自分の貯金は足りているのか、いないのか。この問いに、はっきり答えられる人は多くありません。理由は簡単で、比べるための指標を持っていないからです。
ネットで見かける「平均貯蓄額」は富裕層を含んだ数字で、自分の状況とはかみ合わない。だから不安の正体がつかめないまま、なんとなく日々が過ぎていきます。
「20%以上あれば、資産作りが上手な方です」と語るのは、年間500組以上の個別相談を受けるファイナンシャルプランナーの申田旭人さん。相談の場で最初に見るのは、通帳の残高ではなく「貯蓄率」というひとつの数字だといいます。計算はシンプルで、この記事を読みながら誰でも自分の数字を出せます。合格ライン20%の意味と、届かなかったときの改善策を聞きました。
構成・取材 / STUDY HACKER編集部
【プロフィール】
申田旭人(さるた・あきと)
株式会社BlueFlame所属のファイナンシャルプランナー。陸上自衛隊に6年間勤務後、外資系保険会社を経て現職12年目。IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として、保険にとどまらず資産運用や住宅ローンを含めた資金プランニング全般の相談を年間500組以上受ける。私生活では2014年に住宅を購入し、2人の娘を育てる父親でもある。
- 貯蓄率の計算式。あなたも今すぐ出せます
- 20%は正直きつい。だから「順番」を間違えない
- 効果の薄い努力から、先にやめる
- 手をつける固定費は4つ。そして「児童手当」という盲点
- 「保険屋に相談すると売りつけられる」は誤解だった
貯蓄率の計算式。あなたも今すぐ出せます
貯蓄率とは、社会人になってから今までの累計収入に対して、現在の資産が何%あるかという数字です。
モデルケースで計算してみましょう。35歳のご夫婦、ともに23歳から働き始めたケースです。
まず夫です。社会人12年で稼いだ累計を、4,800万円とします。
次に妻です。出産などを挟んで勤務期間は7年、累計を2,100万円とします。
ふたり分を足すと、4,800万円+2,100万円で6,900万円。これが、この夫婦がこれまでに得た累計収入です。
現在の貯蓄額をこの累計収入で割ったものが貯蓄率です。この夫婦なら、6,900万円×20%で1,380万円。資産がこれだけあれば、合格ラインに届きます。
「20%以上あれば、資産作りが上手な方。20%未満なら、改善が必要というお話をしています」
ポイントは2つあります。銀行残高だけでなく、運用資産も含めた全体で見ること。そして「いくらあればいい」という絶対額ではなく、割合で見ることです。収入も生活費も人それぞれ。だからこそ、自分の収入に対する割合で測るこの指標は、誰にとっても自分ごとの数字になります。

20%は正直きつい。だから「順番」を間違えない
計算してみて、20%に届かなかった方もいるはずです。安心してください、というと変ですが、このラインは決して緩くありません。取材した私たちも「普通に生活していたら相当高いハードルでは」と率直にぶつけたところ、申田さんもそれを認めたうえで、こう続けました。
「収入はなかなか上がりませんから。だから改善は2つです。まず固定費を改善する。そしてお金を増やす。この2点です」
注目したいのは順番です。貯蓄率を上げようとするとき、多くの人は「収入を増やす」か「節約を頑張る」を思い浮かべます。しかし転職や副業で収入を上げるのは時間がかかり、確実性もない。申田さんの改善は、確実に効くところから手をつけます。
効果の薄い努力から、先にやめる
固定費の話の前に、やめるべき努力の話をしましょう。申田さんが挙げた「頑張っているのに効果が薄い」行動の筆頭は、意外にも家計簿でした。
「一生懸命つけている方がいらっしゃるんですが、つけるだけでは効果はないんです。それなら目の前の固定費を早く削減した方がいい。削減すれば5年後、10年後までずっと効果が続きますから」
家計簿を頑張っている人ほど、記録すること自体が目的になり、具体的に何を削るべきかがわかっていないことが多いといいます。
もうひとつが、変動費の細かい節約です。
「ガソリンを1円でも安いスタンドを探して遠くまで行く。1円でも安い野菜を求めてスーパーをはしごする。素晴らしいことではあるんですが、その時間とガソリン代の方がもったいない。時間の方が大事です」
節約の努力そのものが悪いのではなく、削る場所を間違えているのが問題だということです。一度の手続きで5年、10年と効き続ける固定費と、毎日頑張り続けないと維持できない変動費。同じ労力なら、答えは明らかです。

手をつける固定費は4つ。そして「児童手当」という盲点
では、どの固定費から手をつけるか。申田さんが挙げるポイントは4つです。携帯電話、住宅ローン、生命保険、そして自動車保険などの損害保険。
効果が大きいのは住宅ローンですが、意外な伏兵が携帯電話だといいます。
「携帯電話に月3万、4万円払っている方が、まだいらっしゃるんです。それを1万5,000円ほどに下げていただく。よくわからないまま払っていた保険も見直す。その浮いたお金で運用を始めていただくんです」
さらに、子育て世帯には見落としがちな盲点があります。児童手当です。
「多くの方が、子どものお金だからと、子ども名義の銀行口座に入れています。でも18年間もらい続けても、銀行に置いたままなら合計230万円ほどのままなんです。18年という時間があるなら、もっと効果的なやり方がありますよ、と」
資産形成において、18年という長い時間を最初から約束されているお金は、ほかにありません。置き場所を変えるだけで、同じ児童手当の意味が変わってくるということです。
「保険屋に相談すると売りつけられる」は誤解だった
ここまで読んで、「でも、こういう相談に行くと何か契約させられるのでは」と感じた方もいるはずです。実はこの警戒こそ、多くの人が損をしている理由かもしれません。
申田さんの肩書はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。特定の保険会社の営業ではなく、保険・証券の両方を扱う独立した立場です。
「私は何も強制しません。独立した立場で、いろいろな角度から情報を提供するだけです。いいなと思ったら改善してもらえればいい。嫌なら2回目以降は面談しなくていいわけですから」
実際、相談の入り口はむしろコスト削減です。住宅ローンの借り換えでは、各銀行のシミュレーションを出して、手続きまで代行するサービスもあるといいます。相談した結果、支出が増えるどころか、足元の家計が軽くなって始まる。この順番を知っているかどうかは大きな分かれ目です。
固定費を削って、お金が生まれた。次の問題は、その行き先です。銀行に置いたままでは増えない時代に、どこへ向かわせるか。次回の記事では、「とりあえずNISAは始めたけれど、これで正解かわからない」という人にこそ読んでほしい、運用の考え方を聞きます。
※申田さんが登壇するオンラインセミナーを9月29日(火)20時より開催予定です。詳細は追ってご案内します。
【申田旭人さん ほかのインタビュー記事はこちら】
- その安心、根拠はありますか。年間500組の相談を受けるFPが示す「老後の計算式」
- NISA、なんとなくやっていませんか。プロが指摘する「目的なき積立」の落とし穴(※近日公開)
STUDY HACKER 編集部
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