
連休明け、休みのあいだに12時近くまで寝て体を休めたはずなのに、月曜の朝になると前の週より体が重い——。
同じような違和感を覚えたことのある方も多いのではないでしょうか。
たくさん休んだはずなのに疲れている。一見すると奇妙なこの現象には、近年の研究で、科学的な裏付けがあることがわかってきたそうです。よかれと思って続けている習慣のいくつかが、むしろ疲れやだるさを長引かせているからかもしれないのです。
もうすぐゴールデンウィーク。長い連休明けに体調を崩したり、「五月病」に悩まされる人が増えるのは、生活リズムが大きく変わるこの時期ならではの現象です。そしてその一因には、こうした「よかれと思って」の習慣もかかわっているかもしれません。
本記事では、五月病対策としてやってしまいがちな意外なNG行動と、代わりに取り入れたいアクションをふたつ紹介します。
NGその1: 週末はたっぷり寝る
「週末の寝だめ」が自律神経を乱す? 脳を疲れさせるソーシャルジェットラグ

疲れをとるために、週末はたくさん寝ようと考える人は少なくありません。しかし、これがかえって疲労を増幅させている可能性があります。
というのも、週末の寝だめは「ソーシャル・ジェットラグ」を引き起こすから。
睡眠リズムが不規則になることで体内時計にずれが生じ、「時差ぼけ」の状態になること。自律神経が乱れ、脳の疲労が蓄積しやすくなります。週末のわずか1~2時間の体内時計のずれであっても、気分の落ち込みや昼間のパフォーマンス低下を招くことが、東京科学大学の駒田陽子教授らの研究で指摘されています。*1
たとえば、平日は7時起床なのに休日は12時まで寝てしまった——こういった睡眠リズムのズレが、ソーシャルジェットラグの正体です。
五月病の症状を解消するためによかれと思ってたくさん寝たのに、むしろだるさや気分の落ち込みを長引かせることになるのは辛いもの。では、疲れをとるためには何をすればいいのでしょうか?
▶代わりに「朝日を浴びながら散歩」がおすすめ!
体が重い、気分が晴れないという状態を回復させるなら、寝だめよりも「朝日を浴びながら歩くこと」が効果的です。
精神科医の樺沢紫苑氏は、「起床後1時間以内に、15~30分の散歩を行なう」ことをすすめています。それによって、次のような効果が見込めるそうです。*2
- セロトニンが活性化し、脳の疲労を回復できる
- 体内時計がリセットされ、睡眠のリズムが整う
筆者も朝に散歩する習慣を1年前くらいから取り入れています。できない日も多いのですが、朝日を浴びて散歩した日は気持ちが前向きになり、そのあとの仕事にもはずみがつくのを実感しています。
多少疲れていても、朝に外を歩くと心身の調子が整うため、遅くまで寝ているよりもおすすめです。
とはいえ、五月病でだるいときに「起きて1時間以内に外へ出る」というのは、なかなかハードルが高いかもしれません。最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。まずはカーテンを開けて、窓辺やベランダで朝日を浴びるだけでもセロトニンの分泌は始まります。慣れてきたら、短い散歩へと広げていきましょう。
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NGその2: 無理やり元気を出そうとする
「無理なポジティブ」は逆効果。心身をすり減らす“躁的防衛”とは

五月病で気分が落ちると、「早く元気にならなければ」「まわりに心配をかけてはいけない」と考え、無理に元気を出そうとしてしまうこともよくあります。しかし心理学では、この努力が逆効果になることが知られています。
臨床心理学では、ネガティブな気持ちを押し殺して無理に明るく振る舞い続けることを「躁的防衛」と呼ぶことがあります。*3
公認心理師の大美賀直子氏によれば、躁的防衛は「短期的なストレスを乗り越えていく際には有効」な一方、長期的には「精神だけでなく、体の健康や生活にも支障が生じ」ると指摘されています。*3
気分が落ち込むたびに「無理やり元気を出す」という対処法を取り続けるのは、長期的に見れば得策とは言えないのです。ぜひ、自分のメンタルを整える別の対処法を探しておきましょう。
▶代わりに「気をそらす」のがおすすめ!
五月病による憂鬱は、一時的なストレスや疲れが原因であることが多いようです。そんなときは、無理に憂鬱の原因を深掘りするのではなく、「気をそらす」という対処法が有効です。
というのも、憂鬱なときは、過去の失敗や自分の欠点について考え続けてしまう、「反芻思考」と呼ばれる状態に陥りやすくなるから。つまり、ぐるぐると同じようなことを何度も考えてしまうのです。*4
人間が反芻思考をやってしまう理由のひとつは、「憂鬱なときは反芻思考に陥りやすい」という事実に無自覚だからだと筆者は考えています。
裏を返せば、いまこの記事を読んだあなたは、すでに最初のステップをクリアしているということ。憂鬱なときに自分がどういう状態になりやすいかを知っているだけで、対処のスタート地点に立てているのです。
あとは、気をそらせばいい。大げさなことはしなくて大丈夫です。家から出なくても、その場からほとんど動かなくても、気をそらすことはできます。
たとえば筆者の場合、テレビをつけて「こんなお店ができたのか」「あの焼肉おいしそうだな」など、情報に集中して気をそらすようにしています。これがとても効果的で、気づくと憂鬱な気分がマシになっているのです。
心理学やストレスマネジメントの世界では、意図的に別の行動をとってストレスから離れることを「気晴らし型コーピング」と呼びます。これは単なる現実逃避ではなく、脳の負担を減らすための立派な科学的アプローチです。
テレビ、ラジオ、映画やアニメ、近所を散歩するなど、気をそらすための手段をいくつかもっておくのがおすすめです。
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よかれと思ってやっていた五月病対策のなかにも、むしろ逆効果になるものがあります。対処法をアップデートして、健やかに夏を迎えましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 疲れをとるために休日に「寝だめ」をするのは効果的ですか?
逆効果になる可能性があります。休日の寝だめは「ソーシャルジェットラグ(体内時計のズレ)」を引き起こし、かえってだるさや疲労感を長引かせてしまうことがあります。週末のわずか1~2時間の体内時計のずれでも、気分の落ち込みやパフォーマンスの低下につながると指摘されています。
Q. 連休明けの重だるさや五月病を解消するおすすめの方法はありますか?
精神科医の樺沢紫苑氏は、起床後1時間以内に15~30分、朝日を浴びながら散歩することを推奨しています。セロトニンが活性化し、脳の疲労回復や睡眠リズムのリセットにつながるとされています。
Q. 五月病で気分が落ち込んでいるとき、どう対処すればいいですか?
憂鬱な原因を考えすぎず、テレビや趣味など自分以外のものへ「気をそらす」のが有効です。これは心理学で「気晴らし型コーピング」と呼ばれる対処法で、脳の負担を軽減する効果が期待できます。無理に元気を出そうとすると、かえって心身の負担になることがあります。
*1 サワイ健康推進課|「寝だめ」の思わぬ落とし穴!?不規則な睡眠が招く社会的時差ぼけ(ソーシャルジェットラグ)とは
*2 ダイヤモンド・オンライン|精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣――ストレスフリーに生きる方法【書籍オンライン編集部セレクション】
*3 All About|テンションが高すぎる人は「躁的防衛」かも…ハイテンションに潜む心の危機
*4 プレジデントオンライン|駅の階段で「もも上げ本気ダッシュ」の効用…不毛な“自己嫌悪の沼”から抜け出すために“効果的な活動”
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。