徹底的に考え抜き、最善の結論を導くための思考法。もう「ただの思いつき」では終わらせない

加藤彰さんインタビュー「ホリゾンタル法という思考法のメリット」01

ディベートのなかでも欧米を中心に盛んに行なわれている「競技ディベート」で用いられるのが「即興型ディベート」というもの(『瞬時に考えて伝えられる人になる! 全ビジネスパーソン必携「3つの力」が身につく最強テクニック』参照)。

即興型ディベートのエキスパートである加藤彰(かとう・あきら)さんは、「即興型ディベートで用いられる思考法は、少し特殊なもの」と言います。加藤さんが「ホリゾンタル法」と名づけたその思考法とはいったいどんなものなのでしょうか。ホリゾンタル法がもつメリットとあわせて教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「相手」を起点として思考する「ホリゾンタル法」

これまで一般的に、思考法には大きくふたつの種類があるとされてきました。演繹法とも呼ばれる「トップダウン法」、それから帰納法とも呼ばれる「ボトムアップ法」です。

簡単に言うと、トップダウン法は「目的」を起点として物事を考える方法。ビジネスの場で言えば、「会社の業績をV字回復させるために」どういった商品をつくるべきかといったことを考えるケースにあたります。

それに対してボトムアップ法は、「事象」を起点として物事を考える方法です。たとえば、「顧客とのあいだである問題が頻発している」という具体的な事象があり、その改善法を考えるようなケースです。

でも、私自身は、思考法はそのふたつに限られたものではないと考えています。私が専門とする「即興型ディベート」には、それらふたつとは異なる思考法が必要とされるのです。私は、それをホリゾンタル法と名づけました。

ホリゾンタル(horizontal)とは「水平」という意味です。即興型ディベートにおいては、基本的に「相手」を起点とした思考を用います。与えられた議題に対して相手がどう考えているか、どういう意見を述べたか、だったらこちらはどんな意見をぶつけるべきか。さらにこちらの意見に対して相手がどう考えてどんな意見を述べるのか――。そのように自分と相手のあいだに思考が行き交うところから、ホリゾンタル法と名づけたのです。

加藤彰さんインタビュー「ホリゾンタル法という思考法のメリット」02

ホリゾンタル法がもつふたつの大きなメリット

このホリゾンタル法がもつ大きなメリットは、思考に客観性を与えられる」「思考を徹底的に深められるということです。

トップダウン法やボトムアップ法の場合、その思考はどうしても独りよがりになりがちです。たとえば、先に例に挙げた、会社の業績をV字回復させるためにどういった商品をつくるべきかを考える企画会議に臨む場合、出席者それぞれが企画をもち寄ります。その企画を考えるときに使うのはトップダウン法です。でも、出席者それぞれがひとりで考えた企画は、それこそ独りよがりのものになってしまう可能性が高いのです。

そこで、独りよがりにならず客観的でよりよい結論に至るためにホリゾンタル法を用いてみましょう。このケースで言えば、出席者がそれぞれ考えた企画はまだ独りよがりのものでしょう。でも、会議の場で自らの企画の強みをアピールする。あるいはほかの出席者の企画にある問題点を指摘する。さらに周囲から返ってきた意見をふまえて企画をブラッシュアップする。そうして最終的にたどり着いた企画案は、もう独りよがりのものではありません。

もちろん、そうしていくプロセスでは、それぞれの思考を徹底的に深めることにもなります。その流れで導かれた結論は、ただの思いつきといった浅いものではなくなっているのです。

加藤彰さんインタビュー「ホリゾンタル法という思考法のメリット」03

ホリゾンタル法の力を高める「脳内ディベート」

もちろん、どんな場面でもホリゾンタル法を使えばいいというわけではありません。トップダウン法、ボトムアップ法、ホリゾンタル法にはそれぞれにメリットがあります。ですから、常にその3つの思考をぐるぐると回していくことが大切です。そうすることで、考えをより深めることができるのです。

とはいえ、ディベートが苦手だと言われる私たち日本人にはやはりホリゾンタル法の力が足りないように私は感じています。ホリゾンタル法の力を伸ばしていくためにおすすめしたいのは、私が脳内ディベートと呼んでいるメソッドです。

ディベートというと、相手がいないとできないものと思いがちですが、そうではありません。ひとりでも十分にホリゾンタル法の力を磨くことができます。

これはかつて私自身が行なっていたものでもあります。まずは、なんらかの企画の提案を指示された場合などに、上司からの指示や意見をすべてノートに書きとめる。それに対して、自分なりの企画を考えたらそれもノートに書き込んでみる。これはこれでいいのですが、その先まで考えてほしい。

自分の企画に対して上司はどんな反応を示すのか。または、上司が突っ込んできそうなことも書き出すのです。そして、さらにその上司の突っ込みに対する反論まで書き出しましょう。

そうすることで、自分の脳内において仮想の上司と何度も意見を交わすことになり、ホリゾンタル法の力を高められます。もちろん、そうした過程を経た企画案は、よりよいものになっていくに違いありません。

加藤彰さんインタビュー「ホリゾンタル法という思考法のメリット」04

【加藤彰さん ほかのインタビュー記事はこちら】
瞬時に考えて伝えられる人になる! 全ビジネスパーソン必携「3つの力」が身につく最強テクニック
とにかく “○○” する。「意見が言えない」悩みを解決するには、結局これが一番いい

【プロフィール】
加藤彰(かとう・あきら)
九州大学大学院言語文化研究院学術研究者、跡見学園女子大学兼任講師、ディベート教育国際研究会役員、一般社団法人全国英語ディベート連盟国際委員会アドバイザー。東京大学法学部、東京大学公共政策大学院卒。在学時から即興型ディベートをはじめる。東京大学英語ディベート部元代表、現卒業会顧問。大学生全国大会優勝、審査委員長、アジア大会日本人記録樹立。外務省・文科省後援で世界初のSDGsにコミットする国際大会Kyushu Debate Open設立メンバー兼審査委員長。大学生北東アジア大会審査委員長、日本人初となる高校生世界大会招聘審査員。東大を中心に多数のコーチ実績に加え、日本の20以上の大学・高校・中学校や、企業向けに日本語・英語でのディベート講演経験あり。国際学会発表多数。経営コンサルティング企業マネジャーでもある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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