」すること。*3 その際、「正しい感想」ではなく、
「議論しよう」「アウトプットしよう」と意識して、最後に自分なりでいいから「結論」を出す、その過程が重要
だと伝えています。*4
上記をふまえ、筆者も前出の『忘れる読書』を使い、この方法を実践してみました。
実際にやり始めると、「著名人の考えにどう疑問を持てばいいのか」と最初は戸惑いました。これは、疑問を持ちながら読むという習慣がなかったためかもしれません。
しかし、素直な疑問を遠慮なく書き出したところ、意外とスムーズに進み始めました。「忘れる読書って何?」というシンプルな問いも、遠慮せず書き出すことが重要です。
その結果、「忘れる読書とは、ひらめき力を鍛える読書のこと」という自分なりの結論に至り、本の知識が自分のものになっていく感覚を味わえました。
この実践から得られた効果は次の通りです。
- 疑問の答えを見つけようとするほど集中できる
- 自分の考えが次々と浮かんでくる
- 本から何を学んだか見える化できる
読んだ内容を深く理解し、自分なりの結論を導きたい人に最適なメソッドです。
「シンプル読書メモ」で記憶を定着させる
要約や疑問を出すのはハードルが高そう…と感じるなら、明治大学教授で東大卒の齋藤孝氏が勧める「読書メモ」がおすすめです。
これは本の情報と簡単なコメントを書いてリスト化する方法で、手書きでもデジタルでも構いません。記録する内容は以下の通り。*5
- 「書名」
- 「著者名」
- 「出版社名など」
- 「コメント」(1~3行程度)
齋藤氏の読書メモの一例はこちら。*5
・『この人を見よ』 ニーチェ、講談社文庫
目次だけでぶっとぶ。なぜ私は賢いのか。
堅苦しく考えず、感じたことを簡潔に書くだけなので、誰でも始めやすい方法です。
齋藤氏によれば、「このリストがフックとなって、本の内容を記憶から呼び起こせる」そうです。*5
筆者も手書きで読書メモを作ってみました。
多くの本を読む筆者には、この手軽な読書メモが最適でした。短時間で完了し、負担が少ないため継続しやすく、次々と新しい本に手を伸ばす多読家にとって理想的な方法です。
なお、読みながら心に響いた言葉に付箋を貼っておくと、読書メモに書きたい部分をすぐに見つけられて便利です。
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今回ご紹介した3つのアウトプット術は、それぞれ難易度や目的が異なります。自分の読書スタイルに合う方法を選んで、本からの学びを確実に自分のものにしてみてください。単に読むだけでは得られない「知識の定着」という効果をもたらしてくれるはずです。
*1: STUDY HACKER|偏差値35から "読書で" 東大合格! 最強の『東大読書』の真髄を探る。
*2: 佐々木京聖(2020),『東大理III スピード読書術』, 学研プラス.
*3: STUDY HACKER|「身にならない読書」してませんか? 『"東大式" 選書法&読書法』で読書の質は劇的に上がる。
*4: 西岡壱誠著(2018),『東大読書』,東洋経済新報社.
*5: 齋藤孝(2019),『本は読んだらすぐアウトプットする!』, 興陽館.
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。