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そろそろ全国各地、様々な入試が開催される時期だ。中でも「大学の入試問題」と聞くと、ただ難しい、そんなイメージを持っている人が多いだろうか。実際、単に難しい問題も多く存在している。しかし、中には受験生に対して、ひいては社会に対して何かを訴えかけようとしている入試問題もあるのだ。
今回はそのような入試問題を見ていきたいと思う。

円周率は3?

有名な話だが東大入試で次のような問題が出た。

円周率が3.05より大きいことを証明せよ.

(出典:東京大学 数学入試問題過去問 55年分)

この問題が出された2003年はまさに「ゆとり教育」がピークを迎えようとしていたところで、小学校で円周率がおよそ3だと教えられているという誤解が広まった時でもあった。誤解ではあったが、「円周率はおよそ3」というのはまさに「ゆとり教育」のシンボル的な文言になっていた。
それを「いや、やっぱり円周率は3より大きいものだよ」とメッセージを発した東大は、「ゆとり教育」に対し警鐘を鳴らしたのかもしれない。

その甲斐あってか、今では「ゆとり教育」は捨て去られ、「まともな」教育に戻ったとされている。ちなみに、この年以降、円周率を評価させる問題が多くなり、果ては(誘導付きではあるが)円周率が3.141より大きく、3.142より小さいことを証明させる問題まで出ることとなった。社会のみならず教育界にまで影響を与えた一問と言える。

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自分で決めたことは自分の責任

京大がまだ後期試験を行っていた1995年後期にこんな問題が出された。

出典:京都大学 数学入試問題過去問 55年分

出典:京都大学 数学入試問題過去問 55年分

(出典:京都大学 数学入試問題過去問 55年分)

記号などはさておき、(2)を見てほしい。自然数というのは、1,2,3,4,……のような普段自然に使う数字のことである。さて、(2)では好きな自然数nを選んでいいと書いてあるが、それによってg(n)という関数はある値をとる。そしてその値がこの設問の点数となってしまうというのだ。

例えば好きな自然数として1を選んだらどうなるだろうか。簡単な計算をしてみると、このときg(n)は0となる。つまり、好きな自然数として1を選んでしまうとこの設問は0点になってしまうのである。ほかにも適当に2や3を代入したところで0点になってしまうところがまたなんとも憎らしい。筆者の好きな7という数字もここでは0点にされてしまうのだ。

もちろんこの問題、数学的に解くことができて、n=6の時、g(n)は最高点である18点となる。(合同式を使えば比較的簡単な問題である。)

しかし、試験会場で解法が思いつかなかったら一か八かの賭けに出るしかない。自分の好きな数字を自分の責任の元、記述するのだ。普通の問題なら「採点基準が悪かったと」採点官のせいにできるかもしれないがこの問題に限ってはそうはいかない。あくまでも自分が選んだ数字なのである。

「自分が決めたことには自分で責任を持とう」、もしかしたらそんなメッセージが隠されていたのかもしれない。

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基本は大事

世の中どんなことをしようとしたって、基礎基本という「土台」を蔑ろにすることはできない。しかし、慣れてきたりするとついつい大切なはずの基礎基本を忘れて格好いい応用だけに目が行ってしまう。「土台」がしっかりしていない「建物」の末路は悲惨である……。東大はそのことを伝えようとしたのだろうか、1999年に次のような問題を出している。

出典:東京大学 数学入試問題過去問

出典:東京大学 数学入試問題過去問

(出典:東京大学 数学入試問題過去問 )

sinやcosと言えばまさに高校数学の「土台」というべき記号である。その定義は高校1年生の教科書のかなり最初の方に記載されている。それが書ければあの天下の東大の問題で点数を稼ぐことができたのである。
さらに(2)の証明問題も、加法定理と呼ばれる定理の証明で、この証明はあらゆる高2の数学の教科書に載っている。しかし予備校の講師曰く、非常に出来が悪かったそうな……。

基本を大事にしないようでは、とてもではないが大学の授業にはついていけないという東大からのメッセージでもあったのだろう。大学受験だけではなく、何か勉強している人は、基礎基本を大切にしなければいつか痛い目にあうはずである。

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いかがだっただろうか。入試問題といえば無味乾燥としたただ難しいもの、というイメージが強いかもしれないが、メッセージ性が強い問題も多く存在する。そういう問題は受験生に対してだけではなく、幅広い社会に対して「問い」を投げかけていることもある。2013年の麻布中学の入試では理科で「ドラえもんはなぜ生物ではないか」という問いが出て大きな話題となった。これは、日本でも屈指の自由な校風で知られる麻布が欲しがる子どもの像を象徴した問題と言える。

「入試問題は学校から受験生へのメッセージ」と捉えると、単なる過去問があなたに色々と語りかけてくるだろう。

参考文献
東大理科 1999年前期|東京大学 数学入試問題過去問
東大理科 2003年前期|東京大学 数学入試問題過去問
京大文系 1995年後期|京都大学 数学入試問題過去問
円周率は3|Wikipedia
NAVERまとめ|麻布中学の入試で出題された「ドラえもん」問題が話題に


早稲田大学先進理工学部物理学科所属。横浜サイエンスフロンティア高校卒業。大学では理論物理学を中心に日々勉強に励んでいる。