運動することは脳に良い、よく耳にするフレーズです。 しかし結局のところ、どんな運動をどれくらいすれば脳に効くのかまではあまり知られていません。 今回は「脳に効く運動」を具体的に紹介します!
運動で頭が良くなるってほんと?
『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者、ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士は、運動が脳を育てると言います。それは具体的にどういうことなのでしょうか?
以前は「脳のニューロンの数は生まれたときに決まっており、その後は加齢とともに減っていく一方で、増えることはない」と考えられていた。だが最近では、さまざまな要因で後天的に増えることが科学的な常識となっている。 「ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。さらにものを覚えたり認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す効果も、運動にはあります」と、レイティ氏は言う。
つまり、勉強をする土台となる脳を作る上で運動が非常に有効、ということ。しかも後天的に脳を活性化させるためには、いわゆる脳トレや勉強と併せて運動することが必要であるようです。
ジョン J. レイティ (著), エリック ヘイガーマン (著), John J. Ratey (原著), Eric Hagerman (原著)『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(NHK出版 2009/03)
どんな運動がいいの?
レイティ氏が勧めるのは、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動だ。研究によると、数ある体力の評価基準のうち、とくに心肺機能が学業成績と強い相関関係を示しているという。
週に2日は最大心拍数(注)の75.90%まで上がる運動を短めに、残り4日は65.75%までの運動をやや長めに、というのが脳のためには理想的だという。心拍数の目安としては、ランニングでたとえると、最大心拍数に対して80%以上というのはかなりきつい全力疾走、70%はやや息が上がる走り込みといった具合だ。心拍計を使って測ってみるのもよいだろう。 (注)最大心拍数:一般的には成人男性の場合、220から自分の年齢を引いた値を理論上の最大心拍数とみなす。
一口に運動と言っても、心臓や肺の機能を高めるような運動が脳には良いようです。具体的に言うと、週に2日はハアハアと息が完全に上がるくらいの運動、そして残りは少し息があがるほどの運動が心肺機能を高めるのにベストとのこと。ウォーキングやストレッチはリラックスにはぴったりかもしれませんが、脳を活性化させるにはなかなかキツイ運動が必要なようです。
少しずつ始めよう
とはいっても、毎日運動をするのは難しいですね、しかも息が上がってしまうほどの運動なら尚更ハードルは高そうです。
だったら、少しずつ始めましょう。月並みな文句ですが、これに尽きるはずです。ウォーキングをしている人は少しランニングを取り入れてみるとか、コースに坂道を加えて負荷をかけてみるというところからで構わないのです。
*** 同じメニューを毎日こなすだけではなく、少しずつ自分が進化していくイメージを持って取り組むこと。運動でも勉強・仕事においても、それが楽しみつつハードワークをこなせるようになる秘訣ではないでしょうか。
(参考) John J. Ratey著, Eric Hagerman著, 野中香方子訳 (2009),『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』, NHK出版.

