「1枚の紙とマジック」だけで4割効率アップ! 脳の仕組みを生かしたタスク管理術。

タイムマネジメントはビジネスパーソンに欠かせません。しかし、そのために複雑な手帳やアプリケーションを使うのは、「むしろ手間がかかる」あるいは「苦手だ」という方もいるでしょう。そこでおすすめしたいのが、1枚の紙とマジックだけでつくる「今日のやることリスト」。自分の仕事効率に満足していないのであれば、4割ぐらいは効率アップできるはずですよ。そのコツと理由を説明します。

“やることリスト”はなぜ必要か?

世間には、「ToDoリスト(やることリスト)は必要ない」という声もあります。そう語られる理由のひとつは、結局すぐできることは先に取りかかり、長く時間がかかりそうな仕事は終わらないままにしがちだから。アメリカの企業iDoneThisの調査によると、ToDoリストの41%は未完に終わるそう。

では結局、仕事の効率アップに“やることリスト”は必要なのでしょうか、それとも不要なのでしょうか?

その答えは、もちろん前者の「必要」です。なぜならば、書き出すことでワーキングメモリを節約できるから。PCで例えるなら、私たちの脳にある長期記憶は「HDD(ハードディスク)」、脳のワーキングメモリは「RAM(メモリ)」、“やることリスト”はSDカードやUSBメモリといった「外部メモリ」のようなものなのです。

ワーキングメモリとは?

PCで重いアプリケーションを複数立ち上げていたり、たくさんのWEBサイトを閲覧しながら作業していたりすると、RAM(メモリ・作業領域)が不足してPCの動作が遅くなりますよね。このような状態は、脳にも起こります。つまり、ワーキングメモリは、人間の脳の作業領域なのです。情報を一時的に保ちながら処理する能力で、作業記憶、作動記憶とも呼ばれています。

したがって、脳のワーキングメモリを最大限に活用すれば、仕事の精度も効率も上げられるはず。

ところが、このワーキングメモリは容量がとても小さいそう。だからこそ、ワーキングメモリの節約が必要です。では、なぜ“やることリスト”でワーキングメモリを節約できるのでしょう。

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忘れるためにメモをとる

小川晋平氏と俣野成敏氏共著の『一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?~仕事力を常に120%引き出す自己管理~ 』には、“大事ではないこと”“仕事ではないこと”にワーキングメモリを使うのはもったいないと書かれています。その理由は先述のとおり、脳の作業領域=ワーキングメモリの空き容量を十分にし、最大限に利用できれば、仕事の処理速度や精度を上げられるから。

そこで同氏らは、脳をフル回転させるために「メモに残すこと」をすすめており、メモの目的は覚えるためではなく、「忘れるため」だと説明しています。

それが、大事な仕事の一覧である“やることリスト”と、どう重なるかというと……、例えば、“今日のやることリスト”を書き出さずに仕事をする場合、いまの課題が終わったあとに行うことを、意識せずとも常に頭の中に留めておく必要があります。しかも、ひと区切りつく度に、「これとこれを終えたから、次はあの仕事にとりかかったほうがいいな」と、毎回やることの1~10まで頭をめぐらせなければいけません。

しかし、“今日のやることリスト”があれば、いったん頭から切り離した「やること」を一目で想起できるので、そのぶんワーキングメモリを節約し、空き容量を増やせるのです。それに、頭の中にあることをすべて文字に書き出してしまえば、頭がクリアになると医師能力開発コンサルタントの森田敏宏氏も話しています。

なおかつ、それに時間を書き入れておけばタイムマネジメントができ、「締め切り効果」も効率アップに一役買ってくれます。

時間を書くだけで生まれる「締め切り効果」

人間には締め切り間際になると高揚する心理がありますが、これによって生まれる効果を心理学では「締め切り効果」といいます。「この仕事は何時までにに終わらせる」と区切りをつけたほうが、つけないよりも集中力が高まるのです。したがって、“やることリスト”と1日の仕事スケジュールを組み合わせ、その横に「開始」と「終わり」の時間を書くだけで、その効果が生まれます。

ただし、“やることリスト”に時間をかけるのは本末転倒。時間がかからないシンプルなものにしましょう。

1枚の紙とマジックだけでつくる“やることリスト”

そこで、おすすめするのが「1枚の紙とマジック」だけでつくる“今日のやることリスト”。紙は何でも、マジックの色もお好みで。ちなみに筆者はA6サイズのメモ帳か、B5サイズのコピー用紙を1枚と、赤い細マジックで、毎朝シンプルな“やることリスト”をつくります。例えば次のとおり。

事務書類作成 9:00~9:30 情報収集9:30~10:00 執筆(メディアA) 10:00~11:30 休憩 11:30~12:00 情報収集(メディアB) 12:00~12:30 執筆(メディアB) 12:30~15:30 編集(メディアB) 15:30~16:30 情報収集 (メディアB)16:30~17:00 休憩 17:00~17:30 チャット打ち合わせと納品(メディアA) 17:30~18:00

そして、終わったものから豪快に赤ペンで線を引き消していきます。このときの達成感もあなどれませんよ。気分がよく頭も切り替えられ、数分間休憩するいいタイミングにもなります。手書きだからこそ強く実感できるでしょう。また、面白いことに書く紙の大きさに制限があるので、不要なことを排除しやすくなります

もちろん時間通りに終えられないものもありますが、その場合は別に長期リストを用意しておき、そこに放り込んで(メモ書きして)おけばいいのです。そして、それを、また翌日の“やることリスト”に加えるだけです。これにより、筆者の場合は8時間かかっていた仕事を4時間半~5時間に縮められました。冒頭で「4割ぐらいは効率アップできるはず」と書いたのはこのためです。

1枚の紙とマジックだけで効率アップできる理由

以上のことをまとめると、「1枚の紙とマジック」だけで効率アップできる理由は以下のとおり。

1.脳のワーキングメモリを節約できるから 2.やることを書き出せば脳がクリアになるから 3.時間も書き込めば「締め切り効果」が生まれるから 4.タスクごとに頭を切り替えやすいから 5.不要なことを排除しやすいから

*** 1日の業務が終わるとき、全てのリストが線で消された1枚の紙を捨てることで、「あー終わった」と、今度は仕事からプライベートへとスムーズに頭を切り替えられますよ。 よろしければ、ぜひお試しくださいね!

(参考) 小川 晋平著,俣野成敏著(2015),『一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?~仕事力を常に120%引き出す自己管理』,クロスメディア・パブリッシング. 日本経済新聞|成功者は「ToDoリスト」を使わない  Wikipedia|ワーキングメモリ プレジデントオンライン|締め切り直前に脅威の集中力が出るワケ

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