
「もっと自分らしく働きたいのに、今のキャリアに迷いや息苦しさを感じている」
そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。
SNSでは輝くキャリアを歩む同世代の姿が目に入り、ビジネス書や自己啓発本では「やりたいことを仕事に」「自分軸を持て」というメッセージがあふれています。
その結果、
- 「自分には軸がない」
- 「何を目指すべきかわからない」
と焦りや不安が募ってしまうケースも多いのです。
この記事では、キャリア迷子になりやすい背景を心理学や社会学の視点から解明し、「自分らしいキャリアを見つけるための3つの具体的ステップ」をご紹介します。
一歩ずつ実践すれば、キャリア形成に必要な自信や行動力を取り戻せるはずです。
自分だけの「自分探し」では無理
キャリアの軸を見失う人の多くは、「自分らしさ」を自分の内面だけで探そうとします。
自分というものを、もっと深く理解しなければ……
しかし、発達心理学者のエリク・H・エリクソンが提唱したアイデンティティは、自分の内面だけでなく、社会や人との関わりのなかで形成されるものです。*1
公認心理師の川島達史氏も、アイデンティティを確立するうえで社会に貢献し、社会の一員として役割を果たすことが大事だと伝えています。*2
つまり、自分の内面だけで「自分らしさを見つけなきゃ」という考えには、そもそも無理があるのです。

比較ばかりで「自分」は見つからない
とはいえ、過度に自分以外の誰かを意識しすぎるのは危険です。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏は、SNSで他者の投稿と自分を比較して、劣等感や無力感を覚えてしまう青少年の傾向を指摘 *3。これと似たようなことが、大人にも起こっていることは周知の事実でしょう。
SNSを覗けば、自分と同世代の成功体験や華やかなライフスタイルが次々と流れてくる――
それが「つくり物かもしれない」「よく見える部分だけの切り取りかもしれない」とわかっていても、視覚情報の強い影響でムダに自己評価を下げたり、自分が取り残されていると錯覚したりしてしまうのです。*3

では、いったいどうしたらいいのでしょう?
その答えは、外部からの視点を取り入れ、自分の過去を振り返ることにあります。このあと3つの方法をご紹介しましょう。
方法1:「評価される経験」を積み重ねる
自分らしいキャリアを見つけるための第一歩は、自分の得意分野や強み・苦手分野や弱みを、他者の視点を通じて再発見することです。
たとえば明日からでも、企画や資料提出の際に「改善点を教えてください」とひとこと添えてみてください。
自らフィードバックを求め続けることで、自己認知力が高まり、自分を正しく知ることができます。自己認知力の高さは、仕事の成果につながることが報告されています。*4
でも――もしも「前のめりで聞きにくい」「ストレートなフィードバックが怖い」というのなら、たとえば提出時に、
- この資料は〇〇〇を参考にしました
- この資料では〇〇〇を特に掘り下げました
といった具合に、その資料の補足のような書き方・伝え方をして、何らかのフィードバックを得られるように仕向けてもいいのではないでしょうか。
そうして「評価される経験」を積み重ねることで、自分が知らなかった自分に気づけるようになるはずです。*4
自分らしいキャリアがグッと絞られてくるでしょう。

方法2:「比較要素」がない情報を増やす
キャリア迷子の背景には、SNSやメディアによる「他人の成功の洪水」があります。そこでムダに焦り、自分らしくないキャリアの選択をしてしまうリスクは十分にありえるでしょう。
とはいえ、簡単にSNS断ちできるなら、とっくにそうしていますよね。
そこで提案したいのは「SNS断ち」ではなく「SNSの質改善」。戦略的に、比較要素がない情報を増やしてしまうのです。
SNSアルゴリズムは「この人が反応するコンテンツ」を学習します。まずはさっそく以下をお試しください。
比較要素がないアカウントのフォロー戦略
例)
- 知識・学習系コンテンツ(豆知識、歴史、科学、語学など)
- クリエイティブ・芸術系(アート、音楽、手工芸、料理レシピなど)
- プロセス重視のコンテンツ(作業風景、制作過程など)
- 自然や風景系のアカウント(山、海、空、動物など)
エンゲージメント作戦
- 上記投稿に「いいね」「保存」「シェア」を多用
- コメントも積極的に(「勉強になりました」等)
ハッシュタグ活用
例)「#豆知識」「#歴史好き」「#英語学習」などをフォロー・検索
比較系を徹底スルー
- 「誰かの成功報告」「リア充投稿」は見ても反応しない
- 「興味なし」「表示回数を減らす」機能を使う
もちろん、まったく興味がない方向で質を改善しても意味がないので、あくまでもご自身の興味が届く範囲で調整してみてください。これにより、他者との比較で自分軸がブレる確率はだいぶ下がるはずです。

方法3:「過去の成功体験」を深掘り
新しいキャリアを考えるとき、すぐに目を向けるのは「やりたいこと探し」や新しい挑戦です。しかし、大切なことを忘れてはいないでしょうか?
自分らしいキャリアの土台は、過去の成功体験や困難を乗り越えた経験のなかに隠れているということです。
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会代表理事の工藤紀子氏はこのように述べます。
過去の成功体験や、逆境や挫折を乗り越えた経験は信念と自己効力感を強化する。それが「新たな取り組みや挑戦への推進力」となり、なおかつ「未来の目標設定をする際の具体的なモデル」となる。*5
ですから、たとえば以下のようなエピソードを思い出し――
- 大学受験や資格取得で努力を重ねた経験
- 何度も挫折しそうになりながらもやり遂げたプロジェクト
- 上司や同僚に頼られたときの自分
書き出すなどしてみると、キャリア選択時に「何を優先すべきか」「どの環境で力を発揮できるか」が見えやすくなるはずです。
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キャリアに迷うと、つい「自分探し」にこだわり、内面だけを掘り下げようとしてしまいます。あるいは他者の輝かしい人生の「切り取り部分」を覗いて、自分軸が薄れてしまうこともあるでしょう。
だからこそ、建設的に外部の視点を取り入れ、過去の価値ある体験を振り返ることで、自分らしいキャリアのヒントが見つかります。
- 「評価される経験」を積み重ねる
- 「比較要素」がない情報を増やす
- 「過去の成功体験」を深掘り
この3ステップを実践し、ぜひキャリア形成の軸を少しずつ明確にしてください。
*1: 小沢一仁(2020),「自己理解のためにエリクソンのアイデンティティ概念を捉え直す――主観的視点から斉一性と連続性に焦点を当てて――」,日本青年心理学会,青年心理学研究,31巻,2号,pp.91-108.
*2: ダイレクトコミュニケーション|アイデンティティを確立する方法‐公認心理師監修,ダイコミュ相談室
*3: NHKラジオ らじる★らじる|みんなでファクトチェック 「私って、周りと比べて劣ってる…?」 青少年とSNS
*4: PHP人材開発|フィードバックを進んで受ける部下は、なぜ成長するのか?
*5: PHP研究所|自信がない人は過去に目を向ける? 自己効力感が高まる意外な方法
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。