スマホに疲れているのではない。「アテンション」に疲れている。逃げられない注目との付き合い方『アテンション・デトックス』とは

スマホを触っている女性

SNSを開いて、通知に反応して、返信を返して、流行を追いかけて。楽しいはずなのに、アプリを閉じたあと、どっと疲れている。そんな感覚に、心当たりはありませんか。

その疲れの原因は、スマホでも、情報量そのものでもなく、「アテンション(注目)」かもしれません。

この記事では、若者調査から見えてきた「アテンション疲れ」の正体と、なぜそれが解決できないのか、そしてどう付き合えばいいのかを、順に見ていきます。

その疲れの正体は「アテンション」

この疲れの要因を「アテンション(注目すること・されること)」と捉えた調査があります。若者マーケティング機関のSHIBUYA109 lab.は、アテンション疲れを3つに分類しました。*1

対象
こんな疲れ
自分
自分の投稿や、それへの反応が気になってしまう
返信や既読に追われてしまう
情報
流れてくるニュースや話題で消耗してしまう

調査のインタビューにあった実際の声を当てはめると、こうなります。*1

自分に対するアテンション疲れ

「投稿に対する周りからの反応が少なかったりすると、自己肯定感が下がる」

人に対するアテンション疲れ

「友人とのメッセージのやりとりが多くなると、反応や返信し続けることが段々面倒になる」

情報に対するアテンション疲れ

「フェイクニュースや信ぴょう性に欠ける内容も流れてくるので、不安に思うこともある」

タイプごとに、背景の感情も異なるのだそう。「自分」では虚無感(30.4%)、「人」では孤独感(32.7%)、「情報」では面倒くささ(31.9%)が、それぞれ全体より高く出ています。*1

あなたの疲れは、どれに近いでしょうか。

3種類のアテンション疲れ

その疲れを、なかったことにはできない

やっかいなのは、この3つのどれも、完全に無視はできないことです。

自分がどう見られるかを、まったく気にしないでいるのは難しい。友達からの返信を、無視し続けるわけにもいかない。ニュースや話題に、完全に無関心でいることもできない。SNSが人間関係や日常と地続きになっている以上、アテンションから逃げ切ることは、ほぼ不可能なのです。

調査のインタビューには、こんな声もあります。「(スマホを触り続けることが)自分に悪い影響があると思ってるのに、ずっと開いてしまう。そんな自分にイライラしてしまい、イライラすることに疲れる」。*1

同じ調査では、「SNSの利用時間を減らしたい」と答えた若者が67.6%にのぼりました。*1

「やめたい」ではなく、「減らしたい」。やめられないことはわかったうえで、それでも浴びる量は減らしたい。それが、いまの偽らざる実感のようです。

それでも浴び続ければ、疲れる

逃げ切れないまま浴び続ければ、当然疲れます。

調査結果

Z世代の62.2%が「スマホ疲れ」を実感。そのうち79.3%が、一番の要因はSNSだと回答(SHIBUYA109 lab.調べ、15〜24歳574名)。*1

SNSの利用頻度にかかわらず、6〜7割が情報の多さによる疲れを実感(NTTドコモ モバイル社会研究所調べ、15〜59歳のSNS利用者)。*3

そこで、いま起きているのが「休む」動きです。逃げ切れないなら、せめて途中に休憩を挟もう、というわけですね。

調査では、スマホから離れるために何かしら実行している若者は7割を超え、上位は散歩(20.2%)、読書(20.2%)、映画館に行く(16.4%)でした。*1

調査を行なったSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏は、陶芸や編み物のような「スマホを両手から手放さないとできない体験」が、その受け皿になると分析しています。*1

実際に、参加者のスマホを預かって焚き火を囲むイベントや、スマホなし旅行といったサービスも生まれ始めているのだそう。*2

この休み方に、名前がつき始めた

こうした休み方には、すでに「デジタル・デトックス」という名前があります。スマホやパソコンなどの機器から、意識的に離れることです。

そして最近は、さらに踏み込んだ言葉も提唱されています。冒頭の調査を行なったSHIBUYA109 lab.が、Z世代のトレンド予測として掲げた「アテンション・デトックス」。SNSで注目したり、されたりすることに疲れたとき、そこから一時的に退避してリフレッシュすることだそうです。*1

では、どこからが「アテンション・デトックス」なのでしょうか。分かれ目は、スマホを置く理由です。

目の疲れをとるために置くのも、通知に集中を寸断されたくなくて置くのも、アテンションから逃れたくて置くのも、行動としてはすべてデジタル・デトックス。そのうち、置く理由が「アテンションから逃れたい」であるとき、とくにアテンション・デトックスと呼ぶのです。

つまりアテンション・デトックスは、デジタル・デトックスの一部。行動ではなく、理由につけられた名前だと言えます。

デジタルデトックス

休み方にわざわざ名前がつき、細分化まで始まっている。それだけこの疲れが、多くの人に共有されているということでしょう。

ひとつ添えておくと、離れているあいだも、見られていることも、返信を待つ相手も、流れ続けるニュースも、なくなってはいません。だから戻れば、また疲れる。デトックスが「一時的」なのは、そういうわけなのです。

***

あなたが疲れているのは、スマホそのものにではなく、そこから届き続けるアテンションにです。そして、そこから完全に逃れる方法は、いまのところありません。

だからこそ、せめてブレイクを。スマホを手放さざるを得ない楽しみをひとつ、次の週末の予定に入れてみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. 「アテンション疲れ」とは何ですか?
SNSやスマホをきっかけに、注目すること・されること(アテンション)から生じる疲れのことです。SHIBUYA109 lab.の調査では、自分に対する・人に対する・情報に対するアテンションの3つに分類されています。
Q. 「スマホ疲れ」「SNS疲れ」とは違うのですか?
同じ現象を、原因に着目して捉え直した言い方です。調査では、スマホ疲れを感じる若者の79.3%が一番の要因はSNSだと答えており、その負担の中心にあるのが、注目のやり取りだと考えられています。
Q. なぜ完全には解消できないのですか?
SNSが人間関係や日常と地続きになっているためです。自分がどう見られるかを気にしないことも、返信を無視し続けることも、ニュースに完全に無関心でいることも難しく、アテンションから逃げ切ることはほぼできません。
Q. どう対処すればいいですか?
散歩、読書、映画館、陶芸や編み物など、スマホを手放さざるを得ない体験に時間を使う方法が、当事者のあいだで実践されています。スマホを預けて焚き火を囲むイベントや、スマホなし旅行のようなサービスも生まれています。
Q. 「アテンション・デトックス」とは何ですか?
SHIBUYA109 lab.がZ世代のトレンド予測として提唱した言葉で、アテンションに疲れたとき、そこから一時的に退避してリフレッシュすることを指します。行動はデジタル・デトックスと重なりますが、スマホを置く理由がアテンションであるとき、こう呼ばれます。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。