イギリスの新たな研究で、緑豊かな自然が子供の脳の「視空間性ワーキングメモリ」にいい影響を及ぼすと分かりました。もちろん大人においても、以前のさまざまな研究で多大な効果が示されています。新しい研究は、自然のさらなる可能性を期待させるものといえるでしょう。日々忙しく働くビジネスパーソンが、より多く自然と接する方法とともにご紹介します。

自然が視空間性ワーキングメモリにいい影響

英ロンドン大学・Eirini Flouri博士らの教育心理学研究によると、緑豊かな都市近郊に住む子供たちは、よりよい視空間性ワーキングメモリを持っているそうです。

この研究は、イギリスの都市部に住む11歳の少女4,758人を対象に行われました。その結果、貧困地域である・なしにかかわらず、緑の多い場所に住む子供たちは、視空間性ワーキングメモリがよい状態であることが分かったそうです。一方、近隣に緑地が少ない地域に住む子供たちは、視空間性ワーキングメモリが不十分であったとのこと。

(※測定は「ケンブリッジ自動神経心理学的検査バッテリーの視空間性ワーキングメモリタスク」を使用。この研究は2018年9月5日にBritish Journal of Educational Psychologyにて公開されました)

10年以上のブランクから56日でTOEIC920点! パーソナルトレーナーと走り抜けた英語学習の "最短距離"
人気記事

視空間性ワーキングメモリとは

ちなみに、作業記憶とも呼ばれるワーキングメモリ は前頭葉を中心とした脳の働きのこと。短い時間に情報を保持し、同時に処理することを可能にしてくれます。これには、「言語性ワーキングメモリ」と「視空間性ワーキングメモリ」の2種類があります。

前項の研究で特徴を見せた後者の「視空間性ワーキングメモリ」は、自分の環境および空間的な情報を記録する役割があり、注意制御(注意すべきものに集中すること)と強く関係しています。Eirini Flouri博士によれば、子供の学業成績、特に数学的な成果にかかわる重要な認知能力とのこと。

自然は健康・成績・犯罪にまで影響

自然の影響力は、大人を対象にした以前の研究でも示されています。

英グラスゴー大学の疫学者Richard Mitchell氏が大規模な調査を行ったところ、公園などの緑地近くに住む人々は、死亡率や病気の発症率が低いと分かったそうです。公園によく訪れるといった、実際の利用頻度に“かかわらず”出た結果とのこと。

また、自然な景色を眺められる環境は、学校における成績をよくし、病院における病気の回復を早め、なおかつ犯罪が多い地域では暴力行為も減らす傾向があるのだとか。

人類の進化は長いあいだ自然の中で行われたので、自然に囲まれていると体がリラックスするそう。研究者らは、あらゆる自然効果の要因がストレスの軽減だと考えています

千葉大学環境健康フィールド科学センター・宮崎良文教授率いる研究チームが、森を散策してもらった被験者グループを調べたところ、ストレスホルモンのコルチゾール、血圧、心拍数が低下していたそうです。

忙しいビジネスパーソンがより多く自然と接するには

これまでのことを踏まえると、仕事効率を上げたいと考えるなら利便性だけではなく、緑あふれる公園など自然な環境が近い地域に居住することが賢明です

しかし、希望の場所に住むのはなかなか難しいもの。また、緑の少ない環境で暮らしていて、当面は引っ越す予定がない、自然が多い遠方へと出向く時間や気力がない……、という方も少なくないでしょう。

ならば、屋上緑化スペースをぜひ活用してみてください。美しさ、ヒートアイランド現象の緩和、低炭素化等の観点から、国土交通省を中心に全国で屋上緑化の取り組みが進められています。東京都心部にも、

・KITTEガーデン(JR東京駅丸の内南口前)
・おもはらの森(東急プラザ表参道原宿の6階)
・エビスグリーンガーデン(アトレ恵比寿屋上)
・Q-COURT(新宿丸井屋上庭園)
・食と緑の空中庭園(西武池袋本店9階屋上)
・目黒天空庭園(首都高速道路の大橋ジャンクションの屋上)

といった緑豊かな場所があります。

また、自然の緑をコンセプトとするカフェも多くあるので、「自然 緑 カフェ 〇〇〇(地域)」とインターネットで検索してみてください。よさそうなところがあれば、ちょっとした合間に訪れてみてはいかがでしょう。

天然芝のマットを敷き詰めて、ご自宅のベランダを緑化することもできます。暑い季節の気温対策にもなるはずですよ。

急ぎの仕事はワーキングメモリ泣かせ?

緑豊かな自然環境を確保しても、ワーキングメモリの働きを悪くしてしまう要因があります。ひとつは睡眠不足。そして、もうひとつは時間に余裕がない状態です。たとえば「あと10分で決めてくれたら値下げしますよ」といわれると合理的な判断ができないのは、急かされるとワーキングメモリがうまく働かなくなるからなのだとか。

つまり、ワーキングメモリをしっかりと働かせるには、次の3つを守ることが大切だということです。

・睡眠をしっかりとる
・時間の余裕をもって行動
・できる限り緑豊かな環境に身を置く

***
最新の研究と、ワーキングメモリの働きをよくする方法をご紹介しました。緑豊かな自然と余裕のあるスケジュールで、心地よくバリバリお仕事してくださいね!

(参考)
Wiley News Room – Press Releases, News, Events & Media|Greener Neighborhoods May Be Good for Children’s Brains
Wiley Online Library|The role of neighbourhood greenspace in children’s spatial working memory – Flouri – – British Journal of Educational Psychology
児童・生徒のワーキングメモリと学習支援(広島大学)|「ワーキングメモリ」とは
ナショナルジオグラフィック日本版サイト|自然に癒やされる
東洋経済オンライン|チームの業績を引き上げる、2つの秘策とは?
国土交通省|公園とみどり:屋上緑化・壁面緑化推進の取組
キナリノ|喧騒を逃れて、緑豊かなオアシスへ。東京都内にある「屋上庭園」6選
遠藤香織(2013),「言語性ワーキングメモリ課題遂行における個人差に関する実験的研究」,博士論文,大阪大学.