「自分はこのままでいいのだろうか」 「自分より優秀な同僚に囲まれてしまい、太刀打ち出来ないのではないかと焦る」
そんな不安に襲われてしまうことはありませんか?
「あの人は○○ができるのに、自分には何もない気がする」と自己嫌悪に陥ってしまうと余計に仕事に集中できなくなったり、無理して個性を発揮しようとして裏目に出てしまったり、悪循環に陥ってしまいますよね。
今回は、自分の能力に自信が持てないあなたが、自分の強みを知り、それを伸ばしていくための方法をご紹介します。決して“お手軽”とはいえない方法ですが、自分の得意なこと、不得意なことがよく分かるようになりますよ。
「フィードバック分析」をせよ!
自己実現の方法について述べられた、ドラッカーの名著『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー(自己実現編))』では、これからの時代は自分の強みを知ることが不可欠だとした上で、自分の強みに気づく方法について次のように述べています。
今日では、選択の自由がある。したがって、自らの属する場所がどこであるかを知るために、自らの強みを知ることが不可欠となっている。強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておく。九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。私自身、これを五〇年続けている。そのたびに驚かされている。これを行うならば、誰もが同じように驚かされる。
(引用元:P・F. ドラッカー著(2000), プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー(自己実現編)), ダイヤモンド社)
「期待」と「実際の結果」を照合し続けることを習慣にすることで、自分の強みが明らかになるというのです。
例えば、プレゼンの前に「つかみでウケをとって場を和ませる」という「期待」を設定したとしましょう。
「実際の結果」による考え方の例は以下のようです。 ・ウケた→ユーモアを武器にした喋りが強みになる→「飲み会で積極的に前に出て自分を売り出すべきだ」 ・すべった→その路線はあまりよくなかった→「喋るのが苦手だから一人でひたすら勉強してスキルを磨くべきだ」
漠然とプレゼンに望んでいると、なんとなく「成功した」、「失敗した」で終わってしまいますが、「期待」と「実際の結果」の2点を観察すれば、プレゼンが自分の強みを見極めるチャンスになるのです。そして、今後の方針を修正し続けることで、いつか自分の強みに達することができます。
他の行動においても「期待」と「実際の結果」に注目し、検証を続ければどんどん自分の強みに近づいていくことができるでしょう。そうすると、行動をとる前に「これは得意だからいけそう」、「これは苦手な分野なんだよな……」といったように「これから良い成果を出せそうかどうか」の勘が自然と働くようになります。
「いろいろ試して、うまくいったことを続ける。うまくいかなかったことはやめる」というスタンスで、「期待」と「実際の結果」を照らし合わせてみてください。みるみる自分の「得意なこと」に対する解像度が上がってくるのが実感できるでしょう。
習慣化しよう
ドラッカーのように、50年間もこの考え方で強みを探すのは大変そうだと思うかもしれません。しかし、心理学では一度習慣化してしまった行動は、その後労力なしに継続することができると言われています。
これについて、1000人以上の個人コンサルティングの現場から“続ける習慣”が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立した古川武士さんの著書である『30日で人生を変える 「続ける」習慣』によると、こういった“思考回路の習慣”は、半年間続ければその後は難なく続けられるそう。
フィードバック分析も最初のうちはとても面倒くさく感じるかもしれませんが、半年間続ければその後大きな労力なしにずっと自分の資産になる考え方です。自分の強みに気づいて成功できるかどうかを分けるとても重要な分かれ道ともいえます。
例えば、カレンダーアプリの「毎日繰り返す」設定で、夜寝る前の時間に「今日の期待と実際の結果を振り返る」と入れておくと、毎日ベッドの中で1日のフィードバック分析を振り返る習慣を身につけられます。
このように、ちょっとしたことから習慣化してみてはいかがでしょうか?
強みを活かす
自分の強みに気づけたら、活かし方を考えてみましょう。 日々の業務をリストアップし、自分の強みによって付加価値を与えることができないか考えるのです。
例えば、あなたが「いつも物事を分析的に、冷静に考えてしまう癖がある」としましょう。 大人数の飲み会ではトークのスピードについていけず話に入れないため「なんだか冷めたやつだ」と思われてしまうかもしれません。しかし、少人数の飲み会でトークを冷静に分析した上で発言すると「考え方が面白い」、「また聞きたい」と思ってもらえ、上司に気に入ってもらえるかもしれません。
つまり、トークの機転とスピードが重要な大人数の飲み会では短所である“分析的思考”が、ゆっくりトークを進められる少人数の飲み会では長所になるのです。短所だと思っていた“分析的思考”が、環境を変えることで長所に化けた例と言えるでしょう。場所によっては否定されてしまう、“弱み”ともとれる自分の特徴も、場所を変えれば“強み”になりえるのです。
フィードバック分析の結果は必ずしも良いものばかりではなく、“強み”と同様に“弱み”もたくさん出てきます。それぞれはコインの表と裏のようなもので、「この弱みは、どんな場所でどんな人にとっては強みに変わるだろう」と考えてみると、より多角的に自分の能力をみつめることができるでしょう。
“弱み”も“強み候補”と捉え、活かすチャンスを伺いましょう。「普段の業務×強み」と「普段の業務×弱み」で自分だけの価値が生まれますよ。
*** 手軽ではないけれど確かな効果の見込める自己分析方法、ドラッカーのフィードバック分析。
わかっているようで、いざ聞かれると困ってしまう自分の“強み”は、「期待」と「実際の結果」を照らし合わせることで、もっと深く知ることができます。また同時に“弱み”を客観視できれば、環境次第で強みになり、とても自信がつくでしょう。さらに、普段の業務に活かすことを考え続ければ自分だけの価値を生み出すチャンスに気づけるかもしれません。
あなたは今日の仕事に、何を“期待”しますか?
(参考) P・F. ドラッカー著(2000), プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー(自己実現編)), ダイヤモンド社 古川 武士著(2010), 30日で人生を変える 「続ける」習慣, 日本実業出版社 習慣化コンサルティング株式会社|プロフィール