NISA、なんとなくやっていませんか。プロが指摘する「目的なき積立」の落とし穴

NISA積立の目的設定が重要な理由——FPが指摘する目的なき運用が招く失敗と三大資金の優先順位とりあえずNISAは始めた。毎月の積立額もなんとなく決めた。でも、この設定で合っているのかは、誰にも聞いたことがない。中身を人に見せたことも、実はない。そういう方は少なくないはずです。

年間500組以上の個別相談を受けるファイナンシャルプランナーの申田旭人さんが、相談者の運用の中身を見て最初に聞くのは、銘柄でも金額でもなく「何のためにやっているんですか」という質問だといいます。「目的のなさ」こそが、自己流運用の最大の落とし穴なのだと申田さんは言います。

目的・継続・インフレ・時間という4つの視点から、運用の考え方を聞きました。

構成・取材 / STUDY HACKER編集部

【プロフィール】
申田旭人(さるた・あきと)
株式会社BlueFlame所属のファイナンシャルプランナー。陸上自衛隊に6年間勤務後、外資系保険会社を経て現職12年目。IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として、保険にとどまらず資産運用や住宅ローンを含めた資金プランニング全般の相談を年間500組以上受ける。私生活では2014年に住宅を購入し、2人の娘を育てる父親でもある。

目的が決まると、金額と期間が決まる

「NISAについては『何のためにやっているんですか』とうかがいます。すると多くの方が、よくわからないけどトレンドだから、周りがやっているから、と」

なぜ、目的が要るのか。それは、目的によって「いつまでに、いくら」が変わるからです。

申田さんが相談で確認するのは、教育・住宅・老後という三大資金です。重要なのは、この順番でお金の出番が来るということ。教育資金は子どもが生まれてから18年しか猶予がありません。住宅は金利が動いています。老後はいちばん遠いぶん、時間を味方につけられます。

「このNISAは老後のため、と決まれば、資金の管理ができるようになります。若ければ時間があるので少額でもいい。逆に、教育資金の準備ができていないのにNISAばかりにお金を回しているなら、まずそちらが先ですよ、とお話しします」

つまり、同じ月3万円の積立でも、目的次第で「正解」にも「順番違い」にもなるということです。積立額の多い少ないより先に、そのお金に名前がついているかどうか。これが自己流とプロの設計の分かれ目です。

暴落でやめていくのは「なんとなく」で始めた人

2024年夏の急落のように、市場は時々大きく荒れます。そのたびに、慌てて売却して損を確定させてしまう人が出ます。申田さんの見立ては明快でした。

「ネットの情報でなんとなく始めた方は、暴落に慣れていないのでやめていきます。でも、ドルコスト平均法をきちんと理解していれば、暴落したときこそ安く買えるという認識になるので、やめないんです」

毎月一定額を積み立てる方式では、価格が下がった月ほど多くの量を買えます。だから長期の積立において、下落局面は必ずしも敵ではない。この原則を知識として知っているかどうかが、続けられる人とやめてしまう人を分けます。

「お得だから、周りがやっているから、で始めた方がやめていきますね」

始めた理由が「なんとなく」の人は、やめる理由も「なんとなく怖いから」になる。目的の話と、根は同じです。

インフレで現金の価値は目減りする——物価上昇率2%で1000万円が30年後に545万円になる資産運用の必要性

現金の価値は目減りする。1,000万円が30年で545万円

一方で、「運用は怖いから現金で持っておく」という選択にも、実はリスクがあります。インフレです。

身近な例で見てみましょう。牛丼は2014年に307円だったものが、2024年には474円。約54%上がりました。同じお金で買えるものが、確実に減っています。

これを資産全体に当てはめると、物価上昇率が年1%で続いた場合、現在の1,000万円の実質的な価値は30年後に739万円相当。2%なら545万円、3%なら401万円まで目減りする計算になります。

「多くの方が、運用のことは怖い怖いとおっしゃるんです。でも、では銀行にお金を置いておくことについて勉強したことはありますか、とうかがうと、こちらは全然勉強せずに怖いと言っている。実は銀行預金も、安心ではないんです」

リスクを取るか取らないかではなく、どちらのリスクを取るか。物価が上がる時代の資産の置き場所は、そういう問いに変わっています。

あわせて覚えておきたいのが「72の法則」です。72を利率で割ると、お金が2倍になるまでのおおよその年数がわかります。年3%なら約24年、6%なら約12年。では0.1%なら。答えは約720年です。金利を味方につけるかどうかで、時間の意味がこれほど変わります。

月3万円を20年。銀行と運用で、どのくらい差がつくのか

最後に、具体的なスケール感です。毎月3万円を20年間積み立てると、元本は720万円。銀行に置くだけならほぼそのままですが、運用した場合はどうなるか。

「20年運用すれば1,500万円、商品によっては2,000万円になることもあります。手堅く見ても、プラス500万〜600万円というところだと思います」

もちろん運用に絶対はなく、これは将来の成果を保証する数字ではありません。それでも、20年という時間があれば、同じ月3万円の行き先次第で数百万円から1,000万円近い差がつき得る。前回の記事で固定費を削って生んだお金の価値は、置き場所で変わるということです。

なお、近年気になる円安については、申田さんはこう整理します。

「コロナ前は1ドル105円、110円が当たり前でしたが、そこから大きく動きました。円高にはなかなか戻りづらい。逆に言えば、今の水準が普通だと捉えて運用していくしかない、とお話ししています」

月3万円を20年間運用した場合の資産シミュレーション——銀行預金と投資の差額と個別相談の重要性

「正解」は人によって違う。だから個別に見る

ここまで、目的・継続・インフレ・時間という運用の考え方を見てきました。ただし申田さんは、セミナーや記事で伝えられることの限界も率直に語ります。

「セミナーでは一般的な話しかできません。でも皆さんが知りたいのは、答えなんですよ。自分がやっているファンドの中身はどうなのか、教育資金の具体的な貯め方、住宅ローンの具体的な組み方。そういう答えは、個別に見ないとお伝えできないんです」

あなたにとっての正解は、家族構成、収入、住宅、これまでの資産で全部変わります。だからこそ、一般論を学んだうえで、自分の数字を専門家と一緒に見る機会には価値があります。

その申田さんが登壇するオンラインセミナーが、9月29日(火)20時から開催されます。教育・住宅・老後の三大資金の考え方から、今回紹介した貯蓄率や運用の話まで、1時間で全体像がつかめる内容です。参加は無料で、カメラオフのまま気軽に聞けます。個別相談はセミナー後に希望者のみ。申田さんいわく「私は何も強制しませんし、嫌なら2回目以降は面談しなくていい」とのことなので、まずは話を聞くだけでも損はないはずです。

本記事は申田旭人さんの監修のもと作成しています。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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