朝いちばん、いきなり仕事を始めていませんか? 脳の「3分間アイドリング」で、その日の思考は加速する

アイドリング状態の脳

朝、デスクに着くなり企画書を書き始めたものの、なかなか言葉が出てこない。書いては消し、考えては止まり、気づけば30分が過ぎている。エンジンがかかるまでが、どうにも長い。

この立ち上がりの遅さは、能力の差でも、やる気の問題でもありません。いきなり本番から始めるという、「脳の使い始め方」に原因があるのかもしれません。

本記事では、脳の働きを車のエンジンに例えながら、「アイドリング→加速→巡航」という流れで仕事を組み立てる方法を紹介します。脳をいきなりフル回転させるのではなく、少しずつ仕事モードへ切り替えるヒントを探っていきましょう。

なぜ「いきなり本番」は非効率なのか

車を走らせるとき、私たちは当たり前のように段階を踏んでいます。エンジンをかけ、ゆっくり発進し、流れに乗ってから速度を安定させる。この順序を飛ばそうとする人はいません。ところが仕事になると、多くの人がその「当たり前」を飛ばし、止まっていた脳にいきなり全力の走りを求めてしまうのです。

仕事でいう「全力の走り」とは、企画書の作成や課題解決、重要な意思決定といった作業のことです。これらはワーキングメモリや注意機能、実行機能など、複数の認知機能を同時に使う高負荷の作業。切り替わる前の脳でいきなり取り組めば、思考がまとまらなかったり、集中が続かなかったりするのも無理はありません。

脳を活性化させること自体には、実はそれほど大きな意味はありません。活性化した状態で適切な認知課題に取り組んでこそ、脳は鍛えられていきます(脳科学者・川島隆太氏による)。エンジンを空吹かししても車が進まないのと同じで、脳も「準備」と「本番」が組み合わさって初めて、本来の力を発揮しやすくなるのです。*1

つまり重要なのは、「最初から頑張ること」ではなく、「本番へ向けて脳を徐々に立ち上げること」なのです。

かけ始めのエンジン

【脳のエンジン理論】3つの状態で仕事を分解する

脳の働きを「アイドリング」「加速」「巡航」の3段階で考えると、仕事の組み立て方が見えてきます。

1アイドリング(準備)

負荷の軽い作業で、エンジンを始動させる

メールを整理する、前日のメモを確認する、ネット記事や新聞のコラムを100字程度で要約するなど、比較的負荷の軽い認知課題から始めます。

ここでは成果を求める必要はありません。目的は、脳のエンジンをゆっくり始動させることです。

2加速(高負荷)

その日いちばん重要な仕事にぶつける

頭が働き始めた感覚をつかめたら、その日の最も重要な仕事へ移ります。企画書の作成、資料の構成、戦略立案、分析など、「考える仕事」をこのタイミングに配置すれば、立ち上がったばかりの集中力をそのまま注ぎ込めます。

3巡航(処理)

上がった回転数のまま、定型業務を流す

高負荷の仕事を終えたら、メール返信や事務処理など、比較的定型的な業務へ移ります。加速フェーズで上がった回転数はすぐには落ちないので、複雑な判断を挟まないルーティンワークなら、その勢いのまま片づけられます。

このように、仕事を締め切り順や届いた順ではなく、「脳の状態」に合わせて並べ替えるだけでも、1日のパフォーマンスは変わってきます

3分でできる「脳のウォームアップ」実践法

脳のウォームアップといっても、特別なことをする必要はありません。たとえば、次のような3分程度で終わる作業で十分です。

脳のウォームアップ例

  • メールを整理する
  • 前日のメモを確認する
  • 新聞やニュース記事を100字程度で要約する
  • 前日に読んだ本の内容を思い出して整理する
  • 今日取り組む仕事を箇条書きにする
  • 短い文章を音読する
  • 簡単な暗算を数問解く

上に示したもの以外にも、本番に向けて「思考を少しずつ立ち上げるための助走」になりそうな作業があれば、ぜひ取り入れてみてください。

脳のウォームアップを実践してみた所感

筆者も実際に、大事な仕事の前に「新聞やニュース記事を100字程度で要約する」というウォームアップを試してみました。すると、要約で思考のノイズが削ぎ落とされたのか、本番の仕事でも「最も重要な部分」に素早く手をつけられたのです。脳が温まっただけでなく、要約という作業の性質そのものが、本番を後押ししてくれたのだと思います。

ウォームアップで取り入れる作業は、本番タスクとの関係性を考慮したうえで選ぶと、筆者のように一石二鳥な状況が起こるかもしれません。

ウォームアップは認知課題だけじゃない

ウォームアップになるのは、認知課題だけではありません。短時間のウォーキングや階段の上り下りといった、軽い有酸素運動も有効です。脳のコンディションが低い状態のときほど、軽い運動が認知機能によい効果をもたらすことが研究でも示されています。*2

「今日はなんだか頭がスッキリしないなぁ」という朝は、机に向かう前に少し体を動かしてみるほうが、近道かもしれません。

オフィスで伸びをする男性

ウォームアップの「やりすぎ」に注意

ただし、準備そのものに没頭して時間と脳のエネルギーを消耗してしまっては、本末転倒です。なかなか脳がシャキッとしないからと、ウォームアップをダラダラと続けるのはおすすめしません。

アイドリングは「最長10分、成果は求めない」と割り切って実践しましょう。必要に応じて、タイマーをセットしておくのもいいかもしれません。

脳を疲れさせずに、余力を残した状態で「加速」フェーズへ移行するのが、全体の生産性を最大化するコツです。

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車のエンジンが十分に温まってから本来の性能を発揮するように、脳もまた、少しずつ仕事モードへ切り替えてから高負荷の仕事に向かうほうが、本来の力を発揮しやすくなります

明日の朝は、デスクに着いた瞬間に企画書を開くのではなく、まず3分だけでも脳をウォームアップしてみてください。その小さな助走が、きっと1日の思考の質を変える第一歩になりますよ。

よくある質問(FAQ)

Q. 脳のウォームアップは何分くらい行えばいいですか?
目安は最長10分程度です。成果を求めず、脳を仕事モードへゆっくり切り替えることを目的にしましょう。ダラダラと長引かせると、かえって時間と脳のエネルギーを消耗してしまいます。
Q. どんな作業がウォームアップに向いていますか?
メールの整理、前日のメモの確認、短い記事やコラムの要約、今日取り組む仕事の箇条書き、簡単な暗算などが挙げられます。負荷が軽く、成果を求めない認知課題が向いています。
Q. 運動もウォームアップとして効果がありますか?
はい。短時間のウォーキングや階段の上り下りなど、軽い有酸素運動も有効です。脳のコンディションが低いときほど、軽い運動が認知機能によい影響を与えることが研究で示されています。
Q. ウォームアップをやりすぎるとどうなりますか?
準備作業そのものに没頭してしまうと、本来使うべき時間と脳のエネルギーを消耗し、本末転倒になります。「最長10分、成果は求めない」と割り切り、タイマーなどで区切るのがおすすめです。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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