「どうせ私は数学の才能がないからこれ以上勉強しても無駄だ。」こう思った経験のある方はいませんか?
受験勉強で数学が苦手だ、という人は多いと思います。数学が苦手な人から見れば数学が得意な人は「天才」に見えてしまうことさえあるでしょう。 もちろん数学が「天才」レベルにできる人はいると思いますが、ノーベル賞レベルや一生数学で食べていくほどの研究を残せるかどうかならともかく、高校レベルの数学に関していえば、実は数学の得意不得意に才能は大きく影響しないのです。それでは一体何の差なのでしょうか?
数学ができる人とできない人の差はどこから?
アメリカで数学を何年にもわたり教えてきたMiles Kiball氏とNoah Smith氏の経験では、数学が苦手な子供と得意な子供の差が生じる最初のキッカケは以下のような段階を踏んでいるそうです。
実は学校に入学した時点ですでに子供たちの数学の力は完全に同じではなく、差があります。 その理由は幼いころに両親から数学に関する知識や経験を与えられている子供もいれば、 一方では数学に関する知識や経験がほとんどないまま学校に入学する子供もいるからです。
小学校入学時をイメージしてみてください。本来は数字の概念を習うところから始まる小学校の算数ですが、実は中には足し算引き算、あるいは九九までも知っている子供がいます。その結果、当然ながら学校に入って最初の数学のテストでは、背景知識を持っている子供たちのほうが背景知識を持たない子供たちよりもいい点をとります。そして、算数に関する背景知識を持たないまま学校に入学した子供たちは100点を取るクラスの子たちを見て、
「あの人たちには算数の才能があるんだ。でも私は100点なんか取れない=才能がないから算数が苦手なんだ。」
と「誤解」してしまいます。 それと同じように、たまたま最初にちょっと多くの知識を習得していたに過ぎない子供は点数が良かったことにより、「私は算数が得意なのだ!」と思い込みます。テストの点数だけを考えれば、確かにその子は良い点数をとっているし、その後も数回は家庭学習の貯金のお陰で、楽に良い点数を取れるでしょう。しかしそれは入学前の数学に関する予備知識の差であって、算数脳/数学脳の差ではないのです。これは算数を数学に当てはめたら、そのまま中学校で起きているのです。
「誤解」を抱いたままその差は広がっていく
しかしこうした誤解を抱いたまま成長していけば、数学が不得意と感じる人は数学の勉強に関して努力を怠るようになってしまいます。一方初期に点数を取れた人たちは、単に自分には予備知識があっただけ、ということに気づかずに、「自分には数学の才能がある」と思いこむようになります。その結果、「好きな教科」と認識し、どんどん勉強をしていくでしょう。 こうして数学が得意な人と不得意な人はお互いに「誤解」し合い、差はますます広がっていくのです。
「数学ができない」という誤解を解くには?
では、数学ができないという誤解や数学への苦手意識を解消するにはどうすればよいのでしょうか。数学が苦手な人は、「数学が苦手だから数学の勉強をしたくない」と思ってしまい、その結果もっと苦手になってしまう、という負のサイクルに陥っていることが多いと思います。この負のサイクルを断ち切るためには、まず、簡単な内容かつ薄めの問題集を買って解いてみるのは非常におすすめです。
自分にとって簡単な内容であれば問題集を解き進めるスピードもあがりますし、薄い問題集はすぐに一周できてしまいます。そうすれば苦手な科目でも「成功体験」を生み出すことができますよね。問題を解ける喜びを体感することで「私にも数学ができるんだ」と実感してください。こうして負のサイクルをまずは正のサイクルへと転換してみてはどうでしょうか? 「数学は才能ではない」のだから、必ずあなたにもできるはずです。
*** いかがでしたか。 今回は数学の才能の話をしましたが、これを他の教科や、あるいは仕事の様々なスキルに置き換えてみても、同じように当てはまることが多いと思います。 大切なのは「自分はこれが得意なんだ」という初期の思い込み。既に苦手意識を持ってしまっているものでれば、一番簡単なところで成功体験を積み重ねることにより、少しずつ苦手意識が和らいでいくはず。ぜひこの思考を試してみて下さい。
<参考> The Atlantic "The Myth of 'I'm Bad at Math'" Direct communication コミュニケーションは心から⑦~会話が上手くなる思い込みの力~ Self Training Cafe 思い込みの威力