「何を言っているのかわからない人」にならないための “ロジカルな伝え方” 2パターン。

面接で将来やりたいことを聞かれたとき。上司に業務改善案を提案するとき。プレゼンで企画の趣旨を説明するとき。話の内容をロジカルに伝えることが難しいと感じることはありませんか? 自分の頭の中だけで考えるのとは違い、誰かにわかりやすく説明するのは苦手だと感じる方がいらっしゃるのではないかと思います。

「何言ってるのか分からない人」にならないための、知的な話し方4つのきほん』でも紹介されていたように、話が分かりにくくなってしまうのは、関係ない話を次々してしまうから。仕事では友だちとの雑談とは違い、必要な要素を順序立てて話す必要があります。

そこで今回は、話を正確にわかりやすく伝えるための「話の構成の仕方」をお伝えします。

「帰納」的な話し方とは?

話を構成する基礎的な方法に、「帰納法」「演繹法」があります。これから紹介するこの2つの方法を意識すれば、関係ない話を乱雑にしてしまうことがなくなり、話が整理されるはずです。まずは、帰納法について説明しましょう。

コトバンクによると、帰納法とは以下のような意味です。

類似の事例をもとにして、一般的法則や原理を導き出す推論法のこと (中略) 例えば、次のような推論が帰納法に当てはまる。 (a)このカラスは黒い(事例1) (b)そのカラスも黒い(事例2) (c)あのカラスも黒い(事例3) (d)ゆえに、カラスは黒い(法則)

(引用元:コトバンク|帰納法)※太字、下線、改行は引用にあたり筆者にて施した

このように、現実の様々な出来事や事例に共通することをまとめて結論につなげるのが、帰納法のやり方です。

例えばもしあなたが、顧客である取引先に、自社が新たに発売した洗濯洗剤Xの魅力を伝えるために帰納法を使うとしたら、次のようになります。

このたび弊社は新しい洗濯洗剤Xを発売しました。この洗剤Xを使って日常の衣類やタオルを洗濯し、部屋干しすると、 弊社の従来品である洗剤Aを使って洗濯した場合に比べ、2時間はやく洗濯物が乾きます。(事例1) 他社の洗剤Bを使って洗濯した場合に比べ、2時間半はやく洗濯物が乾きます。(事例2) 他社の洗剤Cを使って洗濯した場合に比べ、3時間はやく洗濯物が乾きます。(事例3) よって、弊社の洗剤Xは、今までの洗剤よりも部屋干しに最も適した、大変便利な商品です。(結論)

帰納法を使うと、とてもシンプルで分かりやすい構造が出来上がる、ということがお分かりいただけたと思います。この帰納法については、以下のメリット・デメリットがあることを頭に入れておきましょう。『コクヨのコミュニケーション仕事術』などの著書を持つ下地寛也氏が次のように解説しています。

帰納法のメリットは、複数の理由を併記するので、理由が1つ欠けても結論が成立することです。欠点は、結論があくまでも複数の事実から導き出した推測になってしまうので、正確に表現すると「〜ようだ(中略)」という言い方になってしまうことです。

(引用元:MANA-Biz|これさえ覚えれば誰でも論理的に話ができる!

先ほどの例で言えば、たとえ事例3が欠けたとしても結論自体に変わりはありません。ただ、事例1~3以外の事例には触れていないので、もし洗剤Xを上回る速さで洗濯物が乾く洗剤が登場したら、結論はひっくり返されてしまいます。ですから、事例1~3だけを使っている段階での結論は、正確には「今までの洗剤よりも部屋干しに適しているようだ」となるのです。用いる事例に偏りがあると、結論もずれてしまう可能性があることに注意してください。

「演繹」的な話し方とは?

次に、帰納法の対義語である演繹法について説明しましょう。

コトバンクによると、演繹法とは以下のような意味です。

前提となる事柄をもとに、そこから確実に言える結論を導き出す推論法のこと (中略) 例えば、次のような推論が演繹法に当てはまる。 (a)『竜馬がゆく』の著者は『坂の上の雲』の著者と同一人物である(前提1) (b)『坂の上の雲』の著者は司馬遼太郎である(前提2) (c)ゆえに、『竜馬がゆく』の著者は司馬遼太郎である(結論)

(引用元:コトバンク|演繹法)※太字、下線、改行は引用にあたり筆者にて施した

このように演繹法では、事例だけを複数集めるのではなく、事例に一般論や普遍的な事実(前提)を組み合わせながら、結論をまとめあげていきます。また演繹法は三段論法とも呼ばれ、「AだからB」→「BはCである」→(ゆえに)「AもCである」と話を進めることができる、というのも分かりやすい特徴です。

例えば、あなたが仕事でミスをして取引先に重大な迷惑をかけてしまったので、そのお詫びのための取引先への訪問を、上司のAさんにも一緒にしてもらいたいと考えているとしましょう。このことをAさんに対して演繹法を使って話すとしたら、次のようになります。

私は、P社からの商品受注数を間違えてしまい、P社に大変大きな迷惑をかけてしまいました。(事実) 社員が起こした重大なミスについて、上層部の人が謝罪に行くのは当然必要なことだと思います。(一般論) よって、私がミスしてしまったことについてお詫びするために、大変申し訳ありませんがAさんも一緒にP社に行っていただけないでしょうか。(結論)

下地氏によると、演繹法にも注意点があります。

演繹法は、帰納法と違い理由が1つ欠けると成立しません。ですが、起こった「事実」と「ルール」に間違いなければ、はっきりとした結論を導き出すことができます。

(引用元:同上)

これはつまり、起こった事実とルールに関して間違いがあったり、相手との認識のずれがあったりしたら、間違えた結論を導いてしまう可能性があるということ。例えば上の話では、Aさんが「社員がミスしたからといっていちいち上長が表に出る必要はない」と認識していた場合、結論が間違ったものとして相手に伝わってしまう可能性があります。ひとつひとつの要素の中身には、よく気を付けたほうがよさそうですね。

ビジネスに最適! 帰納法と演繹法の使い分け方

ではビジネスシーンでは、帰納法と演繹法をどのように使いこなせばいいのでしょう? 前出の下地氏は、ビジネスでは帰納法の方がシンプルでわかりやすいのでおすすめだと言います。一般論やルールを持ち出す演繹法は、どうしても理屈っぽく聞こえてしまうのだとか。確かに、演繹的な話し方に極端に偏ると「頭が固い」と思われてしまいそうですよね。

そこでビジネスシーンでは、帰納法を基本にしつつ、場面に従って演繹法も使いながら話をしてみましょう。リクナビNEXTジャーナルの解説によると、

一般的に帰納法は調査による統計などを使用する場合に適しており、演繹法はアイディアが正しいことを証明するときに効果的といえます。

(引用元:リクナビNEXTジャーナル|帰納法、演繹法【今更聞けない問題解決のための推論】

とのこと。新たな企画を提案したいときや、自己アピールをしたいときなど、自分のアイディアには魅力があることを主張したいときには、演繹法が向いているのですね。

例えば、今期の自分の営業実績をもとに「来期営業チームAのチーフに昇格したい」ということを上司にアピールする場合には以下のように話してみましょう。(もちろん実際には、売上実績の数字だけで昇格が決まるわけではないと思いますが)事実と一般論を組み合わせると、より説得力が増すはずですよ。

社内の営業チーフの平均的な売上実績は、Xです。(事実) 私は今期までの3期連続で、Xを上回るYの売上を達成しました。(事実) チーフたる人物には、エース級の売上実績を達成していることが当然求められます。(一般論) ですので、ぜひ、私を来期の営業チームAのチーフとして、人事部へ推薦していただけないでしょうか。(結論)

*** わかりやすく伝えるのが苦手な方は、帰納法と演繹法の2つを、状況に合わせて組み合わせながら話をしてみてください。きっとあなたのコミュニケーション能力を上げることができるでしょう。

(参考) MANA-Biz|これさえ覚えれば誰でも論理的に話ができる! リクナビNEXTジャーナル|帰納法、演繹法【今更聞けない問題解決のための推論】 コトバンク|帰納法 コトバンク|演繹法 StudyHacker|「何言ってるのか分からない人」にならないための、知的な話し方4つのきほん

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