テストや問題集で、たくさん目にする現代文の問題……。 問題にするために切り取られた文章は、物語や主張のほんの一部。 この先ってどうなるんだろう?と気になったことはありませんか? こうした問題文から元の作品をたどってみると、思わぬ結末や、思いがけないお気に入りになる作品との出会いが待っているかもしれません。 今回は、本好きな筆者が、模試や問題集の中から気になって読んだ作品で、特におすすめ、なものを紹介します。
おしゃれ童子 太宰治
高校で配布された問題集で出会いました。あまりにテンポよく、面白い表現のオンパレードにすっかり惹かれてしまって出典の作品を読んでみたら、結末の急展開にびっくり。太宰の自伝的短編だったのでした。
子供のころから、お洒落のようでありました。
の一文で始まる本文は、そのあとの軽妙な文章を 走れメロスや人間失格以外の太宰治を読んだことが無い人、ぜひ読んでみてください。 本編は短編なのですぐ読めます。
太宰治著
日曜日たち 吉田修一
東京で暮らす若者たちの、さまざまな「日曜日」の情景を切り取った連作短編集。
模試では、その中の一つ、『日曜日の新郎たち』が出題されました。
父が知り合いの結婚式のために息子の所へ上京してきます。主人公の母である妻を亡くした父が、母が生きていた頃には全くできていなかった家事あれこれをやる姿などに、月日の流れを感じる作品。こうした何気ない日常の中での、事件とも呼べない事件を境にしての主人公の細やかな心情変化を問う問題は多いです。
心情表現や比喩の巧みな吉田修一さんの作品はよく出題されます。
『日曜日たち』
吉田修一著 講談社 2006年
神様 川上弘美
紫式部文学賞などを受賞した短編集です。9つの作品が収録されており、そのうちの一つ、川上弘美さんのデビュー作でもある「神様」の一部が、模試で出題されました。
「くまに誘われて散歩に出る」から始まる一文にひきこまれます。
3月11日の東日本大震災の.原発事故以後の、くまと私の生活を描く、『神様2011』も出版されました。
『神様』
川上弘美著 中央公論新社 2001年
じぶん・この不思議な存在 鷲田清一
高校の教科書にものるようになった評論文。鷲田清一さんの作品は、とにかくよく出題されています。平易な表現が、問題文のように切り出されて出題されると、逆に難解さを生む文章。その文章を通して読むと。意外とすんなり読めます。 他者との関係から「自分」というものを探ろうとするこの本は、学生の時にぜひ読んでおきたい一冊。
鷲田清一著 講談社 1996年
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現代文問題からの出典読みは、嬉しい効果が盛りだくさん。 勉強の合間の息抜きになったり、次に向かう現代文の問題が楽しみになったり、前にも出ていた著者だ!と気が付けることで実は現代文の傾向を知ることになったり……。 手元の一冊の問題集から、何冊もの素敵な本に出会えるチャンス。さあ、問題文末の、出典名をスマホで検索してみましょう。

