「30代で評価が下がってしまう人」が20代のうちに避けるべき"4つの罠"

「あいつ、20代の頃は期待していたんだけどな」——上司がある中堅社員のことを、そう語ることがあります。

20代の頃はよく勉強し、会議でも発言が多く、知識も豊富で、フレームワークもよく口にしていた。「これは伸びる」と思った。なのに30代に入ってから、重要な仕事を任せられない。判断を求めても、本やネット記事の受け売りが返ってくる。

一方、当時は地味だった別の社員が、いま頼りになっている。

同じ同期のあいだに、30代のある時点から評価が反転する。組織が30代の社員に問うているのは、ひとつのことです。

 

「お前の判断に賭けられる領域はどこなんだ?」

この問いに答えられるかどうかが30代以降の評価を分け、その答えの有無は20代の過ごし方で決まっています。

本記事では編集部のこれまでの取材を踏まえて、30代で評価が下がる人が、20代で陥っていた4つの罠を整理します。

20代の評価軸が、30代で通用しなくなる理由

20代と30代では、組織が社員を評価する軸が違います。

20代に求められるのは、与えられたタスクをこなし、必要な知識を覚え、会議で発言できること。「タスク遂行能力」と「知識量」が評価軸です。

ところが30代ともなると、評価軸は徐々に変わります。成果に直結することを任せる必要がでてくるのです。それがポジションが上がる=「出世」ということです。タスクをこなすことでも、能力を示すことでもなく、成果に向き合う人材としての信頼感、安心感が評価の大部分を占めるようになります。

そして、こうした信頼感は、横に広く浅く集めた知識からは生まれません。20代で「いま役に立ちそうな知識」を集めてきた人ほど、30代で問われる「成果への向き合い方」には到達できないのです。

世間で「正解」とされていることが、実は罠になる

本記事でこれから挙げる4つの行動は、すべて世間的には「優秀な若手の正しい振る舞い」とされているものです。ビジネス書を読む、スキルを磨く、人脈を広げる、自分のブランドを作る。どれもポジティブに語られ、20代では実際に「あいつ、頑張ってるな」と評価される。本人も努力している実感がある。

ところが、目的を取り違えると、その努力の方向そのものが成果から遠ざかる方向に作用します。世間的な正解を一生懸命やればやるほど、30代で問われる「成果への向き合い方」からズレていく。これが罠です。

では、4つの行動を見ていきます。

20代の罠1:目の前の仕事と切り離された「読書」

「ビジネス書を読もう」と20代に向けて、いたるところで語られています。手当たり次第に読み、フレームワークを覚える。読書量だけ見れば、同期の誰よりも多いかもしれません。

ただ、読書の起点が「目の前の課題」ではなく「世間で話題だから」「読んでおくべきだから」になっていると、知識は通り過ぎていきます。

電通でビジネスプロデュースの第一線を17年走り、3つの大学院で博士号・修士号を取得した国分峰樹氏の言葉が、この構造を端的に表現しています。*1

「すぐ役に立つ」ことは、「すぐ役に立たなくなる」のです。

「好きではないけれど、役に立ちそうだから」となにかを学ぼうとしても、そんな動機では根気強く学ぶことはできませんし、そうして得られたものは専門性と呼べるまでには至らないものにしかならないでしょう。
――国分峰樹氏(電通 トランスフォーメーション・プロデュース部長)

そうやって読んだ本は血肉化しにくく、30代になって「お前の判断は?」と問われたとき、出てくるのはどこかで聞いたような話ばかりになります。

 

✕ 20代の罠

目の前の課題と切り離された、話題のビジネス書の読書

○ 代わりにやること

自分の仕事やその進め方について直接・間接の知識を深めるための読書

20代の罠2:目の前の業務と関係ない「スキル収集」

「ポータブルスキル」——業界や職種を超えてどこでも使える能力——を20代のうちに身につけよう、という言説は根強くあります。英語、プログラミング、ロジカルシンキング。20代では「英語もできるしExcelも詳しい」と評価されます。

ただ、これらのスキルには共通する特徴があります。どこでも「ちょっと」使えるけれど、どこでも「圧倒的に」役立つわけではない。30代で「お前の判断に賭けられる領域はどこか」と問われたとき、「英語ができる」「ロジカルに考えられる」と答えても、「それは他の人もできる」で終わります。

マーケティングコンサルタントとして自社を経営する宮脇啓輔氏の指摘も、同じ構造を別の角度から照らしています。*2

仕事において周囲と差がつくポイントは、じつはそれほど多くありません。多くの人が同じように取り組める領域では、どれだけ努力しても大きな差は生まれにくいからです。差がつくのは、多くの人が避ける領域に踏み込めるかどうかにあります。
――宮脇啓輔氏(株式会社unname代表取締役)

ポータブルスキルは、定義上「多くの人が取り組める領域」です。だから磨いても差がつきにくい。目の前の事業や顧客と切り離して集めるだけだと、横に広がって核を作らない構造になります。

 

✕ 20代の罠

目の前の事業や顧客と切り離された、「いつかどこかで使えそうなスキル」の収集

○ 代わりにやること

任された仕事の精度を上げるための、必要に駆動されたスキル取得

20代の罠3:目的化した「人脈作り」

「人脈は財産だ」と20代に向けてよく言われます。異業種交流会、コミュニティ、サロン、SNS。将来のための投資のつもりで足を運ぶ人は少なくありません。

ただ、世間で使う「人脈」の定義そのものに、検討の余地があります。多くの場合、人脈は「誰を知っているか」あるいは「誰が手を貸してくれそうか」として語られる。けれど、本当に機能する人脈は、それとは違うものです。

 

✕ 20代の罠

「誰を知っているか」を増やすための、目的化した交流会・勉強会への参加

○ 代わりにやること

目の前の相手の期待に応える結果を出すことの積み重ねによる、信頼の蓄積

本当の人脈とは、「どれだけの人に頼られるか」です。そう思われるには、目の前の仕事に責任感を持って取り組み、相手の期待に応えようとする姿勢を積み重ねるしかない。接触量ではなく、期待に応えた回数が、関係を信頼に変えます。

「この人は損得だけで動かない」「面倒なこともやり切る」「任せても安心だ」という評価が積み重なっていきます。その結果として、より重要な仕事やチャンスがまわってくるようになるのです。
――宮脇啓輔氏

「人脈作り」を目的化すると、30代になって本当に頼りたい場面で頼れる人がいない、ということになりがちです。期待に応えた経験が、お互いにないからです。

20代の罠4:中身より先行する「自己ブランディング」

「これからは個人の時代」「自分の市場価値を発信しよう」とSNS時代に入って言われるようになりました。SNSで発信し、プロフィール欄に「○○の専門家」と肩書きを掲げる。20代では「主体的」と評価されます。

ただ、ブランドというものは本来、「実体に対する評価が積み重なって、外形に結晶化したもの」です。実体があって、初めてブランドが意味を持ちます。

順番が逆になると、外形と実体のあいだにギャップが生まれます。プロフィール欄に「マーケティングの専門家」と書いてあっても、目の前の事業のマーケティングで成果が出ていない。20代まではそのギャップは気づかれませんが、30代になると周囲に透けて見えるようになります。

 

✕ 20代の罠

中身が伴わないままの、肩書きや発信を整えるための「自己ブランディング」

○ 代わりにやること

まずは実績をつくることに集中。盛ってもプロには見透かされる。

20代で気づけるなら、それで十分

4つの罠は、ひとつの根から派生しています。目の前の仕事に対して、責任を引き受けていない、ということです。責任を引き受けていないから、本もスキルも人脈もブランディングも、目の前の仕事を離れて「集める対象」になる。

仕事の価値は、世間的な「正解」ではなく、目の前の事業・顧客・課題に対して成果を出すこと。それ自体にしかありません。そして成果は、責任を引き受けた者のところにだけ生まれます。30代になって組織が問うのも、突き詰めればひとつ。

 

「お前の判断に賭けられる領域はどこなんだ?」

20代でこの構造に気づくのは、簡単ではありません。経験が浅いうちは、業績に直結する仕事はそもそも任されないからです。任されないから「成果を出す」体験そのものをしておらず、「成果に価値がある」という事実が肌感覚でわからない。

だからネットや本で「正解らしきもの」を探してしまう。本人のやる気や能力の問題というより、経験の浅さゆえに構造的に陥りやすい状況に置かれているからです。

でも、いま気づけるなら、それで十分。

「役に立ちそう」「評価されそう」を脇に置いて、目の前の仕事に対して責任を引き受け、最後までやり切ろうとしてみる。うまくいかなければ、もがいてみる。その向き合い方を始めた瞬間から、4つの罠は自然と消えていきます。読書もスキルも人脈も自己発信も、すべてが「目の前の仕事で成果を出す」というひとつの中心から派生していく。そしてそれこそが、30代以降に「お前の判断に賭けられる領域」を生んでいく道なのです。

よくある質問(FAQ)

Q. 20代でいろいろなスキルを身につけるのは、本当に無駄なのでしょうか?

無駄ではありません。問題は「目的」です。目の前の事業や顧客のために必要だから学ぶスキルは、特定の領域での深さを支える資産になります。一方で、「いつかどこかで使えそう」というだけの理由で集めたスキルは、横に広がるだけで核を作りません。同じ「英語を学ぶ」でも、目的が違えば、5年後の意味は決定的に変わります。

Q. 30代ですが、自分はもう手遅れでしょうか?

遅くはありません。ただし、20代と同じやり方を続けていては変わりません。「いまの自分の業務で、誰よりも深く理解できる領域はどこか」を見直し、そこに時間とエネルギーを集中させることから始められます。30代でも、ある領域に深く向き合えば、数年で実体は変わります。

Q. 「目の前の仕事」が単調で、深く向き合う意味を感じられない場合は?

その場合、まず「単調に見える」のは本当か、を疑ってみる価値があります。どんな業務でも、深く掘れば必ず固有の論点・難しさ・関係者の機微が現れます。「単調だ」と感じるうちは、まだ表面しか見えていない可能性が高いです。それでも本当にその仕事に意味を見いだせないなら、深く向き合える業務に移ることを考えるべきです。逃げ続けるためのスキル収集ではなく、向き合える場所への移動として。

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社代表取締役/スタディーハッカー(現(株)イングリッシュカンパニー) 創業者。
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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