仕事でも勉強でも、ここぞという場面で一番の集中を見せて成功できる人もいれば、パニックに陥ってしまい普段のパフォーマンスすらも発揮できない人もいます。みなさんはどちらのタイプですか?
例えば勉強であれば、絶対に合格したい試験の本番。仕事であれば、大人数が訪れるイベントで任された司会。どちらの場合もそれなりに準備はしているはずで、当然成功させたいと考えているのに、どうも本番になると頭が真っ白になってしまう……。そんな状況に陥らないためには、どうしたらよいのでしょうか。
今回は、土壇場で力を発揮する方法について考えてみたいと思います。
土壇場で力を発揮するには、心の余裕が大切
2016年の日本陸上競技選手権において、10,000mと5,000mの両種目で完勝した、長距離陸上選手の大迫傑選手。長距離種目といえばラストスパートでの白熱した勝負が見どころ。大迫選手は今回どちらの種目でも、ラストの勝負で他の選手を圧倒し、リオ五輪代表を勝ち取りました。
大迫選手は、2015年の日本選手権まで4年連続2位。それもほぼすべての勝負で、優勝者との差が1秒前後でした。ラストで勝ちきれなかった状態から一転して勝利をつかんだその要因はいったい何なのでしょうか?
悔しい4年間を経て勝利した大迫選手は、次のように述べています。
「(昨年までに比べ)スピードとスタミナもつきましたが、メンタルの部分でも余裕を持って走れるようになったことが大きな成長かなと思います。途中、前に行かれても、落ち着いて、時間をかけて追いつくことを想定していました。」
(引用元:東洋経済ONLINE|「1秒差で勝てない」選手はなぜ開花したのか)
そして、大迫選手を見守り続けてきたスポーツライターの酒井政人氏も、余裕を持つことの重要性を指摘します。
厳しい戦いになるときこそ、メンタル的に「余裕」を持って臨むべきだ。焦って、勝負を仕掛けるのではなく、勝率が高くなるところで、最大限のパフォーマンスを発揮する。そういう戦いを心掛けることが、賢者の選択と言えるだろう。
(引用元:同上)
心理的に一番プレッシャーがかかる場面で最高のパフォーマンスを発揮するためには、余裕を持った心構えが大切なのです。これは、何もアスリートに限ったことではないはず。では、その余裕とはどのようにすれば得られるのでしょう。
余裕をもった対応には相応の準備が必要
現代にも通用するものが多い孫子の兵法の教え。その中の一節には、何が起こっても対応できるような準備をすることが説かれています。
孫子曰く、 『昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。』
(引用元:孫子兵法家の孫子ブログ「経営風林火山」|負けない準備を)
これは、「戦いに秀でたものは、まず守りを固め、相手が弱みをさらしたときなど勝てる瞬間まで待つ。なぜなら、負けないかどうかは自分の行動によって決められるが、勝てるかどうかは相手次第だからである」という意味。土壇場でうまくいくかどうかは、負けない準備ができているかどうかで決まってくるということです。
上で紹介した酒井氏も、余裕度を高めるには事前の準備が大切であると言います。試合をイメージし、勝負所を判断するための情報収集を行ったうえで、自分がどこで最大の力を発揮できるのかを把握しておく必要があるのです。つまり、ライバルに負けないためには、どのポイントを攻略すればよいのかを事前に考えておくということ。
「土壇場で最高のパフォーマンスを発揮しよう」と考えるとどうすればよいかわからないかもしれませんが、「失敗しないための準備」ならできそうですよね。
事前の準備には「if then planning」が有効
事前準備の仕方として効果的なのが、「if then planning」という方法です。これは、モチベーションをテーマに研究する心理学者Heidi Grant Halvorson博士が提唱したもので、私たちの目標達成率を上昇させてくれる、非常に便利な思考ツール。今までに100件以上の研究で、その効果が確かめられているのだそう。
やり方は非常に簡単で、「もし○○な状況になったら、××する」ということを決めておくだけ。
「もし○○な状況になったら、××する」という形の文章は私たちの脳に残りやすく、本当にその状況になった時にやるべきことを思い出しやすいという効果があります。無意識で覚えられている条件反射のようなものなので、忙しい状態でも思い出せるといいます。
起こりうる状況をなるべく多く想定し、その対策をif then plnanningで考えておくことにより、より余裕を持って物事に当たれるのではないでしょうか。
ここで、冒頭に挙げた例で考えてみます。絶対に合格したい試験ならば、事前の情報収集を綿密に行って傾向を分析し、絶対に落とせない範囲を絞って重点的に勉強しておく。そして、「緊張して手汗をかいたら、深呼吸3回で冷静になる」と決めておきましょう。心の余裕が取り戻せるはずです。大イベントの司会ならば、原稿の準備はもちろんのこと、「○○と聞かれたら××と答える」など、答えられないとまずい想定問答をいくつも考えておくと、「これなら失敗しない」という余裕が生まれるでしょう。
*** 土壇場になったときにパニックに陥ってしまうのは、準備不足による余裕のなさが引き起こすものなのかもしれません。大切な仕事、重要な試験の時には、ぜひ負けないための準備をしてみてください。
(参考) 孫子兵法家の孫子ブログ「経営風林火山」|負けない準備を 東洋経済ONLINE|「1秒差で勝てない」選手はなぜ開花したのか 99U|How To Use If-Then Planning To Achieve Any Goal