私たちは常に、社会と何かしらの形でかかわりをもって生活しています。そして社会とかかわる場面において、コミュニケーションは非常に重要な役割を占めます。
とくに仕事をするにあたって考えを共有したり、作業を分担したりする場面は頻繁に訪れます。だからこそ、他者とのやりとりをより円滑にするためにも、コミュニケーション能力は現代を生きるビジネスパーソンにとってなくてはならない能力だと言えるでしょう。
では、コミュニケーション能力とは具体的にどのようなものなのでしょうか。それは大きく分けると、「聞くこと」と「話すこと」に分類されます。今回は話す能力にフォーカスして、今日から使える役立つテクニックを紹介していきます。
話し方が変われば思考様式は変わる!!
誰かと会話をしていて、この人の話はものすごく明快だ、と感じることがあります。また文章を読んでいて、難しいはずの内容がスッと理解できるという経験をすることもあります。
こうした人たちは伝えるということにおいて、非常に高いコミュニケーション能力を持っていると言えるでしょう。しかし一般的に、そのような能力は才能のある人や高度な訓練を積んできた人特有のものだと思われがちですが、実際にはそうだと言い切れないようです。
メジャーリーガーとしても活躍した元プロ野球選手・松井秀喜氏の座右の銘として知られる言葉に、次のようなものがあります。
心が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる
(引用元:Inquiry|ウィリアム・ジェームズ)
この言葉はアメリカの有名な哲学者であるウィリアム・ジェームズの言葉であり、多くの著名人に影響を与えていると言われています。そこで齋藤孝氏は、この言葉になぞらえて
話し方が変われば思考様式が変わり、思考様式が変われば頭が変わる
(引用元:齋藤孝(2014)『すぐに使える!頭がいい人の話し方』,PHP研究所.)
という持論を述べています。この言葉の通り、話し方は私たちの思考に大きな影響を与えるものであり、思考が変わった結果、多くの物事に気づくことにもつながるのです。では、その考えをもとにどのように頭を整理し、話す能力を鍛えていくのかを紹介していきます。
頭が整理されるキーワード
よく言われる「頭のいい人」は、齋藤孝氏いわく「メタ的」に物事を考える能力を持っている人なのだそう。「メタ的に物事を考える」とは、自分の考えや置かれている状況を、第三者的な視点で見直すことです。そして、頭のいい人の話し方とはすなわち、メタ的にとらえたことを整理して伝える能力を持っている人なのです。
ひどく難しいやり方のように感じるかもしれませんが、手っ取り早くその訓練をする方法があります。それは、ある言葉を口癖として取り入れるというものです。その口癖とは、具体的には次のような言葉です。
・要するに ・総括していえば
メタ的な視点移動の第一歩として、話を俯瞰的に見ることが必要です。このふたつのキーワードを使うとなると、話の概観はどうなのか、ということを考えなければなりません。相手の話の中で大切なポイントは何かを考え、情報を構造化しましょう。これは、相手と自分の認識を一致させ、スムーズに仕事を進めるうえでも非常に有効な方法です。
俯瞰的に物事をとらえることができたら、続いて細部を見ていきましょう。次のような言葉を意識して使うと効果的です。
・具体的には ・細かく見てみると
全体像を把握した後で細部を見ると、重要なポイントがつかみやすくなります。ミクロ的な視点、そしてマクロ的な視点を両方取り入れて相手の話を聞く。これらを通じて、情報を立体的、客観的にとらえることができたら、情報をコンパクトに整理しやすくなるでしょう。
要点を3つにまとめる
情報が整理できたら、次はいよいよそれを自分の口で伝える段階へと進みます。その際に意識してほしいのが、「3」という数字です。
具体的には、話を要点ごとに大きく3つに分けます。そして、それぞれの項目の中でさらに3つの項目を話すようにするのです。その際に注意するのは、「伝えるべき3つの情報は何であるか」を常に意識すること。それができていれば、たとえ途中で混乱したとしても、どこまで話を戻せばいいのかすぐにわかるでしょう。
プレゼンに苦手意識を持っている人にとって、これは非常に有効な方法です。スライドを作っていくうちに、そもそも自分が何を言おうとしていたのかがわからなくなる。そのような状況に陥ったときこそ、3という数字を意識して構成してみましょう。説得力が増すだけでなく、普段よりも覚えるストレスが少なくなるため、リラックスしてプレゼンに挑むことができるはずですよ。
*** 話をするという当たり前のことも、相手にクリアに理解してもらうとなると非常に難しいものです。この記事で紹介した方法がその一助になってくれることを願っています。
(参考) Inquiry|ウィリアム・ジェームズ 齋藤孝(2014)『すぐに使える!頭がいい人の話し方』,PHP研究所. 戸田山和久(2012),『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』,NHK出版.