
社内の面談や転職時の面接で、「中長期のキャリアプランを教えてください」という質問が増えてきました。
「まずはキャリアをしっかり考えたい」という人もいれば、「今後の経験とともに、キャリアを臨機応変に考えていきたい」という人もいるでしょう。もしかしたら、「そんなことはわからない」という人もいるかもしれません。
今回は「中長期のキャリアプランの描き方」を紹介します。10年後の「どうありたい」という理想の状態をイメージし、そこから逆算(バックキャスト)することで、いまやるべきことを考えていきましょう。
【ライタープロフィール】
松尾洋希(まつお・ひろき)
(株)ベネッセコーポレーション入社後、進研ゼミ高校講座のマーケティング経験を経て、(株)ベネッセi-キャリアにて大学の教育改革・大学生のキャリア教育支援に従事。大学生向けキャリア教育のプログラム開発責任者を担当。現在は(株)ベネッセコーポレーションにて社会人向けキャリアコーチングサービス「CAREER STAGE」のサービス開発を手がける。
- 中長期のキャリアを描く。「10年後の自分」を想像できる?
- 「職種にこだわりはない」もOK。北極星が見えていればよし!
- 「中長期キャリアプラン」の描き方、簡単4STEP!
- 「中長期キャリアプラン」からのアクション
中長期のキャリアを描く。「10年後の自分」を想像できる?
キャリアプラン(キャリアビジョンを実現するための行動計画)を考えるうえで「中長期のキャリア」を描くことはとても大切です。一般的に「中期」は3~5年、「長期」は10年程度を指すことが多いですから、中長期キャリアとは「3年から10年程度の期間のキャリア」というイメージです。
とはいえ、変化の激しい現在のビジネス環境のなかで、10年以上先を見据えることは容易ではありません。「10年後にどんな仕事をしているか、想像がつかない……」という人も多いでしょう。
そのため職業だけでなく人生全体にまで視野を広げて、中長期を考えることが大切です。ワークキャリア(職業的キャリア)とライフキャリア(人生全体)は密接に関連しているので、このふたつを同時に考えることができれば、日々の行動や意思決定がしやすくなります。
そして、キャリアプランをつくるには、まず、キャリアビジョン(理想の状態・ありたい姿)をイメージしましょう。なぜなら、キャリアプランをつくる目的にもなるからです。また、企業の事業環境変化に伴い、終身雇用が崩壊してきたなか、会社にキャリアを任せきりにするリスクが大きくなってきています。
自分のキャリアを主体的に考え、キャリアの自律を図っておくことで、変化に対応しやすくなります。また、転職や異動、副業など仕事に変化をくわえる際にも、自身のキャリアの目的地がはっきりしていれば、判断の基準がすぐにわかり、面接でもしっかりアピールすることができるでしょう。

「職種にこだわりはない」もOK。北極星が見えていればよし!
勘違いされやすいのですが、「どこの会社のどんな部署で、どんな役割でいたいか」だけがキャリアビジョンではありません。「職種こだわりはないけれど、若者から◯◯についての相談を受けて支援していく仕事がやりたい」といった抽象度でも、それも十分なキャリアビジョンと言えます。
また、「周囲から頼られたい、必要とされることをやりたい。でも職種には特にこだわりはない」というのでもOK。それがSEなのか、営業なのか、コンサルタントなのかは問題ではありません。ほかにも「職種や部署はどこでもよいけれど、こんな仲間と、こういう存在として、日々こういう気持ちで仕事に向き合っていたい」というのもキャリアビジョンなのです。
キャリアビジョンは、北極星のような存在です。北極星がはっきりと見えていれば、最初のキャリアプランが思い通りに進まなかったとしても、試行錯誤を重ねつつ、さまざまな手段でその北極星に近づく努力ができます。逆に、ビジョンが曖昧なまま進んでしまった場合、そのプランがダメになったとき、心が折れて、前に進むことを諦めてしまうかもしれません。
くわえて、キャリアビジョンがはっきりしていれば、「いま、なにを学ぶべきか」も明確になり、積極的に自分をアップデートできます。キャリアビジョンから逆算(バックキャスト)して、スキルアップすることが可能になるからです。「いつまでになにを行なうか」というアクションプランも立てやすくなりますよ。

「中長期キャリアプラン」の描き方、簡単4STEP!
そうは言っても、キャリアビジョンはまだ見えないし、キャリアプランも描けない……という人も多いでしょう。
今回は、キャリアプランの描き方 “基本中の基本” の4STEPを紹介します。
【STEP1】過去から現在までを自己分析する
過去から現在までを振り返り、自己分析をしていきます。「いままでやりがいを感じたこと」「モチベーションが高まること」や、「なにが得意」で「どんなことが強み」なのかを分析し、書き出していきましょう。
→自分の意見を通すより、相手の困っていることを聞き出すほうが得意。
→「ありがとう」と言われることでモチベーションが上がる!
※自己分析のやり方については、こちらの記事も参考にしてください。
『仕事に活きる「強み」を見つけるノート術。短所を長所に変換したら “意外な強み” が見つかった』
『10年後、あなたはどんな仕事をしていますか? 「自分に合った仕事」が見つかる分析シート』
【STEP2】未来について「どうありたいか」を考える
未来について「どうありたいか」を考えていきます。「残りの人生をどう過ごしたいか、ありたいか」「人生を俯瞰したとき、どのようなライフプランでありたいか」「仕事ではどうありたいか」「プライベートではどうありたいか」「お金はこれくらいもっていたい」など、「どんな〇〇でありたいか」を書き出しましょう。
仕事においては、数値目標ではなく、「誰に向けてどのような価値を発揮していきたいか」といった「ありたい姿」を挙げていきます。こんな人になってみたいというロールモデルをイメージするとよいでしょう。複数人のいいとこどりでもOK。「これはできない」「あれも現実的には無理」などと考えないことが一番のポイントです。
【STEP3】「未来の自分」になるために必要なことを考える
【STEP2】で書き出した「未来の自分」と「いまの自分」のギャップを明らかにしていきます。「いまの自分」が「未来の自分」になるには、どんなスキル、経験、人間的な成長が必要になってきますか? 必要なことをどんどん書き出しましょう。
→海外勤務希望であることを人事に伝え続ける。
→まずは海外出張に行く。
→海外研修に参加する。
→ビジネスレベルでの英語でコミュニケーションがとれるようにする。
→語学力を上げるために英語を勉強する。
【STEP4】時間軸に沿って考えてみる
【STEP2】で描いた「未来の自分」と、【STEP3】で挙げた必要なスキル、経験、人間的な成長について、実際の時間軸に沿って考えてみましょう。
2年目→上司や先輩と一緒に海外出張に行く。現場立ち合い経験を積む。日本での営業に活かす。英語のレベルを上げる。
3年目→海外出張の機会を増やす。国内だけでなく、海外の案件にも積極的に手を挙げる。海外でも通用する「交渉力」と「営業力」を意識して磨く。
4年目→海外研修生として数か月から1年、現地に滞在する。短期間で覚えられることをすべて覚えるつもりで過ごす。
5年目→海外出張の機会を増やす。できることは増えているはず!
6年目→海外赴任。現地で経験を積む。
「中長期キャリアプラン」からのアクション
まず、動いてみましょう! 【STEP3】で挙げた必要なスキル、経験、人間的な成長を得るための行動を、なにかしらスタートさせるのです。キャリアプランを描いたことで、満足してしまい、そこで終わってしまうと、結局なにも進まないままになってしまいます。
もちろん、行動を起こしたとたんに、壁にぶち当たってしまうこともあるでしょう。しかし、動かなければ、うまくいかないことすらもわからなかったのですから、アクションとして収穫につながっています。ほかにも、「ネットで情報収集する」「人に聞く」もしくは「人に話してみる」というのも有効です。フィードバックや感想をもらうことができます。
そして、動きながら、キャリアプランをブラッシュアップしていきましょう。しばらく行動してみたら、価値観が変わった、最初に描いたキャリアビジョンが変わったということも往々にしてあります。それは、キャリアプランを立てたときより、あなたが成長したからです。ですから、最初の目標やプランにとらわれすぎず、前進していくこと、行動することを重視しましょう。
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ご存じかもしれませんが、「Planned Happenstance Theory」という理論があります。この理論は、偶然の出来事を積極的に活用し、キャリア形成に生かすという考え方です。
これからみなさんは、キャリアビジョンという目的地を定め、そこに向けて試行錯誤を重ねていくことでしょう。その過程では、「積極的に行動すること」「自分の意志をしっかりと表明すること」を意識してみてください。
そうすることで、偶然を引き寄せたり、様々なチャンスを掴みやすくなったりするかもしれません。人生という旅を楽しむ気持ちで進んでいきましょう!
