犬も歩けば棒に当たる。 転ばぬ先の杖。 備えあれば憂いなし。
最近、ことわざを聞く機会が減ったように感じます。マンガだと必ず、ことわざをとってつけたように言うキャラクターが一人はいるものなんですが、現実ではそうでもないようす。
確かに、ことわざは古臭いし、説教じみています。でも昔から伝わっているだけあって、かなり的を射ているものもあるんですよ。
Study Hackerでは、そんな日本に古くから伝わることわざを最新の脳科学や認知科学、行動科学を用いて検証してみたいと思います。 今日ご紹介するのはこれ。
「案ずるより産むが易し」 【読み】あんずるよりうむがやすし 【意味】案ずるより産むが易しとは、始める前はあれこれ心配をするものだが、実際にやってみると案外たやすくできるものだというたとえ。
(引用元:故事ことわざ辞典|案ずるより産むが易し )
まあそんなこと、言われてできれば苦労しないよね。といった感じでしょうか。 でも、このことわざ、なんと科学的に証明できるんです。
脳はスタートが苦手。最初のきっかけだけ与えよう
こんな経験ありませんか?
英語の勉強のやる気がおきない。グダグダと時間が過ぎてしまい、さすがにもう始めなければ、といやいやながらに始めると、意外にもスイスイ進む。なんだやればできるじゃないか。もっと早く始めればよかった……。
まさに「案ずるより産むが易し」の典型とも言えますが、これ脳科学の分野では「作業興奮」と言われる有名な現象なんです。
そもそも「やる気」というのは脳の「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部分で作られると言われています。しかしこの側坐核、なかなか動き出してくれないんだとか。(参考:東進オンライン カガクテキ勉強法|作業興奮)勉強も掃除も、始めるまでが大変なのはここに理由があるからだそう。
とにかく、最初の一歩を踏み出してみる。そうすることで、脳は活性化し、活動しやすい状態になるのです。
不安って一体どんな感情なの?
案ずるより産むが易し。そもそも不安ながあるから「案ずる」わけですが、 一体「不安」とはどのような感情のことなのでしょうか。
実は、「不安」は「恐怖」に非常に近い感情だということがわかっています。 そして、その差はたったひとつだけ。対象が何かわかっているか、わかっていないかの違いなんだとか。(参考:IT media エンタープライズ|”不安”と”恐怖”を明確にして、不安を解消する l)
大昔、人類がまだ草原で暮らしていたとき。視界の隅で草むらがガサッと動いたとしましょう。その段階ではまだ何かわかりませんから、脳は不安を感じます。数秒後、草むらから現れたのが野うさぎだったら、その不安は安堵という感情に変わります。しかし、現れたのが狼だったら、その不安は恐怖という形になるわけです。
このように、人類が脳を進化させた時の不安の原因は、一過性のものばかりでした。時間とともに解消されるものがほとんどだったのです。
しかし、現代は違います。職場での人間関係、大学での成績。待っていても、その正体が明らかになるものではありません。むしろ、はじめからカタチなんてないものばかりです。
でも、今の私たちの脳は原始人とほとんど構造が変わりません。脳の進化より何倍も速いスピードで、社会が複雑になってしまったんですね。
こんな時、わたしたちにできることはひとつだけ。自ら行動をおこし、不安の原因を自分の手で明らかにすることです。不安という感情がそもそも「未知のもの」に対する感情なら、それを自分から暴いてしまえばいいのです。
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いかがでしょうか。 不安に思う感情も、なかなか始められないイライラも、結局は脳の働きにすぎません。その仕組みが明らかにされている現代なら、解消するのもそう難しいことではないはず。
そんな複雑な脳のシステムを、「ことわざ」というカタチで大昔から予測していた先人たちには頭があがりませんね。 たかがことわざ、お説教、とバカにせずに。真摯に受け止め実践しましょう。
参考
故事ことわざ辞典|案ずるより産むが易し 東進オンライン カガクテキ勉強法|作業興奮 IT media エンタープライズ|”不安”と”恐怖”を明確にして、不安を解消する