なぜあなたの説明は伝わらないのか? 無意識のNG行為3選とその解決法

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プレゼンや上司への報告、仕事の引き継ぎなど、説明をする場面はたくさんあります。

しかし、頑張って説明をしているのに「わかりにくい」と言われたり、周囲の微妙な反応に気まずい思いをしたことはありませんか?

「説明が伝わっていないかも」「説明が苦手だ」と感じる人は、話がわかりにくくなるNG行為を無意識にしてしまっている可能性があります。

本記事では、説明がわかりにくい人が無意識にしている3つのNG行為と、その改善策をご紹介します。

あなたもNG行為をしてしまっていないか、確認してみてください。

NG行為1:情報を整理せずに話し始める

説明をしようと思うとつい話が長くなり、「結局、何が言いたいの?」と言われてしまう――。

このような人には、ある共通点があります。

コピーライターの中村圭氏によれば、それは「自分の説明の中身を把握できていない」こと。

中村氏は、ひとつの説明が「たくさんの説明の要素」から成り立っていると言います。

この要素を把握しないと「どの説明をつないでいけば相手の理解までたどり着けるのか」がわからず、うまく話せないというのです。*1

たとえば、自社商品を顧客に説明する場合、次のような要素が考えられます。

  • 商品の仕組みや機能
  • 導入や利用の方法
  • 実績(年数や事例)
  • 価格
  • どのようなニーズや課題に向けたものか
  • 他社製品との違い

これらすべてを伝えようとすると情報過多になり、聞き手が混乱します。かといって、要素が少なすぎれば説明不足となります。だからこそ、説明を構成する要素を整理して必要なものを抽出しなければならないのです。

中村氏が提案する改善策は「頭のなかのものを全部出して可視化する」という方法。

やり方は簡単で「説明に必要な要素を箇条書きで書き出していく」だけです。*1紙に書き出してもよいですし、パソコンで入力してもかまいません。思いつかない場合は、生成AIの力を借りるのも効果的です。

要素を書き出したあとに、相手にとって本当に必要な内容だけを選んで説明しましょう。この方法で説明を組み立てれば、無駄なく要点を伝えられるはずです。

説明後に「ちゃんと伝わったかな……?」と不安になる方は、ぜひ試してみてください。

デスクにチェックリストとペンが置いてある様子

NG行為2:「何の話か」を伝えないまま話し始める

頑張って説明しているのに、途中で「結論だけ教えてくれる?」と遮られた経験はありませんか?

長い話は聞いている側が疲れてしまいますし、ビジネスの場では素早く、わかりやすい情報伝達が求められます。

説明がわかりにくい人の多くは「何の話か」という全体の概要を伝えずに話し始めてしまうため、聞き手が戸惑いやすくなります。

コミュニケーション研究家の藤沢晃治氏は「説明の冒頭で概要を話すこと」の重要性を、次のように説明しています。

冒頭で概要を説明しなかった場合、聞き手はまずバラバラの点(詳細情報)が与えられ、後でそれが線につながって理解できた、という順序になります。

逆に言えば「点が線につながる瞬間」までは、各点に関して、聞き手の脳内には大きな疑問符が漂っていたことになります。*2

つまり、いきなり詳細から話し始めると、相手は全体像をつかみにくいうえ、説明の意図も伝わりにくいということです。

話の要点が見えないまま進んでしまうと、「わかりにくい説明だ」と感じさせてしまいます。

一方で、冒頭に概要を伝えることで「聞き手の脳内に脳内整理棚を準備させ」られると言う藤沢氏。

あらかじめ全体像を知ることで、聞き手は「個々の情報が『全体の中で、どういう位置付けにあるのか』」考えながら受け取れるようになるそうです。*2

具体例で考えてみましょう。

会議でDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性について説明するシーンを想定して、OK例とNG例を比較します。

✅【OK例】

今日は、「当社にとってDXがなぜ重要なのか」というテーマでお話しします。

まず、DXとは単なるIT化ではなく、デジタル技術を使ってビジネスモデルや業務の仕組みを抜本的に変える取り組みです。

市場環境が急速に変わるなか、これまでの業務フローでは対応が難しくなってきており、大企業だけでなく中小企業にもDXの必要性が高まっています。

これを踏まえて、具体的な例としてクラウド活用や顧客管理のデジタル化をご紹介します。

【NG例】

DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務のあり方を根本的に変える取り組みです。

たとえば、クラウドベースの顧客管理ツールを使えば、営業部門とカスタマーサポート間の情報共有がスムーズになります。

最近は大手企業だけでなく、中堅企業でもこうしたツールの導入が進んでおり、私たちもDXを進める必要があると考えます。

両方とも「DXとは何か」「その重要性」「具体例」という要素は同じですが、OK例では最初に話の目的や着地点を示しているため、聞き手が内容を整理しながら聞くことができます。

このほかにも「○○について相談させてください」「作業の注意点をX個伝えます」など、説明の前に伝えておくことで相手の聞く準備が整います。

また「この商品は、~~~なので御社におすすめです」のように、結論から伝えるという応用もできるでしょう。

商談するビジネスパーソン

NG行為3:順番を考えずに話す

説明の内容を整理するだけでなく、話す順番も重要です。

「あれも言わなきゃ、これも伝えなきゃ」と思いつくままに話してしまうと、まとまりがなくわかりにくい説明になってしまいます。

『一番伝わる説明の順番』の著者である田中耕比古氏は「相手の頭を混乱させる説明をしてしまう人は、伝える順番を間違っているケースが非常に多い」と指摘しています。

自分が考えたとおりの順番で話したり、自分の頭に浮かんだことをそのまま口にしたりしてしまう人が多くいます。(中略)思いつくままに話してしまい、相手に伝わらない残念な説明になっています。*3

例として、上司にクレーム対応について報告するシーンを考えてみましょう。

✅【OK例】

  • 時刻と相手:今朝10時に、A社の○○さんからお電話がありました。
  • 内容:請求書の金額が間違っているとのご指摘でした。
  • 原因:社内のデータ参照ミスにより、前月の数値を転記していたようです。
  • 対応:お電話での謝罪後、正しい請求書を送り、先方からも了承をいただきました。
  • 追加情報:以前も同様のミスがあったそうなので、調査を進めています。

【NG例】

今朝、A社のお客様から電話がありまして、かなり怒っていました。

内容を聞いたら請求金額が間違っていて、以前も同じようなミスがあったそうです。

メールを確認すると先月の請求金額が記載されていたので、正しい請求書を送って謝罪をしたら、先方も納得してくれました。

請求データの確認時にミスがあったようですが、以前のミスについてはまだ調査中です。

NG例の説明は話があちこちに飛び、全体像がつかみにくくなっています。

実際に体験した本人にはわかるかもしれませんが、報告を聞く上司は混乱してしまうでしょう。

田中氏は「自分が考えた順番や行動した順番は、説明を受ける相手からするとどうでもいい場合が多い」と話し、「『相手が聞きたい順番』で話す」ことを強調しています。*2

先ほどのNG例を「要素」と「順番」を意識しながら整理したのがOK例です。

この場合、聞き手が知りたいのはクレームの内容と対応、その結果です。

相手が求める順に説明することでわかりやすさが増し、聞いた側も次の判断や指示がしやすくなります。

「要素を書き出す」「概要を先に伝える」といった工夫に加えて、「相手が知りたい順番」を意識することも重要です。

ボスに笑顔で話すビジネスパーソン

***
説明の前に「何を、どの順で伝えるか」を整理することで、聞き手の理解度は格段に上がります。説明に苦手意識のある人はもちろん、プレゼンや商談といった重要な場面でも役立つスキルです。今日から実践して、説明する力を一歩レベルアップさせましょう。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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