なにか嫌なことがあったわけではないけれど、なんだか気分が上がらない。
上司の言葉を否定的に受け取ってしまったり、わずかなスケジュールの乱れにイライラしたり、ささいなことに気が立ってしまう。
気分を切り替えないと、仕事や人間関係に支障が出かねない……。
こんなふうに、明確な理由がないのに不機嫌になってしまうことは、ストレスの多い忙しい日々を過ごすビジネスパーソンなら誰もが経験しうるもの。
しかし、仕事に影響を出さないためにも、気持ちを切り替えられる手段をもっておくことが大切です。
そこで本記事では、なんだか不機嫌な日に「とりあえず」試してみるべきことを3つご紹介します。
どれも短時間で簡単にできるものなので、自分に合う対処法を見つけてください。
お試し1. 感情を受け入れる
そもそも、不機嫌なことは悪いことではありません。
ネガティブな感情を否定せず、受け入れることで気持ちが落ち着く場合もあります。
トロント大学感情科学・健康研究所所長のブレット・フォード氏は「感情をコントロールしようとしないことが役に立つ」とし、「感情的な経験をそのまま受け入れ、自然な流れに任せれば、感情はより早く終わる」と述べています。*1
つまり、自分の感情を否定しようとするよりも、いずれ消えるものとして「なんだか気分が上がらないな」と受け入れてしまったほうがいいのです。
とはいえ、「感情を受け入れる」というイメージがわかない人もいるでしょう。
フォード氏は、深呼吸をしながら感情を言語化する方法をすすめています。
「すぐにそれを消し去ろうとしたり、良いとか悪いとか判断したりしない」ことも重要だと言います。*1
イライラしている、これが気に入らない、やる気が出ないなど、自分の感情を言葉にしてみましょう。
「自分はいま、こんな気持ちなんだ」と認識し、受け止めることで次第に感情が落ち着いてくるはずです。
お試し2. 日記を書く
頭のなかで感情を認識するのも効果的ですが、可能であればそれを口に出したり紙に書いたりして言語化するとよりすっきりしそうです。
特におすすめなのが、日記を書いて発散するという方法。
臨床心理士の南舞氏は、日記には心理学用語でいう「カタルシス効果」があると述べ、次のように説明しています。
カタルシスとは、心理学においては浄化という意味合いで使われる言葉ですが、より分かりやすく言えば「発散」です。(中略)日記を書くことも発散方法のひとつ。内に留めていた言葉を外に出すことで心が開放されていきます。*2
なんだか不機嫌な日のイライラやモヤモヤを、紙に向かって発散するイメージです。
普段日記を書かない人は「面倒くさい」「続けられない」と思うかもしれませんが、構える必要はありません。
南氏は、文章の正しさや美しさは気にせず「単語や箇条書きでも」いいと述べています。頻度も「書きたい日にだけ書いてもいいし、週に3日などと決めてもOK」で、もちろん書きたくない日は休んでも大丈夫。
また、「『自分にとって使いやすいかどうか』が大切」なので、手書きでもアナログでも自分のいいと感じるほうで書きましょう。*2
わざわざ専用の日記帳を買わなくても、裏紙に書いて捨ててしまったり、スマートフォンのメモに打ち込んだりしてもいいのです。
じつは筆者も数年前から「書きたいときだけ書く日記」を実践しています。仕事の前後や集中力が切れたときに書くことが多いため、発散する先はパソコンのメモです。
文法や変換ミスなどはあまり気にせず、思いついたことを無心でタイピングしています。だいたい5分から10分で書くことがなくなり、気分がすっきりします。
あなたも自分に合った方法で、日記をつけてみてはいかがでしょうか。
お試し3. 音楽や香りに集中する
好きな音楽や香りを取り入れて、気分を切り替えるのもおすすめです。
それぞれのメリットや、具体的な取り入れ方をご紹介しましょう。
気分に応じた音楽を聴く
ウェルネスコーチとしてワークショップや書籍の執筆を行なっているエリザベス・スコット氏によると、「音楽を聴いてストレスを解消する」ことができると言います。音楽は「体内のストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げる」とされているためです。*3
さらにスコット氏は、「ストレスに対処するために音楽を使うメリットの一つは、スケジュールに簡単に組み込めること」だと主張しています。*3
音楽は移動中や作業中でも聴けますし、時間もかかりません。
また「クラシック音楽やインストゥルメンタル音楽は、心を落ち着かせ、集中力を高めるのに役立ち」、「明るいポップチューンを聴くと気分が上がる」など、選ぶ音楽によって違った効果が得られる点も魅力といえるでしょう。*3
たとえば、仕事に行くのが憂うつな朝は明るい曲、退勤後も気が立っていて落ち着かない夕方はクラシックを聴くなど、気分に合わせて選んでみてください。
腹式呼吸で好きな香りを嗅ぐ
このほか、香りも時間や場所を問わず取り入れやすいリフレッシュ方法です。
お気に入りのハンドクリームを塗ったりハンカチに香水を吹きかけたりすれば、仕事中でも好きな香りで気持ちをリセットできるでしょう。
より効果を高めるために意識したいのが、香りの嗅ぎ方。
公認心理士の松尾祥子氏は「香りで気分を変えるための第1の重要ポイントは、嗅ぎ方」だと主張しています。
具体的には、「香り腹式呼吸」を取り入れながら嗅ぐことをすすめています。
香り腹式呼吸のやり方
- 口から息を吐ききる
- 入れ替わりに鼻から空気が入るのを感じる
- 鼻から息を吐ききる
- 香りを鼻先に保つ
- 鼻から入る香りが喉を通り、お腹まで届くのを感じる
- 鼻呼吸を続ける
- 鼻から空気が出るとお腹がへこみ、鼻から空気が入るとお腹が膨らむのを感じる *4
ハンドクリームを塗った手や、香水を吹きかけたハンカチを鼻の前にもってきて、大きく鼻呼吸をするイメージです。
お腹を動かしながらゆったりとした呼吸をすることで、香りを感じながら心も穏やかになります。
松尾氏は、香りは果物やお菓子、コーヒーなど身近なものでも大丈夫だと言います。*4
お気に入りの香りがないときでも、近くにあるものの香りを活用して実践できるので「とりあえず」試しやすいのではないでしょうか。
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なんだか不機嫌な日も、とりあえず試せる方法があれば気持ちを立て直しやすくなるはずです。今回ご紹介した方法は仕事中でも取り入れやすいので、実践できそうなものを試してみてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 Psychology Today|Can Emotions Be Controlled?
*2 三菱電機|日記で心を整える
*3 verywell mind|How to Use Music for Stress Relief
*4 リクルートスタッフィング|香りで気分をととのえ、パフォーマンスをアップしよう
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。