「1日3時間も情報収集に時間をとられているが、本当に必要な情報が見つからない……」
「会議の準備や企画立案のリサーチに、いつも膨大な時間がかかってしまう……」
仕事の効率を上げるために情報収集は欠かせません。しかし、情報過多の時代だからこそ、効率的な情報収集と取捨選択が重要になっています。
実は、GoogleやChatGPTを使いこなし、何時間も情報収集に費やしている人よりも、短時間で必要な情報をキャッチしている人がいます。彼らの多くは、特別な情報収集術をもっているわけではありません。
むしろ驚くべきことに、このような"情報収集上手"な人々の多くは、情報収集のコツを意識していないと言います。では、なぜ彼らは効率的に必要な情報を手に入れられるのでしょうか?
その秘密は、脳科学で実証された「注目バイアス(カラーバス効果)」という現象を、自然に活用していることにあります。脳科学者の西剛志氏によると「得たいものを明確にした瞬間に『注目バイアス』の機能が働き、得たいものに関連する情報がどんどん入ってくる」のだといいます。
本記事では、仕事の生産性を劇的に高める情報収集術として、この「注目バイアス」のメカニズムと活用法をご紹介します。毎日の仕事を効率化したい人は、ぜひ試してみてください。
1. 注目バイアス(カラーバス効果)とは? 仕事の効率を劇的に上げる脳科学の知見
情報を効率的に使いこなすことが、ビジネスでは必要不可欠です。読者のみなさんは、以下のような悩みを感じたことはありませんか?
- 自分に必要な情報を厳選してインプットしたい
- 固定観念に縛られず、アイデアを考えられるようになりたい
- 職場での人間関係をよりよくしたい
これらは一見、それぞれ異なる悩みに見えますが、必要な情報を手に入れることができれば、解決できるという点で共通しています。
「そうはいっても、簡単に必要な情報が手に入るとは限らない。探すのにも膨大な時間と労力が必要だから、自分には難しい」
このように考える方もいるかもしれません。しかし、「注目バイアス(カラーバス効果)」を使えば、自分に必要な情報を簡単に引き寄せられるようになるのです。
では、「注目バイアス(カラーバス効果)」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
脳科学者の西剛志氏によると、注目バイアスとは「一度気にしはじめると、急にその対象を頻繁に目にするようになるという認知バイアス」のこと。*1
これは、私たちの脳がもつ"情報フィルター機能"の一つです。
たとえば、「青い服を着た人を見つけよう」と思って歩いてみると、ほかの色の服を着ている人より、青い服を着ている人が目立って見えるようになる、という現象のことを指します。
「今日は青い服を着ている人が多いな」と感じたとしても、それはおそらく気のせい。実際は、青い服を着た人に注目することによって、脳がその情報を優先的にキャッチするようになるのです。
注目バイアスを意識して使うことができれば、情報収集の効率が上がり、仕事をスムーズに進めることが可能になります。
具体的には、
- 必要な情報収集にかかる時間の大幅な削減
- 新しいアイデアの発見力向上
- 職場での人間関係の改善
- 業務の生産性向上
次項では、この「注目バイアス」を仕事で実践的に活用する方法を、具体例を交えて紹介していきます。
2. 注目バイアスで仕事の効率を上げる3つの方法
必要な情報を得る
「成功につながる有益な情報を効率的に得たい」――このように考えている人にとって、注目バイアスはまさにうってつけの手法です。
脳科学者の西氏は注目バイアスについて、以下のように述べています。
「成功した人はよく『成功したいなら、まず得たいものを明確にすること』と言いますが、脳科学的にこれは真実です。なぜなら、得たいものを明確にした瞬間に『注目バイアス』の機能が働き、得たいものに関連する情報がどんどん入ってくるからです」*1
つまり、成功している人たちは、特別な情報収集テクニックを使っているわけではないということ。自分が何を得たいのかを明確にしているから、必要な情報を自然とキャッチできているのです。
では、具体的にどう実践すればよいのでしょうか。
例えば、「社内ベンチャーを立ち上げたい」など、自分にとっての成功を具体的に思い描いてみましょう。すると、以下のような形で必要な情報が目に入るようになります:
- 社内ベンチャー支援制度に関するイントラネットの記事
- 偶然参加した会食での、新規事業立ち上げの話
- ビジネスSNSでの社内ベンチャー経験者との出会い
- オンライン上の起業家育成プログラムの情報
このように、目標を明確にすることで、注目バイアスが自然と働き、必要な情報が集まってくるのです。
アイデアを出す
「アイデアを考えるとき、ありきたりな発想になってしまう。もっと違う発想ができるようになりたい」という悩みも、注目バイアス(カラーバス効果)で解決することができます。
株式会社博報堂が運営するソーシャルラーニングプラットフォーム「UNIVERSITY of CREATIVITY」のプロデューサーを務める加藤昌治氏は「アイデアを考えることに慣れていない場合、既存の要素を探す範囲が狭くなってしまうことが多い」と語ります。*2
私たちの脳は、注目バイアスによって特定の情報を優先的にキャッチします。そこで加藤氏は、注目バイアスを活用した新しい要素の探し方を提案しています。この方法を使うことで、カラーバス効果により、普段は気づかない要素が自然と目に入ってくるようになります。
1. 考えたい企画に関する3つのキーワードを決める。
たとえば、リモートワーク用の快適家具の販売アイデアを考える場合、以下の3つのキーワードが考えられます。
- 「快適さ」や「リモートワーク」に関連する言葉(例: 休息、集中、姿勢)
- リラックス感を連想する色(例: 落ち着いたベージュやグレー)
- 家具の機能性を示す動き(例: 折りたたむ、スライドする)
2. このキーワードに注目しながら街を歩く
- 注目バイアスの特性を活かし、「言葉」「色」「動き」など、具体的なキーワードに絞って探すことで、いつもは意識にのぼらない情報が自然と目に入ってくるようになります。
ポイントは、あくまでこの段階では要素を探すだけなので、どんなにくだらないことでもジャッジせずに受け入れること。「もうすぐ企画会議だけれど、なにも浮かばない!」というときに、注目バイアスを活用してみてください。
人間関係をよくする
人間関係をよくすることは、仕事を円滑に進めるうえで非常に重要です。しかし、人間には相性があり、どうしても好きになれない人や、関わり方がわからない人が誰にでもひとりやふたりはいるのではないでしょうか。
その場合、注目バイアス(カラーバス効果)の負の側面を使ってしまっていないかチェックしてみると、改善できるかもしれません。以下の例で見てみましょう。
自分のチームにいる年上の部下が苦手な場合
「この人といると気疲れする、苦手だ」と感じる場合、あなたは年齢に注目しすぎているのかもしれません。
「年齢が上だからか、新しいことには対応できていないようだ」「年下の自分の指示だから、全然覚えようとしないのだろう」このように、注目バイアスが働いて年齢を通してその人を見てしまい、苦手意識が生まれているのかもしれません。実際は、まだ仕事を始めたばかりで慣れていないだけかもしれないのに、すべてが年齢のせいに見えてしまうわけです。これが注目バイアスの負の側面です。
改善策は、「○○さんが自分と同年代だったら、どのように指導するだろうか」と考えるように心がけ、評価をするときも具体的なタスクの進捗や成果など、客観的な指標を使うことです。チームの一員として公平に見るように努めれば、無駄な気負いがなくなり、コミュニケーションをとりやすくなります。
性格が苦手な上司がいる場合
上司と性格が合わず苦手意識があるなら、注目バイアスを活用することで改善できるかもしれません。
たとえば、
- 上司:細部まで丁寧に仕上げることを好むタイプ
- 自分:ざっくりした部分があってもスピード感をもって物事を進めたいタイプ
であるとします。この違いがあるために、上司から厳しいフィードバックを受けることが多く、「あの人はどんなことにも難癖をつける」とネガティブに感じるとします。その場合「難癖をつける嫌な上司」という負の注目バイアスにはまっていないか、チェックしましょう。
そして「細部まで見ることで、上司が仕事にもたらしているメリットを探す」というように注目バイアス(カラーバス効果)を設定し直し、会社で過ごすようにしてみましょう。上司が成果を出せる案件の傾向や、フィードバックのきめ細やかさなど、いままで気づかなかったメリットが急に見えるようになります。
上司の仕事スタイルや価値観を知ることで、自分自身が学べるだけでなく、上司への対応方法もわかり、円滑にコミュニケーションがとれるようになるでしょう。また、上司の得意な業務スタイルがわかれば、それ以外の案件や業務内容をあえて選んで成果を出すことで、上司に自分の得意分野をアピールすることもできます。
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注目バイアス(カラーバス効果)は、私たちの脳がもつ不思議な特性です。これまで見てきたように、意識的に活用することで仕事の効率を大きく向上させることができます。
- 情報収集の時間を大幅に削減
- アイデア創出の効率を高める
- 人間関係の改善で業務効率アップ
など、ビジネスの様々な場面で効果を発揮します。
※引用の太字は編集部が施した
*1 プレジデントオンライン|なぜか急にチャンスに恵まれ始める…古今東西、成功者が漏れなく活用している「注目バイアス」の驚きのしくみ
*2 新R25 Media|強制的に注意の方向をずらせ。アイデアのハードルを下げる「カラーバス」の実践方法
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。