「試験に向けて勉強中だけどたまにはお酒が飲みたい」人必見! 3つのポイント

勉強とお酒の関係1

資格試験などに向けて日々勉強に励むみなさんのなかには、お酒が好きなのに禁酒している人もいるはず。たしかに、アルコールは思考力や記憶力に悪影響を与える場合があるため、好きなだけ飲酒するわけにもいきませんよね。翌日のパフォーマンスが低下してしまう恐れもあります。

しかし、「頑張ったあとの晩酌」がストレスを解消してくれる効果は無視できません。我慢を続けてストレスが蓄積し、心身の健康が損なわれる結果になっては、もとも子もありませんよね。

今回は、テストに向けて勉強を頑張りつつも、悪影響を最小限に抑えてお酒を楽しむ方法をご紹介します。

お酒が勉強に及ぼすメリット

まずは、ストレス解消以外にも、お酒を飲むことが勉強に及ぼすメリットを確認しましょう。

大阪がん循環器病予防センターによると、適量のお酒は血行を促進してくれるそう。動脈硬化を予防する「HDLコレステロール」が増加する効果もあるのだとか。

管理栄養士の白井由紀氏も、日本酒に多く含まれる「アデノシン」は、血管の収縮を防いで血流をスムーズにすると述べています。また、食品科学を専門とする医学博士の須見洋行氏によると、芋焼酎や泡盛を飲むことで、血流を悪くする「血栓」が溶けるそうです。

脳の血行は、勉強のパフォーマンスと関係しています。京都大学薬学研究科・金子周司教授らの2018年の研究によれば、脳血流の低下が長く続くと認知機能障害が起こるそう。豪州の生態学者ロジャー・シーモア氏も、高い知能には血流による酸素と栄養素の供給が不可欠だと話しています。

勉強していると、長時間座ったままになりがちですよね。豪カトリック大学メアリー・マッキロップ健康研究所のマイケル・ウィーラー氏らが2019年に発表した論文によると、座ったままでは脳の血流が低下するそうです。

つまり、勉強を続けると脳血流が低下し、パフォーマンスが落ちてしまうものの、お酒を飲むことで血流が回復するのですね。

勉強とお酒の関係3

お酒が勉強に及ぼすデメリット

一方で、もちろんお酒は勉強にデメリットを及ぼすこともあります。

睡眠の質が下がる

睡眠専門医の坪田聡氏によると、アルコールが体内で分解されてできる「アセドアルデヒド」は眠りを浅くしてしまうそう。また、アルコールは抗利尿ホルモン「バソプレッシン」の分泌を抑制するため、寝たあとに尿意で目を覚ましやすくなるとのことです。

心理療法士ショーン・スティーブンソン氏も、アルコール摂取による睡眠の質の低下を指摘しています。人間は、睡眠中に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を周期的に繰り返していますが、アルコールはこの睡眠周期を乱してしまうため、「目覚めても気分がすっきりしない」とのこと。

充分に眠れず、頭がぼうっとした状態では、集中して勉強するのは難しそうですね。

記憶力が低下する

睡眠の質の低下は、記憶力にも悪影響を及ぼします。前述のスティーブンソン氏によると、レム睡眠は「記憶の整理」に大きく関わっているそう。

記憶の整理とは、すぐ忘れられてしまう「短期記憶」を、長いあいだ覚えていられる「長期記憶」に変えること。睡眠周期が乱れると、記憶の整理がうまく行なわれません。つまり、短期記憶が長期記憶として定着せず、せっかく勉強したことが頭に残らないのです。

認知神経科学を専門とする歯学博士の泰羅雅登氏によると、アルコールが記憶に悪影響を与える理由には、脳の「海馬」という器官が関わっているそう。短期記憶を長期記憶に移行させるには、海馬の働きが欠かせません。しかし、お酒は海馬の機能を弱めるため、「翌日になると、前夜に起きたことをきれいさっぱり忘れてしまう」のだそうです。

依存の可能性がある

精神科医のアンダース・ハンセン氏は、お酒の依存性の高さを指摘しています。アルコールによって活性化される神経伝達物質「GABA」はストレスを低減し、その作用は非常に強力だそう。ハンセン氏は「ストレスや不安を解消するという点でアルコールに匹敵する物質はない」とまで言っています。

しかし、ストレス解消効果が強すぎるのも問題です。「お酒を飲めばすぐにストレスが消える」とわかれば、ストレスを感じるたびにお酒に手を出すことになります。やがて飲酒量が増え、依存症になり、脳が機能しなくなってしまうそう。そうなれば、勉強どころではありません。

以上のように、個人差があるとはいえ、お酒は勉強に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

勉強とお酒の関係2

勉強を邪魔しないお酒の飲み方

お酒は勉強にデメリットを及ぼす可能性があるとわかりました。しかし、ストレスを解消したり血行を促進したりといったメリットがあるのもたしかです。

なんとか妥協点を見いだせないものでしょうか? 「勉強を邪魔しないお酒の飲み方」について考えてみました。

適量を守り、飲まない日をつくる

アルコールのデメリットを最小限に抑えるには、お酒を飲む量と頻度に気をつけましょう。

厚生労働省によると、「通常のアルコール代謝能を有する日本人(男性)」にとって、1日に摂取する純アルコール量は20g程度までが適切だそう。なお、ビール中瓶1本(500ml)の含む純アルコール量が20g、清酒1合(180ml)の場合は22gです。女性や高齢者、アルコール代謝能力が低い人の場合、さらに少なくなります。

また、アルコール関連問題などを専門にする医学博士・樋口進氏によると、量を減らすだけでなく、「週に2~3日は休肝日を設けるべき」だそう。アルコール依存症にならないため、お酒を飲まない日も必要とのことです。

たまにはお酒を飲む日があってもいいでしょうが、貴重な勉強時間を確保するため、量も頻度もほどほどにしておきたいところですね。

寝る直前は避ける

お酒を飲むとしても、寝る直前は避けてください。睡眠研究者として知られる医学博士・三島和夫氏によると、飲酒は就寝の3~4時間前までに終わらせるべきだそう。

お酒を飲んで、アルコールの血中濃度が高いまま寝てしまうと、血中濃度が急激に低下する「リバウンド」が睡眠中に発生するため、目が覚めてしまうそうです。飲み終わってから寝るまでのあいだ、アルコールをある程度代謝できるように、就寝直前の飲酒は控えましょう。

平日に仕事が終わったあとだと、帰宅してから勉強し、ストレス解消にお酒を飲み、さらに就寝までの時間を確保するのは難しそうですね。勉強に励むか、その日はストレス解消に専念するか、どちらかに集中しましょう。

勉強の「ご褒美」にする

お酒を飲むことを「自分へのご褒美」にすれば、勉強のモチベーションがアップします。心理学者の植木理恵氏によると、「資格試験に合格する」のように最終的な「遠隔目標」だけでなく、小刻みな「近接目標」も設定することで、勉強や運動を習慣化しやすくなるそう。

近接目標とは、「テキストを○ページまでやる」「模試で○点とる」のようなものだけではありません。いわゆる「自分へのご褒美」も近接目標になるのだそう。「この勉強が終わったら○○していいんだ!」と考えることで、やる気を出せるのです。

お酒が好きな人であれば、「行きと帰りの電車のなかで勉強したら、家でお酒を飲んでいい!」「休日に勉強を頑張ったら、夕方は飲んでいい!」と考えて、自分を奮い立たせられるでしょう。お酒を飲みたい気持ちが強いのであれば、その気持ちを利用すればいいのです。

【勉強を邪魔しないお酒の飲み方】

  • 適量を守り、飲まない日をつくる
  • 寝る直前は避ける
  • 勉強の「ご褒美」にする

***
毎日の仕事に加えて勉強もしていると、ストレスがたまり、お酒を飲みたくなることもあるはず。無理に我慢してフラストレーションを感じないよう、妥協点を見いだしましょう。本記事を参考に、自分なりのルールを定めれば、お酒も勉強も楽しめますよ。

(参考)
大阪がん循環器病予防センター|飲酒
一般社団法人 日本パーソナル管理栄養士協会 公式ホームページ|管理栄養士が伝授!日本酒の効果をいかして楽しむ方法/白井由紀
日経Gooday|本格焼酎に秘められたパワーで「血栓」を撃退!?
The University of Adelaide|Smarter brains are blood-thirsty brains
厚生労働省|アルコール
東洋経済オンライン|ストレスを飲酒で抑え込むのが危ないワケ
東洋経済オンライン|寝酒でぐっすりは大間違い、大量飲酒で依存症の恐れ《特集・差がつく睡眠力》
ダイヤモンド・オンライン|「寝酒」のデメリット、知っていますか?
ダイヤモンド・オンライン|お酒を飲んでから寝るのが身体にアブない これだけの理由
プレジデントオンライン|なぜ飲み会で酔ったときの記憶は思い出せないのか
STUDY HACKER|「物事が続かない」原因は意外とシンプル。習慣化成功のカギは “近接目標” が握っている。
Wheeler, Michael J., David W. Dunstan, Brianne Smith et al. (2019), "Morning exercise mitigates the impact of prolonged sitting on cerebral blood flow in older adults," Journal of Applied Physiology, Vol. 126, No. 4, pp.1049-1055.
Miyanohara, Jun, Masashi Kakae, Kazuki Nagayasu et al. (2018), "TRPM2 Channel Aggravates CNS Inflammation and Cognitive Impairment via Activation of Microglia in Chronic Cerebral Hypoperfusion," Journal of Neuroscience, Vol. 38, No. 14, pp.3520-3533.
ナショナルジオグラフィック日本版サイト|第44回 寝酒がダメな理由

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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