生成AIを『壁打ち相手』にするための心理学的3ステップ|『フィードバックループ』で思考を深める

生成AIと仲良くフィードバックループを行なうビジネスパーソン

「生成AIを壁打ち相手に使うといい」──最近、そんなアドバイスを耳にしたことはありませんか?

AIとの対話を通じて自分の考えを整理・深める方法です。

でも、実際にやってみると「どう質問すればいいの?」「ただ話しかけるだけで効果があるの?」と戸惑うことも多いはず。

そこで今回は、自己認識や行動変容に役立つ「フィードバックループ」という考え方を取り入れ、生成AIを “自分の思考を磨く相手” として活用する具体的な方法をご紹介します。

心理学から見た「フィードバックループ」の価値

まずは、「フィードバックループ」とは何か、その基本から見ていきましょう。

心理学者の瀬島順一郎氏は、フィードバックを「行動変容だけでなく、人間の考え方そのものを支える理論にもなっている」としています。*1

フィードバックが新たな気づきや視点をもたらし、信念や価値観の見直しを促すためでしょう。

そして――

このフィードバックを継続的に繰り返すことで、思考や行動を段階的に深めていく仕組みが「フィードバックループ」です。*2

生成AIには心理的配慮や感情的な抵抗がないため、客観的にフィードバックを与えてくれます。

ですから、このプロセスに生成AIを活用すれば、自分自身の考えをよりクリアに整理し、深めることができるはず。理想的なパートナーになるのではないでしょうか。

生成AIとフィードバックループを行なうイメージ

「フィードバックループ」で生成AIを活用する具体的な3ステップ

ではここで、生成AIを活用し、フィードバックループで思考を磨く【3ステップ】をご紹介します。

【ステップ①】:ざっくり

最初から精度の高い質問を作ろうとせず、まずは自分の考えをざっくりとAIに伝えます。

≪ 例 ① ≫

ユーザー:「手軽で健康的な食事サービスのアイデアを考えているんだけど、どう思う?

たとえばターゲットは忙しい社会人で、コンビニ感覚で利用できるような感じ」

生成AI:「忙しい社会人向けであれば、健康志向の冷凍ミールキットやサブスクリプション型のサラダデリバリーサービスが考えられます。

ただし、ターゲットが広すぎるかもしれません。ライフスタイルに合わせて絞り込むと効果的です」

生成AIの最初のフィードバックは、自己の考えを客観視するための第一歩となります。

【ステップ②】:深掘り

AIからの回答を基に、さらに深く具体的な質問を重ねていきます。

≪ 例 ② ≫

ユーザー:「ターゲットが広すぎるというけれど、具体的にどのようなターゲットを設定するとよいかな?」

生成AI:「たとえば、平日は帰宅が遅く自炊が難しい『ひとり暮らしの若手社会人』や、ジムに通うなど健康意識の高い『アクティブ層』が考えられます。

この場合、低糖質・高たんぱくのメニューに特化するとニーズにマッチしやすいでしょう」

このプロセスを繰り返すことで、徐々に自分のアイデアの解像度が高まります。

【ステップ③】:結果報告

フィードバックループの締めとして、自分の得た結論をAIに伝えることも重要です。

≪ 例 ③ ≫

ユーザー:「最終的に、ひとり暮らしの若手社会人向けの、短時間で健康的な食事がとれるサービスに落ち着きました。(~詳細省略)」

生成AI:「その方向性は明確ですね。さらに差別化を図るなら、『週替わりの栄養士監修メニュー』や『アプリでの健康管理サポート機能』などを付加価値として検討するとよいでしょう」

こうしてユーザーが結果を伝えることで、生成AIは必要に応じて再度フィードバックを提供し、最終的な見落としや改善点を指摘してくれます。

思考の抜け漏れも防げるでしょう。

フィードバックループを行なう生成AIとビジネスパーソン

このように生成AIとの壁打ちを継続することで、自己理解もアイデアの質も高まっていくのです。

フィードバックループの継続的な実践方法

継続的なフィードバックループを実践するために、ChatGPTのメモリ機能もご紹介しておきます。

ChatGPTのメモリ機能とは、ChatGPTがユーザー情報を記憶し、次回以降のやり取りに活かす仕組みのこと。セッションごとに記憶がリセットされるChatGPTの制約を補い、中長期的な対話の質を高める可能性があります。*3

※Microsoft MVP・AIパートナー・LinkX Japan株式会社 代表取締役の坂本将磨氏が監修した記事を参考にしました。

≪メモリの仕組み≫

  • 明示的な保存
    例:「私はビジネスパーソン向けコラムを執筆・編集しています。これを覚えてください」と伝えると、ChatGPTはそれを記憶して、回答に反映させる。

  • 自動学習
    過去の会話から、ChatGPTが自ら重要な情報(担当プロジェクト名や目標設定、資料フォーマットの好みなど)を汲み取り会話に反映させる。

≪プライバシーと管理≫

  • メモリ機能は設定からオン/オフを選択可能

  • 保存内容はいつでも確認・削除できる

  • 健康情報などの機密データは、自動で記憶しない

≪注意点≫

ただし、すべての情報が確実に保存・反映されるわけではありません。ChatGPT 4oが以下の説明とアドバイスをくれました。

  • メモリON ➔ 記憶「するかもしれない」状態になる。
  • でも「必ず覚える」わけではなく、重要だと判断された内容だけが保存される。
  • 確実に覚えさせたいなら、会話中に「これをメモして」「覚えておいて」と明示的に伝えたほうが成功率は高い。

フィードバックループを活用した具体的成功事例

フィードバックループをAIとの対話で実践した結果、企画やプレゼン準備などで成功した事例もあります。そのひとつを紹介しましょう。*4

JPモルガン ビジネスストーリーテリング事例
背景

JPモルガンのテクノロジー監査マネージャーであるAkshat Anil Ratanpal氏は、社内コミュニケーション強化のため「ビジネスストーリーテリングの利点」に関するプレゼンの機会を得ました。

 
準備プロセス
  • 自身の知識やビジネス事例をまとめ、PowerPointで資料作成
  • AIツール「AIForgeHub」でコンテンツ整理(機密情報は不使用)
 
AIからのフィードバック

フィードバックを受け、スライドを30枚から20枚に減らし、内容を洗練。

 
結果
最終プレゼンは高評価を獲得し、多くの同僚から好意的なフィードバックを得ました。

とはいえ、AIを有効に活用するには、いくつか気をつけたいポイントもあります。

最後にフィードバックループ実践時の注意点をお伝えしましょう。

AIとのフィードバックループ実践時の注意点

AIから得たフィードバックは、そのまま受け入れるのではなく、あくまで自分の思考を深めるためのひとつの視点として活用することが重要です。

事実、AIには学習データの偏りによるバイアスや、情報の誤りを含む場合もあります。

最終的な判断は、必ず自分自身で行なうようにしましょう!

***
「フィードバックループ」を意識しながらAIとの壁打ちを行なえば、自分自身の考えやアイデアが明確化され、質の高い結果を得ることができます。ぜひ今回ご紹介した方法を日々の業務や思考整理に役立ててください。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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