熟練のマジシャンが魅せるマジックのタネを見破るのは、容易なことではありませんよね。しかし、同じようなマジックを見たことがあり、タネを知っていれば、見破る難易度は一気に下がります。現実に起こることも同じで、手法さえ知っておけば、ひっかけ問題にせよ、悪質な詐欺にせよ、看破することができます。

そういうわけで、今回は、マジシャンの手法をもとに、騙されないためにはどうすればいいかを考えていきたいと思います。

情報量が多い時には気を付けよう

トランプのマジックでよく使われる手法の一つに、特殊なシャッフル法やカット法を行うことがあります。この特殊なシャッフル法とかカット法というのは、観客から見ると、カードを混ぜるために行っているように見えるのですが、その実、マジシャンがカードを上手いこと動かしているのです。

どうしてこのタネを見抜くことができないかというと、一つの理由として、情報量の多さが問題になっていると考えられます。もしカードが3枚程度だったならば、超高速でシャッフルされない限り、追うことができるでしょう。トランプの数が多すぎて情報量が多いからこそ、うまく追うことができないのです。

実際の問題でも、このようなことが起こります。次の実験を見てください。

4つの中古車のうち、1つを被験者に選んでもらうという実験が行われました。4つの中には、客観的に見て明らかにお買い得な車が1つあります。最初、被験者たちには、車の情報として最低限のものを与えました。すると半数以上の人はお買い得な車を選びました。次に、もっと事細かな車の情報を与えてみると、お買い得な車を選べた被験者は4分の1未満となってしまったそうです。

このように、人間はあまりに情報量が多いと、合理的に判断が下せなくなってしまう可能性が高まるのです。つまり、騙される確率が上がってしまうということ。情報量が無駄に多い契約書やハンドアウトを見るときには、十分に注意が必要です。

トランプのマジックのタネを看破できないほかの理由としては、シャッフルやカットが速すぎるということが挙げられます。現実でも、早口で捲し立てられたり、契約書を読む時間が少なくなってしまうと、見落とし、聞き落としが生じ、だまされてしまう可能性があります。

マジックには、サーストンの3原則と呼ばれるものがあります。その中に、

同じマジックを繰り返してはならない

(引用元:セオマジック|サーストンの三原則について

というものがあります。なんども繰り返してしまうと、タネがバレてしまう可能性があるからです。この原則を逆手にとって考えれば、何度も見れば見抜ける確率が上がるということ。そういうわけなので、重要な契約や話し合いの時には、相手に申し訳ないと思わず、時間を要求したり、何度も繰り返し話してもらうよう相手に頼んだりするべきでしょう。

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ミスディレクションに気を付けよう

マジックで使われる手法の一つに、ミスディレクションというものがあります。これは、相手の目線や心理をマジックのタネから遠ざけて、騙す方法です。

ミスディレクションの例として挙げられるのは、「UFOがいる」などといって窓の外を指し、人々の目線をどこかへ向けさせるといった方法。多くの人が経験したことがあるかもしれませんね。

心理的なミスディレクションとしては、次のようなものがあります。

マジシャンはマグカップを持っている。手に持ったコインをマグカップに向かって投げ下ろし、同時に”チャリン”という音が聞こえた。また、投げ込んだ後のマジシャンの手は空に見えた。

(引用元:奇術の詩の子供たち|ミスディレクション:観客の注意を逸らすマジックの基本テクニック

このような場合、直接的にコインがマグカップの中に入ったことを見ていないにもかかわらず、

手から投げ下ろせばコインは落ちる。
マグカップにコインが入れば音がする。

(引用元:同上)

といった常識から、間違えた認識をしてしまうのです。

しかも、人間の記憶というのは存外ずさんなものなので、このようなミスディレクションがうまく決まると、後から、「マグカップの中にコインが入るところを直接見ました」と言ってしまう人もいるのだとか。

直接自分が見たり確かめたりしたもの以外は、特に重要な局面においては、少なくとも半信半疑くらいでいた方がよさそうです。直接確かめることが困難な時でも、信頼できる複数の人から聞いて確信を得るべきでしょう。また、先ほども述べたように、自分の記憶すら、たまに嘘があります。時には自分の記憶を疑ってみる必要もありそうですね。

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仕事で大事な契約を結ぶとき。自分の進路やキャリア、今後のビジネスを左右しそうな、重要な局面に立ち向かうとき。大金が絡むことや、膨大な時間を要するようなことなど、人生に大きく影響を与えるようなことをするとき。

こんな時は、相手の善意を信じることも大切ではありますが、様々な手法で騙されている可能性があるということを心に留め、十分に確認し、慎重に検討するようにしましょう。

(参考)
WIRED|「無意識」という最高の判断力:心理学実験
奇術の詩の子供たち|ミスディレクション:観客の注意を逸らすマジックの基本テクニック
セオマジック|サーストンの三原則について