新連載『カリスマの言葉』が始まりました。
日々の努力を怠らず、自身の専門分野で活躍するカリスマたち。その経験から導き出された言葉は格言となり、私たちの心に響き続けます。勉強や仕事、人間関係に悩んだとき、カリスマの言葉があなたを解決へと導いてくれますように——。
初回の今回から7日連続でお届けしていくのは、教育学者・明治大学文学部教授の齋藤孝氏の言葉です。私たちは日々、自分の仕事と向き合わなければなりません。仕事がうまくいかない、心から楽しめない……。そんな悩みを救ってくれる格言が、きっとあるはずです。
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仕事である程度の経験を積むと、時間の割り振りや力の入れ具合、抜き具合などに長けてくるものです。それはあなたの効率や生産性を上げ、空いた時間で仕事以外のもっと好きなことができるかもしれません。
でも、もし仕事で人を感動させたいと思うなら、ときになにごとも全力で取り組んでいた部活のときのような、あのほとばしるエネルギーを取り戻すことが大切です。気づかないうちに毎日の仕事に慣れてしまった自分へ、「部活的」仕事のススメです。
【格言】 ときには、「部活動」のように仕事をしてみる
わたしは、高校野球のテレビ中継を観るのが大好きです。 高校野球では、プロ野球以上にその試合を決めることになったポイントが浮き立ってきます。 「ああ、あのときのショートのエラーが大きく流れを変えたな」 「あそこで粘って四球を選んだのが決め手になったな」 こうしたことがわかるから、なおさら感情移入してしまいます。
もちろん、ミスをした選手やチャンスを逃した選手にとっては、悔やんでも悔やみ切れないこともあるでしょう。しかし、誰もがまったくの計算抜きの状態で一生懸命やっていて、そこにはさわやかなエネルギーの燃焼が見て取れます。だから、勝ち負けに関係なくわたしを感動させてくれるのです。
大人になってからの仕事では、なかなかこうはいきません。「まあ、このあたりでいいだろう」と、つい時給感覚で動いてしまうからです。 一方で、「つい、突き詰めてやってしまう」という職人気質の人もいます。こういう人は、損得に関係なく自分の仕事を極めようとするために、成長度合いも高く、成功します。
もしあなたが、仕事上でなにか割り切れないものを感じているなら、ときには、部活動感覚で動いてみるのもいいかもしれませんよ。
【プロフィール】 齋藤孝(さいとう・たかし) 明治大学文学部教授。1960年、静岡県に生まれる。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士過程を経て、現職に至る。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書には『読書力』『コミュニケーション力』『新しい学力』(岩波新書)、『理想の国語教科書』(文藝春秋)、『質問力』『現代語訳学問のすすめ』(筑摩書房)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『語彙力こそが教養である』『文脈力こそが知性である』(角川新書)などがある。TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」など、テレビ出演も多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」の総合指導を行っている。著書累計出版部数は1000万部を超える。
Photo◎佐藤克秋
*** 仕事がうまくいくとき、そこには多かれ少なかれ人を感動させる要素が存在するものです。「納期よりも早く仕上げてくれた」「一つひとつていねいに取り組んでくれた」。特別大きなことでなくても、ほんの少しの心がけや取り組む姿勢が、人を感心させたり感動させたりします。
仕事をするのは人であり、評価をするのも人です。目先の損得にこだわらずになにごとも全力で取り組むことで、結果的に良い結果を引き寄せることができるのでしょう。
