世の中には自己啓発本と言われる本が数え切れないほど出回っています。本屋でビジネス書のコーナーに行くと、様々な自己啓発本が平積みになっていますよね。特に最近では、アドラー心理学の本が話題。読んだことがある人も多いのではないでしょうか。
先日筆者は「アドラー心理学にハマって離婚危機に!?実践して大失敗しちゃった人たちの悲痛な叫び」という記事を読みました。この記事では、アドラー心理学に関する書籍を読み、実践してみたものの、深く理解するレベルにまで達していなかったために失敗してしまった人の体験談が掲載されています。例えば、こんな話です。あるマネージャーが、アドラーの「他者信頼」の教えに沿って部下にリスクの大きい仕事を無条件で任せたところ、イベント直前になってその部下が退職してしまい、大赤字が発生してしまった……。
こうした例から、自己啓発本の内容を正しく理解して正しく実践するというのは、案外難しいことだということがわかります。では皆さんは、自己啓発を正しく読めているでしょうか? ためになりそうだから読んでいるけど、さーっとななめ読みしているとか、とりあえず読むだけ読んでポイントだけかいつまんでいる、といった方、いませんか?
今回は、自己啓発本を適切に活用するために必要な、正しい読み方の3か条を紹介します。
考えながら読む
一見当たり前のことのようですが、考えながら読みましょう。文章を目で追うだけになっていませんか。自己啓発本は、娯楽として読むものではありません。著者から明確に提示された課題があり、それを解決するための書籍です。新しいことを学ぶつもりで読まなければ、内容を吸収することはできません。
学校の参考書を読んだのことを思い出してみてください。重要なところには線をひいたり、ノートに取ったり、わからないところがあれば立ち止まって何度も何度も読み返したりした経験があるはずです。
自己啓発本もそれと同じ。勉強するつもりで読んでみるだけで、理解は格段に深まるでしょう。
批判的に読む
この本に書かれていることは本当に正しいのか、疑いをもって読んでみることが大事です。「なぜ」という視点を大切にしましょう。
考えながら読むという読書の手段に、「クリティカルリーディング」というものがあります。クリティカルリーディングとは、書かれている内容を文字だけ読んでそのまま鵜呑みにするのではなく、その内容は本当に正しいのか、著者はなぜそう主張しているのかといったことを明らかにしながら読むという方法です。
このように批判的に読むことを心がけると、著者の意見の根拠をとらえられるようになります。自己啓発本において重要なのは、手段だけではありません。手段の根底にある理念が重要です。理念を正しく理解していないと、勘違いをして誤った行動をとってしまう恐れがあります。
ある行動をとるようにすすめる記述があるならば、なぜその行動をするべきなのか、という著者の主張の核となる部分を理解しましょう。そうすることで、失敗を避けるだけではなく、違う場面にも応用することが可能になります。
クリティカルリーディングについては、こちらのコラムでも詳しく紹介しています。 →STUDY HACKER|「考える読書」できてますか? おさえておきたい “クリティカルリーディング” の基本。
関連本を読む
1冊の本だけで知識を得ると、偏った情報になってしまうことが多いものです。その本に関連した本も合わせて読んで、情報を補うようにしましょう。複数の視点からの主張を見るために、違う著者の文献に目を通すのもお勧めです。
別の本を読むことによって、新たな知見を得ることができ、自分自身の考えにも違った視点が生まれるでしょう。また、自分の考えを補強するデータが集まることもあります。1冊の本だけではよく理解できなかったことが、別の本ではわかりやすく解説されているかもしれません。
少し話は変わりますが、学習における累乗の効果って知っていますか。人は、2倍、3倍勉強すると、4倍、9倍もの効果を得られるそうです。
このことは、自己啓発本を読むことにも当てはまるはず。1冊だけでは表面的にしか理解できなくても、関連した本を読むことで、知識が体系的になり、理解が深まります。1冊だけで満足しないで、もう1冊手を伸ばしてみてください。
*** 自己啓発本は、上手く利用すれば仕事や人生をよい方向に導いてくれる素晴らしいツールですが、一歩間違えると悪い方向に導いてしまう恐れがある厄介な道具ともなりかねません。正しく読んで深く理解できれば、仕事に人生に役立つ知識を得る良い機会となるはずです。
(参考) 新刊JP|アドラー心理学にハマって離婚危機に!?実践して大失敗しちゃった人たちの悲痛な叫び STUDY HACKER|「考える読書」できてますか? おさえておきたい “クリティカルリーディング” の基本。 池谷裕二(2007),『進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線』,講談社. 池谷裕二(2001),『記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』,講談社. 清水幾太郎(1972),『本はどう読むか』,講談社.