年末まで4ヶ月。「今年の目標」を間に合わせるための、専門家の "5つの手法"

開いた手帳とペン

朝晩の風が変わって、ようやく息がつけるようになってきました。

手帳やタスクリストを開くと、上半期に「あとでやろう」と置いたままの項目がいくつか目に入ります。気にはなっているものの、どこから手をつけるかが決まらないまま日が過ぎていく。そうしているうちに年末の繁忙期がやってきて、また来年に持ち越してしまう。

秋は、そうならずにすむ余白がまだ残っている時期です。とはいえ、意志の力で一気に挽回しようとする必要はありません。専門家が磨いてきたメソッドの力を借りれば、年末までの4か月でまだ十分に間に合います。

この記事では、仕事・人間関係・学び・環境の整え直しに効く5つのメソッドを厳選しました。詳しいやり方は各章末の解説記事に譲ります。まずは、いまの自分に必要な入口を見つけてください。

1. 振り返りは反省会にしない。『YWT』で「事実」から始める

上半期の振り返りは、つい「なぜできなかったのか」と自分を責める反省会になりがちです。それでは気が重くなるだけで、次の一歩にはつながりにくいもの。

そこで借りたいのが、日本能率協会コンサルティング(JMAC)が開発した振り返りフレームワーク『YWT』です。「やったこと(Y)」「わかったこと(W)」「次にやること(T)」の3つを書き出すだけで、事実→学び→次の行動へと思考が自然に進みます。

人材育成の分野では、経験を振り返って今後に活かせる学びを見いだすことを「リフレクション」と呼びます。*1

YWTは、そのリフレクションの入口をたった3つの質問に絞ってくれる道具です。反省ではなく「わかったこと」に目を向ける設計なので、自分を責めずに下半期の打ち手まで進めます。

やること

  • 「やったこと」「わかったこと」「次にやること」を3つずつ書き出す

2. 新しい環境で力みすぎたら。完璧主義の正体『べき思考』を手放す

異動したばかりで「早く仕事を覚えなければ」と焦ったり、昇進して「自分がチームを引っ張らなければ」と力が入りすぎたり。環境が変わった直後は、誰でも肩に力が入ります。

精神保健福祉士の川島達史氏は、頑張りすぎてしまう完璧主義の人には「〜すべきだ」「〜すべきではない」という「べき思考」が強いと指摘しています。環境が変わったときこそ、自分を縛っている「べき」を一度手放してみることが有効です。

ひとりで抱え込む必要もありません。厚生労働省の「こころの耳」でも、自分ひとりで対応しきれないストレスには、自分の力と周囲の人たちの力を合わせて解決の糸口を見出すことが重要だと説明されています。*2

やること

  • 自分を縛っている「〜すべき」をひとつ書き出し、本当に必要か見直す

話を聞く三人

3. 関係づくりは「話す」より「聞く」。『共感を生む質問術』を使う

新しいメンバーとの関係づくりに、特別な話術はいりません。ポイントは、「話す人」よりも「聞く人」になることです。

人材教育を手がける株式会社ジェイック取締役の近藤浩充氏は、人にとって一番の関心事は常に「自分自身」であり、興味のあるテーマを熱心に聴いてくれた相手には好感を覚えるものだと述べています。

相手の「経験」「価値観」「将来の展望」を尋ねる質問から始めると、自然と会話が広がり、信頼関係の土台ができていきます。

2016年にグーグルが公表した労働改革プロジェクトでも、成功するチームに最も大切な要件として、考えや感情を気兼ねなく表明できる「心理的安全性」が挙げられました。*3

まずは質問ひとつ。相手を理解しようとする小さな積み重ねが、その土台になります。

やること

  • 相手の「経験」「価値観」「将来の展望」のどれかを尋ねる質問をひとつする

4. 学びは「毎日1時間」より『2分・20秒・5秒ルール』で始める

資格取得やスキルアップは、忙しさに追われる前のいまが始めどきです。とはいえ、「毎日1時間勉強する」のような計画は長続きしにくいもの。

時間の確保が難しいのは、あなただけではありません。帝国データバンクの調査では、企業がリスキリングで抱える課題の1位は「対応する時間が確保できない」(42.1%)でした。*4

だからこそ、「始め方」は専門家の道具に頼りましょう。GTD提唱者のデビッド・アレン氏による「2分ルール」、ポジティブ心理学研究者のショーン・エイカー氏による「20秒ルール」、作家のメル・ロビンズ氏による「5秒ルール」。先延ばしのタイプ別にルールを選べば、意志の力に頼らずに学びを始められます。

やること

  • 3つのルールから相性のよさそうなものをひとつ選び、今日の学びに使う

チェックリストと付箋

5. 整理は『GTD』の考え方で。頭の中とデスクを空にする

最後は、仕事をする環境の整理です。情報が複数の部署や場所に散らばっていると、必要なものを探すたびに手間がかかります。

業務改革コンサルタントの相原秀哉氏は、こうした状態を整理するには、まず情報源を特定し、一元管理する仕組みを検討することが重要だと指摘しています。*5

同氏が示す試算では、探し物や資料の作り直しなどに週2回、1時間ずつ余分な時間がかかったとすると、業務生産性は約5%低下するとされています。*6

まとめて片づけるなら、生産性コンサルタントのデビッド・アレン氏が体系化したタスク管理術『GTD』の考え方が使えます。頭の中のタスクや溜まった資料をすべて書き出し、「いまやる」「あとでやる」「もうやらない」に振り分けるだけで、やるべきことに迷わない状態をつくれます。

やること

  • 夏の間に溜まったタスクや資料を書き出し、「いまやる」「あとでやる」「もうやらない」の3つに分ける

***

5つのメソッドを全部やる必要はありません。いまの自分に一番効きそうなものをひとつ選んで、気になった解説記事から読み始めてみてください。「気づいたら年末で、何もできていなかった」と後悔しないための仕込みは、それで充分に始まります。

よくある質問(FAQ)

Q. 秋のうちに仕事を整え直すのは、なぜ有効なのですか?
下半期のスタートや人事異動・昇進が重なる秋は、年末の繁忙期に入る前に仕事のペースを整えられる時期だからです。専門家のメソッドを借りれば、残り4か月でも十分に間に合います。
Q. 上半期の振り返りは、どう進めればよいですか?
JMACが開発した『YWT』がおすすめです。「やったこと」「わかったこと」「次にやること」の3つを書き出すだけで、反省会にせずに次の行動へつなげられます。
Q. 異動や昇進で力みすぎてしまうときは?
完璧主義の正体である「べき思考」を疑ってみましょう。自分を縛っている「〜すべき」を書き出して見直し、頼れる部分は周囲に頼ることが大切です。
Q. 新しい人間関係は、何から始めればよいですか?
相手の「経験」「価値観」「将来の展望」を尋ねる質問から始める方法があります。話すより聞くことを意識すると、無理なく信頼関係を築けます。
Q. 忙しくても学びを始めるコツは?
「2分ルール」「20秒ルール」「5秒ルール」など、始めるためのルールをひとつ選んで使うことです。大きな計画より、着手のハードルを下げる仕組みが効きます。
Q. タスクや情報の整理は、何から始めればいいですか?
頭の中のタスクや溜まった資料をすべて書き出し、「いまやる」「あとでやる」「もうやらない」の3つに分けることからです。GTDの考え方をもとにした整理法です。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。