日頃から熱心に勉強してはいるけれど、どうもいまひとつ身についていないという方は、勉強にちょっとした変化をつける「インターリーブ勉強法」を試してはいかがでしょう。変化と言っても、何か特別に変わったことをするわけではありません。
いつも一つのことに集中し勉強している人には特にオススメです。さっそくご紹介しましょう。
「反復学習」の弊害
「インターリーブ勉強法」をご紹介する前に、一つのことを徹底的に勉強したり、練習したりする「反復学習(練習)」の弊害についてご説明します。
「成績アップや苦手な分野の克服なら反復学習(練習)を」という考えは昔から根強くあります。何度も同じことを繰り返せば、脳や体に定着すると考えるのは当然ですよね。それに、繰り返し行った事実は自信にもつながります。
しかし、野球関連のスクールや販売を行う有限会社エム・エフ・ティーは自社のサイトで、もしも小学生が野球の素振りという反復練習を続け、同じ動きばかりをしていると、どんな弊害があるか以下のように伝えています。
・フォームができていないまま反復練習しても悪いクセが定着する。 ・過度に同じ動きばかりをしていると神経回路の成長が偏り選手の伸びしろを奪う。 ・同じ動きを過度に繰り返すと、深層筋が硬化し体が硬くなる。
そのため、一つひとつのメニューを短時間にし、次々にメニューを変化させることを推奨しています。
これに関して、運動だけではなく学習においても同じことが言えます。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロバート・ビョーク博士らは2006年に、さまざまな絵画を学生らに覚えさせ、そのあと示された絵がどの画家のものか当てる実験を行いました。その際、一方のグループには作者ごとに覚える反復学習を、もう一方のグループには作者ごとではなくランダムに記憶させました。
この実験の結果、良い成績を残したのは後者の方です。そして、このランダムな学習こそが「インターリーブ勉強法」なのです。
「インターリーブ」ってなに?
関連性のあるもの、もしくは違うものを混ぜて学習することを、認知心理学では「インターリーブ」と呼びます。実をいうと、音楽やスポーツの世界では昔から取り入れられている方法です。
例えば音楽ならば、読譜、聴音、分析、理論、曲の演奏といった練習を代わるがわる行います。また、スポーツではランニングや筋力トレーニング、瞬発力や技能を身につける練習などを代わるがわる行うのが一般的です。
そして、そのテクニックがロバート・ビョーク博士らの絵の実験により、学習の基本原則に加わったというわけです。ビョーク博士はインタビューで、「ある情報を他の事柄と関連づけて習得すると、はるかに大きな学習効果がある」と伝えています。
また、人気サイエンスレポーターであるベネディクト・キャリー氏は、科学者らへの取材をもとに書いた著書『脳が認める勉強法』のなかで、いつも同じ場所で勉強するよりも、場所や背景を変える方が良い成績を出せると、実験結果をもとに伝えています。これもある意味「環境の反復」よりも「ランダムな環境」の方が良い学習効果をもたらす結果だと言えるのです。
このような効果が生まれるのは、関連性のあるもの、もしくは違うものを混ぜてメリハリのある学習を行うことによって、個々の特徴をより鮮明につかめるため身につきやすくなると考えられています。
勉強は「変化」をつけよう
では、具体的にどのようにして「インターリーブ勉強法」を取り入れるのかご紹介します。方法はいたって簡単。いつもの勉強に別のことを差し挟み、変化をつければいいだけです。
例えば「次に試験がある科目」を代わるがわる勉強するのも良いでしょう。また、例えば「数学・物理・化学」や「世界史・日本史・現代社会」などを代わるがわる勉強するのも良いでしょう。しかし、もしも筋力トレーニングと英語のリーディングと、Javaプログラミングと音楽理論の勉強という、あまりにもかけ離れている内容を混ぜると脳に定着しにくくなってしまいます。つまり、前者のように、“何かしら関わりがあるもの”を代わるがわる勉強するのが良いのです。
なお、「インターリーブ勉強法」と一緒に「環境の変化」をつけるのもオススメです。いつも勉強している自分の部屋ではなく、広い図書館に行ったり、公園のベンチに座って行ったり、長時間でなければカフェで勉強したりという方法もあります。もちろん自分の部屋でも、いつもの勉強時間を少しずらす、飾っている絵を変える、カーテンの色を変えるという変化でもいいかもしれません。
インターリーブ勉強法のすごさ
実は以前、筆者は偶然にも「反復学習」と「インターリーブ勉強法」を行い、後者の効果を実感しました。
長いあいだIllustratorとPhotoshopというデザインソフトを使い、プレゼンテーション用の資料をつくったり、デザイン画や仕様書、フライヤーなどをつくったりしていましたが、WEB制作の経験はまったくありませんでした。
しかし、ある時、経験がないまま業務としてWEB制作を行わなければならない状況になったのです。そこで、まずはまったく無知だったHTMLとCGIの仕組みを集中的に勉強しました。しかし悲しいことに凝り固まった頭では、どんなに集中しても繰り返しても、それらを覚えられません。
そこで、気分転換にもなるので、すでに慣れ親しんでいたIllustratorとPhotoshopという2つのデザインソフトも、改めてWEB制作向けとして勉強をはじめ、JavaScriptやライティングなどの勉強もはじめてみました。つまり、それまでに行っていた「反復学習」をやめ、Illustratorの勉強、Photoshopの勉強、HTMLタグの勉強、CGIの勉強、初歩的なJavaScript、ライティングの勉強を代わるがわる行うという「インターリーブ勉強法」に変えたのです。
その結果、経験ゼロの状態から3ヶ月ほどで、動きのある(静的ではない)業務用のWEBサイトを、1人で丸々制作することができるようになったのです。その学習法が成果をあげた理由は、やはり複数のことを関連づけて覚えたお陰で、それぞれの役割が明確になり、脳に定着しやすくなったからでしょう。
*** いつもの勉強に、ちょっと変化をつけるだけで効果を生む「インターリーブ勉強法」について説明いたしました。難しく考えず、気軽に取り入れて勉強の成果をぐんと上げてくださいね。
(参考) Study Hacker | 勉強は "組み合わせ" を意識しろ! 成果が15%アップする『インターリーブ勉強法』 MFT | 運動能力を高める ~運動の神経回路を構築する~ ダイヤモンド・オンライン | 反復学習よりも効果大!学習に変化を取りいれる「インターリーブ」のすごさ | 脳が認める勉強法 ダイヤモンド・オンライン | 勉強する場所を変えるだけで、テストの点数が良くなる!? | 脳が認める勉強法 ベネディクト・キャリー著,花塚恵訳(2015),『脳が認める勉強法』,ダイヤモンド社. WIRED.jp | その常識は間違い?:効果的な学習法