「この人のもとで働きたい」と思われやすい上司の口癖4選。部下を成長させるのは "あの言葉”

パソコンを見ながら談笑している男女

会議で「はい、わかりました」と言うだけの部下。頼んだ仕事の進捗を聞いても「まだちょっと……」と歯切れの悪い返事。チーム全体の雰囲気もどこかよそよそしくて、このままでいいのか不安になる。

「部下指導って、こんなに難しいものなのか……」「自分にはリーダーシップが足りないのかも」「もっと経験のある人に任せたほうがいいんじゃないか」

新任管理職やチームリーダーになったばかりの人なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。専門スキルは自信があっても、人を動かし、チームをまとめるマネジメントは別のスキル。部下との関係構築に悩み、自分のリーダーシップスタイルに確信が持てない方も多いはずです。

じつは、優れたリーダーシップを発揮する「すごい上司」たちには、共通する特徴的な口癖があることをご存知でしょうか。

高い実績を挙げる経営者や人望の厚いリーダーたちは、部下との日常的なコミュニケーションのなかで、特定のフレーズを繰り返し使っているのです。あなたも今日から取り入れられる、具体的で効果的な部下指導の方法をご紹介します。

1.「進捗はどう?」とサポートする

マネジメント力に優れ、チームを成功に導く「すごい上司」たちは、部下が満足感をもって仕事に取り組めるようサポートする努力をいとわないようです。その姿勢は「進捗はどう?」という部下への頻繁な声かけに表れます。

仕事から得る満足度の重要性を説くのは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のテレサ・アマビール氏と、心理学者のスティーブン・クレイマー氏。彼らは、大小さまざまな企業に記録された日報を分析し、働き手の感情と企業の業績の関連性を発見しました。

なんと、働き手がどのような感情やモチベーションで仕事にあたっているかが、企業の業績を左右するほどの影響力をもっているというのです。アマビール氏らは、これを「インナーワークライフ(個人的職業体験)」と名づけました。

この発見は決して軽視できるものではありません。たとえば、実際に倒産した企業の日報を徹底的に研究したところ、業績不振の原因が、働き手のインナーワークライフを軽視していたためだとわかったとか。「働き手の気分」は単なる感情論ではなく、企業の存続に直結する重要な要素だということ。これまで多くの組織が見落としてきた、極めて重要な視点なのです。

すごい上司たちが「部下に繰り返し言っている」口癖02

インナーワークライフを高める方法について、アマビール氏らはこう述べています。

インナーワークライフに影響を与えるすべてのポジティブな出来事の中で、最も強力なのがやりがいのある仕事が進捗することである。

(引用元:テレサ・アマビール 著, スティーブン・クレイマー 著, 中竹竜二 監訳, 樋口武志 訳(2017),『マネジャーの最も大切な仕事』, 英治出版. ※太字は筆者が施した)

つまり、働き手のインナーワークライフを向上させる、一番効果的な方法は——

 
手がけている仕事が頓挫したり停滞したりせず、「少しでも前に進んでいる」と実感できること。

これは決して高い成果や完璧な結果を求めるものではありません。たとえば、大きなプロジェクトでも「今日は資料の30%が完成した」「クライアントからの返答が来た」「チームメンバーとの認識が揃った」といった小さな進歩でも十分なのです。重要なのは、停滞感ではなく前進感を部下に与えること。

すなわち上司のすべきことは、「進捗はどう?」と部下の仕事の進み具合を気にかけることだと言えます。

直接尋ねなくても、日報を毎日必ずチェックして、フィードバックを欠かさないことが大切。リソース不足や人間関係のトラブルを抱えているとわかったら、可能な限りのサポートを行ないます。進捗を阻む障害があると、部下は不信感をつのらせ、やる気をなくしてしまうからです。

このように、部下がやりがいを感じる仕事がスムーズに進むよう支援することが、上司の仕事なのです。

すごい上司たちが「部下に繰り返し言っている」口癖03

アマビール氏らの著書の監訳者であり、指導者育成を行なう中竹竜二氏は、以下のエピソードを紹介しています。

オムロン ヘルスケア株式会社の営業課長が、売り上げの伸び悩みをきっかけに、マネジメント法を見直した。営業スキルの指導を重視するスタイルから、「ワクワクできる小さな目標を立てるようサポートし、進捗具合を毎日一緒に振り返る」スタイルへ変えることに。その結果、以前よりはるかによい成果が出始めた。

成果が出るチームをつくるため、部下の仕事の進捗に日々着目し、彼らの満足感を高めるというアプローチをとってみてください。思いがけない変化が起こるかもしれませんよ。

2.「○○がうまくいっていたね」とほめる

人望が厚く、部下のやる気を引き出せる「すごい上司」は、部下を「ほめる」ことを欠かしません。

世界的大ベストセラー『人を動かす』の著者デール・カーネギー氏は、他者と関わるうえで最も大切なのは「自己重要感をもってもらうこと」だと言います。自己重要感とは、自分の存在には価値があり、重要であると思える感覚のこと。同書によれば、心理学者のウィリアム・ジェイムズ氏が、「自己重要感をもちたい」という気持ちは人間の抱く最も強い感情のひとつであると述べたそう。

そんな自己重要感を他者にもたせるためにすべきこととして、カーネギー氏が強調するのが「ほめる」こと。同書のなかでこんなエピソードが紹介されています。

ある労務管理者が、勤務態度の悪い用務員に困り果てていた。しかし、彼がまれによい仕事をしたときは人前でほめるようにしたところ、その用務員の勤務態度は、すっかり改善した。

では、どのようにほめるとよいのでしょう。

「デール・カーネギー トレーニング・ダイレクター」の石原由一朗氏によると、カーネギー氏はほめる対象のひとつとして「行動」を挙げているそう。つまり重要なのは、上のエピソードのように——

 
成し遂げたことやよかった振る舞いを見つけ、称賛すること。

部下の行動をよく観察して、「会議の発言、よかったよ」「報告書が読みやすかった」などよい行動を見つけ、ほめましょう。「上司は自分のことをちゃんと見てくれているんだ!」という感覚を部下にもたせることができますよ。

すごい上司たちが「部下に繰り返し言っている」口癖04

3. 叱るかわりに「次はどうしますか?」

失敗したとき、目標に到達できなかったとき、人を育てる「すごい上司」たちは部下を叱りません。叱るよりも「次はどうしますか?」と言うほうが、部下が育つと知っているのです。

臨床心理士の中島美鈴氏は、上司が部下を叱ることに効果はないと述べます。「『そんなやり方ではダメだ』と叱れば、次は行動が改善するはずだ」という考えは、正しくないというのです。なぜなら、部下の行動をただ否定するだけでは、「本来はどう行動すべきなのか」が伝わらないから。それどころか、部下は「叱られないようにしよう」という消極的な働き方をするようになる恐れもあるのだとか。

たとえば、プレゼンテーションで失敗した部下に対して「準備不足だ」「もっと練習すべきだった」と叱っても、具体的にどの部分をどう改善すればいいのかは伝わりません。むしろ部下は萎縮し、次回のプレゼンテーションでは無難な内容に留めてしまい、挑戦的な提案を避けるようになってしまうのです。

すごい上司たちが「部下に繰り返し言っている」口癖05

そこでぜひ、改善策や代替策を部下に尋ねるフレーズを使いましょう。研修トレーナーの伊庭正康氏によると、星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏は、部下によく「で、どうしますか?」と問いかけるそうです。

そんな星野氏の口癖にならって、部下が失敗したときは「では、次はどう改善しますか?」と尋ねてみるといい――そう伊庭氏は提案します。

このアプローチの優れている点は、問題の責任追及ではなく、解決策の創出に焦点を当てていることです。先ほどのプレゼンテーションの例なら、「次回はどんな準備をしますか?」「どの部分を重点的に練習しますか?」といった具合に、部下自身に改善プロセスを考えさせるのです。

なお、上司自らが「次はこうしてください」などと指示しないこともポイントだそう。その理由は、「自分で考えて決定した」という「自己決定感」にあります。人は、言われたことをただやるよりも、自分で考えて行動するほうがやる気を感じやすいのです。

つまり——

 
「改善策を考えるきっかけ」をつくってあげれば、部下の意欲は高まり、主体的に働いてくれるようになる。

部下が自ら考えた改善策は、上司から与えられた指示よりもはるかに強い実行力を持つのです。

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4.「ありがとう」の気持ちを伝える

部下からの人望を集める「すごい上司」たちは、当たり前のように部下へ感謝の気持ちを伝えています。なぜなら、メンバーがいてこそ、チームがあってこその会社だと知っているから。さらには、感謝の習慣こそが、組織を円滑に回すために必要不可欠だとわかっているからです。

このことを教えてくれるのは、株式会社セールスフォース・ジャパンのカスタマーサクセス統括本部長・宮田要氏。同氏によれば、「自分は会社にとって必要な存在だ」とメンバーに思わせることがリーダーの仕事。

その手法のひとつとして宮田氏は、独自のアワードを数多く用意し、メンバーの働きぶりに感謝しているそう。◯◯賞、××賞とさまざまな表彰を通じて、一見目立たないメンバーにも注目する場を設けていると言います。

すごい上司たちが「部下に繰り返し言っている」口癖07

心理学的にも、感謝の与えるポジティブな影響が明らかになっています。ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授のアダム・グラント氏と、ハーバード・ビジネス・スクール教授のフランチェスカ・ジーノ氏らにより、感謝されると「社会的にいいことをしたい、貢献したい」というモチベーションが高まことがわかりました。

 

 
部下への感謝の言葉を口にすることで、助け合い精神のあるポジティブな社風をつくることができる。

「いつもわかりやすい報告をありがとう」「業務改善を提案してくれてありがとう」――部下たちが自主的にかつ喜んで働ける場を用意できるよう、これからはチーム全体への感謝をいっそう心がけてみませんか?

***
他者を尊重することが、よきリーダーになるための鍵でした。口癖なら、比較的楽に変えていけるはず。ぜひ取り入れてみてくださいね。

(参考)

テレサ・アマビール 著, スティーブン・クレイマー 著, 中竹竜二 監訳, 樋口武志 訳(2017),『マネジャーの最も大切な仕事』, 英治出版.
D・カーネギー 著, 山口博 訳(1999),『人を動かす』, 創元社.
社会保険労務士PSRネットワーク|カーネギー流「人を動かす」効果的な褒め方
朝日新聞デジタル|部下を叱っても意味がない5つの理由
プレジデントオンライン|一流のリーダーは「で、どうしますか?」と聞く
Forbes JAPAN|メンバーを尊重し、感謝の気持ちを伝えることの大切さ。最高の先導者が語る、優れたリーダーの条件
Harvard Business Review|Be Grateful More Often
Grant, Adam M. and Francesca Gino (2010), "A little Thanks Goes a Long Way: Explaining Why Gratitude Expressions Motivate Prosocial Behavior," Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 98, No. 6, pp.946-955.

【ライタープロフィール】
平野ももこ

大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。

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