箇条書きとは、情報を文章としてまとめず、ひとつひとつの項目として列挙する書き方。少ない文字数で要点のみを簡潔に抜き出すため、相手に情報を伝えやすくなります。
箇条書きなんて簡単だと思うかもしれませんが、ただ段落を1文ずつ改行して行頭記号をつければOK、というわけではありません。必要な情報を適切にピックアップし、見やすくまとめる必要があります。
今回は、箇条書きとは何か、箇条書きを活用するコツをお教えしましょう。
箇条書きとは
最初に、箇条書きとは何か、どのような特長があるのかを確認しましょう。大辞林第三版によると、箇条書きとは「事柄をいくつかに分けて書き並べる」書き方のこと。以下のように、言葉を簡潔に列挙するのが箇条書きです。
- ニンジン
- 玉ねぎ
- 豚肉
箇条書きの特徴は、「情報量が絞られている」こと。箇条書きだと、不要な情報がそぎ落とされ、短く簡潔に記述されているため、情報の要所がつかみやすくなります。もしも、上の箇条書きを以下のような文にしてみるとどうでしょう?
ニンジンと、玉ねぎと、豚肉を買おう。
「と」「を」などの要素が増えるぶん、煩雑になってしまいますね。
箇条書きの特徴としては、「要素ごとに改行されている」点も挙げられるでしょう。改行によって、要素と要素が明確に区切られるので、情報の可読性が高まるのです。以下の2つを比べてみてください。
ニンジン・玉ねぎ・豚肉
- ニンジン
- 玉ねぎ
- 豚肉
後者のほうが見やすいと思いませんか?
このように、箇条書きとは「情報量が絞られている」「各要素ごとに改行する」という2つの特長をもつ記述法なのです。
箇条書きとは、情報をわかりやすく伝える手段である
箇条書きとは、情報をわかりやすく伝えられる手段であることがわかりましたね。前章で見たように、箇条書きを使うと、重要な情報を簡潔に提示できます。
たとえば、
徳川家康は、徳川幕府初代将軍。幼名は竹千代。関ヶ原の戦いで石田三成を破り、征夷大将軍となる。大坂冬・夏の陣で豊臣氏を滅ぼし、天下を統一した。
(※美術人名辞典をもとに記述)
という文章は、箇条書きを用いると、以下のように整理できます。
徳川家康は……
- 徳川幕府初代将軍
- 幼名は竹千代
- 関ヶ原の戦いで石田三成に勝利
- 大坂冬・夏の陣で豊臣氏を滅ぼし、天下統一
箇条書きのほうが、すっきりとして見やすいですよね。要素ごとに改行して縦に並べたことに加え、不必要な単語や助詞をなるべく削ったのです。
「情報を伝えやすい」というメリットをもつ箇条書きは、以下のようなシーンで役に立ちます。
箇条書きの活用例1:会議の資料
会議などで使う資料を作成するとき、積極的に箇条書きを使ってみませんか? 特に重要な情報や数値を箇条書きにして目立たせれば、資料の可読性が向上しますよ。たとえば、
消費者1,000人へのアンケート調査の結果、48%が「香り」、33%が「パッケージのデザイン」、17%が「ブランドイメージ」を基準に柔軟剤を選んでいることがわかった。
という文は、箇条書きを使って以下のように改善できるでしょう。
消費者1,000人へのアンケート調査の結果、消費者が柔軟剤を選ぶ基準は、
- 香り(48%)
- パッケージのデザイン(33%)
- ブランドイメージ(17%)
であることがわかった。
箇条書きにしたほうが、見せたい情報(アンケート結果)が目立つため、一目で情報を把握しやすいですね。内容が同じでも、箇条書きにするかしないかで、これほどまでに読みやすさが変わるのです。
箇条書きの活用例2:メール
箇条書きにすれば、メールの読みやすさも変わります。特にビジネスシーンだと、アポイントの時間や場所をメールでやり取りすることが多いのではないでしょうか。打ち合わせの時間・場所を勘違いしたら大変なことになるため、読み間違いが起こりにくいよう、箇条書きにしてみましょう。例として、
○○に関する打合せの件なのですが、4月30日(木)15:00~16:00、弊社オフィスにてよろしくお願いいたします。
という文は、以下のように直すことができます。
○○に関する打合せの件ですが、
- 4月30日(木)
- 15:00~16:00
- 弊社オフィス
にてよろしくお願いいたします。
箇条書きにすることで、「日付」「時間」「場所」が明確に区切られるため、かなり読みやすくなりましたね。
箇条書きの活用例3:プレゼンのスライド
箇条書きを使えば、プレゼンテーションのスライドも読みやすくなりますよ。スライドの場合、会議の資料やメールと違い、表現の選択肢が増えます。箇条書きを使うだけでなく、以下のような工夫を施すことで、大事な情報をさらに強調させられるのです。
- 「・」「◆」など行頭記号の色を変える
- 箇条書きする項目を枠で囲う
このように、箇条書きとは、さまざまなシーンで役に立つ手法なのです。
箇条書きで情報を伝えるコツ
箇条書きとは、情報を簡潔に伝えられる手段。コツを意識すれば、さらに見やすくなりますよ。経営コンサルタントの小林尚氏は、以下の3つのコツを紹介しています。
同じ情報はまとめる
箇条書きの際、同じ情報はなるべくひとつにまとめます。中学校の数学で習った “因数分解” を思い出すとわかりやすいでしょう。
「y=ax+bx」という式は、xという共通の要素をまとめて、「y=(a+b)x」と変形できます。箇条書きでも同様に、重複する要素をまとめ、情報量を少しでも減らしましょう。
消費者は柔軟剤を、
- 香りで選ぶ(48%)
- パッケージのデザインで選ぶ(33%)
- ブランドイメージで選ぶ(17%)
上の箇条書きだと、「で選ぶ」という言葉が重複していますね。重複を解消し、極限まで無駄を省いた例が以下です。
消費者は柔軟剤を選ぶ基準は、
- 香り(48%)
- パッケージのデザイン(33%)
- ブランドイメージ(17%)
後者のほうが、箇条書き部分の文字数が少ないため、より読みやすくなっています。
「時系列」か「並列」かを明確にする
箇条書きには、情報を簡潔に示せるメリットがある一方、「各情報間の関係性がわかりづらい」というデメリットがあります。各要素が時系列(決まった順番)で並んでいるのか、並列なのかがわかりにくいのです。たとえば、
今月中に終わらせるべき課題は、
- 市場調査
- 予算の検討
- 企画案作成
という箇条書きだと、各タスクが「上から順番にやる」(時系列)べきものなのか、「どの順番で取りかかってもよい」(並列)ものなのかわかりません。そんなときは、以下のように工夫すれば、各情報の関係がわかりやすくなります。
【時系列の場合】
今月中に終わらせるべき課題は、
- 市場調査
- 予算の検討
- 企画案作成
【並列の場合】
今月中に終わらせるべき課題は、
┗市場調査
┗予算の検討
┗企画案作成
階層構造を意識する
箇条書きの際は、「階層構造」を意識することも大切です。箇条書きにした各要素の「階層」が同等ではない場合があるからです。以下の例をご覧ください。
- 日本
- 東京
- 大阪
- 韓国
- ソウル
- 中国
日本や韓国といった「国名」と、東京やソウルといった「都市名」が同列に並んでしまっているので、情報が整理されていない印象ですね。
階層構造を明確にするのに役立つのが「インデント」です。インデントとは、行頭に空白を挿入すること。空白の大きさによって、各要素の階層を表現できます。
上の箇条書きをインデントしたものが、以下の例です。
- 日本
- 東京
- 大阪
- 韓国
- ソウル
- 中国
国名である「日本」「韓国」「中国」と、都市名である「東京」「大阪」「ソウル」。それぞれの階層が、インデントによって表現されています。
以上のように、箇条書きとは便利な表現形式ですが、ちょっとした工夫が必要でもあるのです。
箇条書きとは、脳内を整理する手段である
箇条書きとは、他人に情報を伝達するだけでなく、自分の頭のなかを整理するにも便利な手法です。「悩み」「本を読んだ感想」「やるべきタスク」など、脳内で散らかっている思考や情報を、箇条書きにして取り出しましょう。
箇条書きの活用法1:ブレインダンプ
まずは、仕事術に関する著書を多くもつブロガー・堀正岳氏が紹介する「ブレインダンプ(Brain Dump)」という方法。ブレインダンプとは、「頭のなかのものを、ドサッと落とす」というような意味です。
ブレインダンプは、「頭のなかにあるものを、紙に箇条書きしていくだけ」という、とてもシンプルな思考整理術。堀氏によると、ブレインダンプの際は、「書き出す思考の大小を区別しない」ことが重要なのだそう。「シャンプーを買わなきゃいけない」というささいな用事も、「10年先のキャリアプランを立てたい」のように大きなテーマも、以下のように区別せず列挙するのです。
- シャンプーを買わなきゃいけない
- 10年先のキャリアプランを立てたい
- 本がたまってきたので、読書の時間をつくりたい
- 貯蓄を増やしたい
- スーツをクリーニングに出したい
前章で「箇条書きの階層構造を明確にすべき」と述べましたが、ブレインダンプには当てはまりません。ブレインダンプの目的は、とにかく「思考を洗い出す」ですから、思ったことを手当たり次第にアウトプットしていきましょう。ブレインダンプに慣れると、一度に100項目近くも書き出せるのだそうです。
堀氏によると、頭にたまっていた考えが箇条書きとして可視化されることで、やるべきことが見えやすくなるばかりか、気分がスッキリするのだそう。「思考がまとまらずモヤモヤする」「何から手をつけていいのかわからない」と悩んでいるなら、ブレインダンプをやってみることで、状況が好転するかもしれませんよ。
箇条書きの活用法2:読書ノート
箇条書きは、読書の記録をつけるのにも活用できます。箇条書きには「整った文章でなくていい」「書くべき項目が明確になりやすい」というメリットがあるため、読書記録を格段につけやすくなるのです。
堀氏は、本の各章について、以下の3点を箇条書きにする方法を推奨しています。
- 要約:印象も交えつつ、内容を簡単に要約する
- 印象的な箇所:特に印象的だった文章やセリフを挙げる
- 感想:その「印象的な箇所」に惹かれた理由を挙げる
例として、村上春樹氏の小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の第1章「エレベーター、無音、肥満」に適用してみます。
- 要約:「僕」が奇妙なエレベーターに乗っている。エレベーターが止まると、ドアの前に立っていた「美しく太った女」に案内され、728号室に入る。
- 印象的な箇所:主人公が暇つぶしにやる「左右のポケットの小銭を同時に数える」というゲーム。
- 感想:「左脳と右脳を使い分ける」という記述が、本作の「2つの世界を並行して語る」構造とリンクしている。
このように、「要約」「印象的な箇所」「感想」という3点に絞って箇条書きをすることで、本の感想をスッキリとまとめられるのです。もちろん、小説以外の本にも使えますから、読書記録をつけるのに苦戦している方は、ぜひ実践してみてください。
箇条書きの活用法3:バレットジャーナル
タスクを箇条書きにして管理する「バレットジャーナル」という方法があります。bulletは箇条書きの先頭につける「・」印を、journalは「日誌」を意味する英単語。「箇条書き形式の日誌」というのが、バレットジャーナルのコンセプトなのです。
バレットジャーナルでは、一日の予定やタスクを、ノートに箇条書きして管理します。以下のような具合です。
6月20日(土)
- 光熱費支払い
- 読みかけの本を読了する
- 参考書を買いに行く
- 薬局へ行く
ここまでは普通のToDoリストと一緒ですが、バレットジャーナルでは、書き出した予定・タスクに、以下のルールで印をつけていきます。
- 終わったタスク:×
- できなかった(先延ばしにした)タスク:>
- 予定を変更したタスク:<
- やる必要がなくなったタスク:線で消す
このルールを、先ほどのリストに適用してみましょう。
6月20日(土)
×光熱費支払い
>『道をひらく』を読了する
<参考書を買いに行く
・薬局へ行く
どのタスクがどんな状態になのか、ひとめでわかりますね。先延ばしにしたタスクは、翌日の予定に引き継がれるため、「先延ばしにしたまま忘れてしまう」というリスクを減らせます。バレットジャーナルのやり方を詳しく知りたい方は、「最強の手帳『バレットジャーナル』を作ってみたら先延ばし癖が治った。」をご覧ください。
「ブレインダンプ」「読書ノート」「バレットジャーナル」。箇条書きとは、思考整理術にも応用できる、便利なテクニックなのです。
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箇条書きとは、メモをとるときだけでなく、さまざまな目的で活用できる情報整理術なのですね。箇条書きを上手に取り入れ、仕事や勉強を効率化していきましょう。
(参考)
コトバンク|箇条書き
コトバンク|徳川家康
日経クロステック ラーニング|箇条書きを使うべき理由
小林尚(2019),『開成流ロジカル勉強法』, クロスメディア・パブリッシング.
東洋経済オンライン|思考力が強い人が「箇条書きメモ」を駆使する訳
村上春樹(1985),『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』, 新潮社.
和気文具|はじめようバレットジャーナル
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。