「勉強できる人」と「仕事ができる人」3つの共通点。デキる人は ”自分の意見に固執しない”

「応用」を書き出した様子

休日を返上して1か月必死に勉強し、念願の資格試験に合格。「これで評価が上がるはず」と期待して上司に報告したら、返ってきたのは「で、仕事の成果は?」という言葉……。

資格は取れる。でも、仕事では「もっと早く」「もっと成果を」と求められる日々。隣の席の同僚は、難関資格もサラッと合格するうえ、プロジェクトでも一目置かれている——「自分には何が足りないんだろう?」。

“勉強も仕事もできる”——それは遠い望みだと思っていませんか?

じつは、勉強も仕事もできる人は「能力が高い」だけではありません。彼らには、学びを実務に活かす特有の思考法や習慣があるのです。

今回の記事では、仕事と勉強を両立し成果を出す人に共通する3つの力について、具体的な実践方法とともにご紹介します。明日からの働き方・学び方が変わるヒントが、ここにあります。

「勉強も仕事もできる人」は、目的を明確にしている

「今年こそ資格を取る!」と意気込んで計画を立てたのに、気づけば三日坊主……。そんな経験はありませんか? 多くの人が計画倒れに終わる原因は、肝心の「目的」を明確にしていないからです。

勉強と仕事で成果を出す人は、計画を立てる際に「目的(Why)」→「目標(What)」→「ToDoリスト(How)」という階層構造を意識しています。この3つがつながっているからこそ、行動を持続できるのです。

臨床心理学者でブレインコーチのメラニー A. マクナリー博士は、計画を立てる際の「目的」「目標」「ToDoリスト」それぞれに異なる役割があると説明しています。

<目的を立てる>
やり遂げる力「グリット」を高め、目標達成の方向性を明確にする
<目標を立てる>
大きな目標(5年単位)は、夢や可能性について楽しい想像を膨らませる
年間目標を設定することで、大きな目標を段階的に落とし込み、現実化する
<ToDoリストをつくる>
年間目標を四半期ごと、月ごと、週ごとの目標に分解し、具体的にしていく
日々の進捗を確認することで、目的達成に着実に近づいている実感が得られる *1

目的はモチベーションを生み、目標は目的を現実化し、ToDoリストは達成感を与える——計画は、継続するための心の土台をつくってくれるのです。

また、Leadership IQ 創設者でリーダーシップ分野の著者・講演者である、マーク・マーフィー氏の研究によると、目標を詳細に文章化したりイメージしたりする人は、そうでない人と比べて目標達成の可能性が1.2〜1.4倍に増えるとのこと。紙に書き出すことで達成イメージがより強く定着し、目標達成への行動が持続するのです。*2

では、社会人の勉強計画に置き換えるとどうなるのでしょうか? 以下が具体例です。

<目的>

海外支店に移り、新規プロジェクトをリードして活躍したい

<目標>

英語の基礎として、TOEICで800点以上とる

<ToDoリスト>
出勤前の10分間で問題集5問解く
通勤電車のなかで単語とフレーズを流し聞く
帰宅後、朝解いた問題の復習をする

このように、目標とToDoリストだけでなく、その先にある「達成できたあとのイメージ」まで具体的に描くこと——これが、成果を出す人が行動を維持できる秘訣なのです。

目標達成のイメージ

「勉強も仕事もできる人」は、思考の柔らかさがある

「この勉強法で絶対に成果を出す!」——そう決めて半年間ノートにまとめ続けたのに、試験には落ち、仕事でも学びを活かせない。「もっと頑張れば結果が出るはず」と同じ方法を続けていませんか?

じつは、自分のやり方に固執することこそが、成果が出ない最大の原因かもしれません。

勉強も仕事もできる人の特徴として「思考の柔らかさ」が挙げられます。ひとつのやり方にこだわらず柔軟に変えることで、「間違い」を減らし、早く成果を出せるのです。

意見ややり方を貫く「強さ」よりも「考え直す」能力が重要だ——と主張するのは、『THINK AGAIN』(三笠書房)の著者で組織心理学者のアダム・グラント氏。同氏は著書のなかで「自分の考えを変える」ことを「知的柔軟性」と呼んでいます。*3

「知的柔軟性」とは、具体的には以下のような思考と行動を指します。

「このやり方で本当に成果が出ているか?」と定期的に自問する
成果が出ない場合、早い段階で別の方法に切り替える
周囲の意見や新しいやり方に目を向け、取り入れる

マネジメントなどリーダーシップが求められる立場では、意見を変えることを「考えがブレる弱さ」だと感じ、抵抗があるかもしれません。しかし、自分の信じたやり方がいつも正しいとは限りません。市場の状況は変化し、人材も多様化していきます。

そうしたなかで求められるのは、「メンバーの意見」や「新しいやり方」に目を向けること。周囲の情報をもとに考え直し、早い段階で計画を軌道修正できる「思考の柔らかさ」こそが、成果を出す人の特徴なのです。

『THINK AGAIN』を監修した一橋ビジネススクールPDS寄付講座競争戦略特任教授で経営学者の楠木建氏は、グラント氏の結論を以下のようにまとめています。

グラントさんの結論はこうです。「自分自身に対する充分な信頼を持ちながら、自分のやり方に対してははつねに自問する謙虚さを持て」。*4

つまり、「自分自身」を疑うのではなく、「いま信じているやり方」に対して「本当にこれがベストなのだろうか?」と自問する謙虚さが大切なのです。

このことは、社会人の勉強にも当てはまります。たとえば、本から得た学びを「ノートにまとめて復習する」方法を続けていたとしましょう。しかし、その方法では時間がかかったり、職場での実践に使えなかったり……学びが血肉になっている実感が得られない場合があります。そんなとき、学び方にはほかにも選択肢があることを思い出してください。

たとえば——

  • 本で得た気づきや感想を同僚や友人に説明する
  • 重要なところを自分の声で録音し、通勤時間に聞く
  • 「仕事で活用する場面」を想定し、学びを応用する例をメモにまとめる

「これでは効率が悪い」「成果につながらない」とつまずくたびに、やり方を見直す柔軟性を持つこと——これが、勉強と仕事の両方で早期に成果を出す人の特徴なのです。

男性が考えている様子

「勉強も仕事もできる人」は、アウトプットをする前に振り返りをする

「SNSで学びを発信している」「会議でどんどん意見を出している」——アウトプットは十分にしているはずなのに、なぜか成果につながらない。そんな悩みを抱えていませんか?

じつは、アウトプットだけでは成果は出ません。「アウトプットが大切だ」という言葉は多くの人が耳にしますが、勉強も仕事もできる人は、その前に必ず「振り返り」を挟んでいます。この振り返りこそが、インプット(経験)から質の高いアウトプット(実践)を生み出す鍵なのです。

「目標を達成できた/できない」の確認ももちろん大切ですが、質の高いアウトプット(実践)を目指すなら、「経験から学べること」を振り返る「コルブの経験学習」が最適です。

コルブの経験学習とは、アメリカの教育理論家で組織行動学者のデイヴィッド・A・コルブ氏が体系化した振り返り方法です。経験学習は以下の4つのステップで構成されます。*5

1
経験する
2
内省する
3
教訓を出す
4
教訓を応用する

振り返りでよく取り上げられる「PDCAサイクル」は、「Plan(計画)」から始まるため、振り返りの焦点は「目標達成」に当てられます。

一方、青山学院大学で組織論を研究している経営学教授の松尾睦氏によると、経験学習は「業務のプロセスの中で起きたさまざまなことが振り返りの対象」になるとのこと。つまり、目標とは異なる予想外の出来事もすべて含めて、総合的に振り返るのです。*5

「コルブの経験学習」は仕事にも勉強にも応用可能です。筆者は「仕事も勉強も捗らない」問題を抱えていたため、コルブの経験学習を通して両方の内省をしてみました。

ステップ1:「経験」をする

まずは「目標設定」をし、実際に体験します。松尾氏によれば、「頑張ればできそう」なレベルに設定することがポイント。受け身で取り組むのではなく「創意工夫する」余地のある課題が、成長を促すストレッチ体験になるのだそうです。*5

筆者が立てた目標設定はこちら。

「目標」について書き出した様子

仕事
・今日中に原稿2本を書き上げる
・英語の勉強に実践を取り入れ、内省までする

勉強
・積んでいた問題集の一章分を解く
・簡易的なテストをする
・米文学に関する本を30分読み進める

「原稿を完成段階にする」+「勉強を再開する」+「読書時間を長めにとる」——この3つを同時にクリアするのは、少々チャレンジングな目標です。

ステップ2:「内省」する

次は体験後の振り返りです。松尾氏によれば、感情を静めて「自分視点と相手視点で事実を整理してみる」ことがポイントなのだそう。つまり、俯瞰するわけですね。*5

筆者の場合、仕事は在宅です。相手視点がないため、「どういう状況だったのか?」に焦点をあて振り返ってみました。

「振り返り」を書き出した様子

一部抜き出してみると、このような具合です。

・読書に関しては未達成
英語の勉強に時間を取られた
勉強が終わったら疲れてしまい寝た

ステップ3:「教訓」「応用」を出す

内省をもとに「教訓」を考えます。松尾氏いわく、ここでは「汎用性が高い教訓を引き出すこと」が重要。まざまな状況に適応できる教訓を書き出すことで、次の行動につなげやすくなります。「教訓」と「応用」はセットで考えるのが好ましいそうです。*5

筆者はそれぞれの問題点から、枝状に教訓につながる要因を書いていきました。

「応用」を書き出した様子

・英語の勉強に時間かけすぎ
→勉強前に情報(ネット)、動画を多くインプットしてしまう
→夜の時間はあまり難しい作業には向いてないかも

そして、それらの要因からアクション(応用)につなげるには何が必要かを考え、教訓を導き出してみました。筆者は以下の2点が行動に落とせそうだと考えました。

応用を書き出した様子

教訓を引き出したら、それをもとに具体的な行動計画をつくります。

行動計画を書き出した様子

・週初めに一週間の仕事の流れ・スケジュール組む
・一週間の終わりに振り返る
リサーチ、執筆、実践、それぞれどれくらいかかったのか時間を把握する
・作業前の1分間はぼーっとする時間にする
・Chat GPTとSNSは利用する時間を決める
・頭の中の考えを一度紙に書き出しアウトプットする(特に勉強前)

経験学習を実践してみた効果

経験学習を実践することで得られた効果と、効果を高めるための工夫点をまとめます。

<効果>
教訓で分析して全体的な課題を俯瞰してみることができる
教訓からさまざまな改善行動が浮かびあがる
<工夫点>
数は少なくとも、教訓は汎用性の高いものにする
一回で汎用性の高い学びをえるため、頻繁に振り返らなくてもOK

***
「勉強はできて仕事ができない」「仕事はできるけど勉強はできない」——これらの悩みは一方の能力が劣っているからではありません。ただ、まだ共通点を知らなかっただけ。本記事を参考に「勉強と仕事」の両方を向上させてみてくださいね。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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