『6歳の子供に説明できなければ、理解したとは言えない。』アルベルト・アインシュタイン
現代物理学の父とも呼ばれるアインシュタインは、非常に多くの名言を残したことで有名だが、その中のひとつ。
物理学の広い範囲で様々な功績をあげたアインシュタインだが、偉大な発見の数々も、彼なら6才児に説明できるのだろうか。
人間の脳は6才の時点でほとんど完成していた!?
一般的な成人男性の脳の重量は「1350~1400g」であると言われている。(参考 Rauber-Kopsch解剖学 )
一方6才の子供の脳重量の平均は「1200~1250g」で、成人の約90%になる。そう、人間の脳は、6才の時点でほぼ完成しているのだ。 もちろん、六歳のこどもの知識は大人には及ばない。 でもそれは、決して機能的に大幅に劣っているから、というわけではないらしい。
一般に、幼稚園や保育園での教育を「就学前教育」と呼ぶ。
これは6才までに「集団で行動する」「具体的イメージを持って行動する」といった、いわば「学びの準備」をするために行うんだとか。
逆に言えば、6才までにこうした「学びの準備」を終えていれば、簡単な計算や漢字も身につけることができるということ。知識が頭に入っていないだけで、学習能力は十分にあるといえるのだ。
あなたは足し算や引き算の概念を、6才のこどもに教えられるだろうか。「理解する」というのは案外ハードルの高いことなのかも。
「わかる」と「教えられる」のギャップとは
東京大学薬学系研究科の教授である池谷氏は、自身の著書の中で「脳は出力依存型だ」と語る。
日常生活の中で脳には多種多様で雑多な情報が、大量に入ってくる。その情報を取捨選択し、記憶として定着させなければならない。その基準となるのが「どのくらいアウトプットを行ったか」ということなんだとか。
記憶というのは、脳の中の神経回路が新しく組まれることでおこる。例えばあなたが「平安京は794年にできた」と暗記するとしよう。最初はそんな回路、脳にはない。だから思い出すことができない。
でも、何回もアウトプットを繰り返し、書いたり喋ったりすることで、神経回路ができてくる。さらに繰り返すことで、その神経の接続は強いものになる。
これが記憶のメカニズム。 つまり、しっかり理解できているなら、アウトプット(人に話したり、説明したり)も簡単にできる。説明できないなら、まだ知識は曖昧、脳の回路もしっかり接続されていないということになる。
他人に説明できて初めて、理解できたといえるのかも。
予備知識が全くないこどもに、自分の知識と能力だけで説明できるか……。それほどに知識はしっかりと定着しているか……。
アインシュタインが問いかけたかったのは、そんなことかもしれない。
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こんな逸話がある。
ある日アインシュタインが街中で小さな男の子に、「相対性理論って何なの、教えてよ!」と質問された。アインシュタインはにっこりと微笑み、こう答えたという。
「もし君が、きれいな女の子と一時間並んで坐っていたとすれば、その一時間は一分のように思えるでしょう。しかし、もし彼が熱いストーブのそばに一分間坐っていたら、その一分間は一時間のように感じるでしょう。これが相対性です。」
さすがアインシュタイン、と舌を巻くエピソードだ。 あなたも、自分の知識を本当に自分のものにしたかったら、小さなこどもでなくとも、誰かに説明してみてほしい。「伝えること」の難しさに気づくはずだ。
参考 池谷裕二著「受験脳の作り方」
