やらなくてはいけない、と分かっているのになかなかやる気が出ないということ。誰にでもありますよね。やる気が出ないのは自分が怠け者だから? 気合いが足りないから? いえ、実はそうではないのです。やらなければならないと分かっているのにどうしても腰が上がらない理由を、心理学的見地から探っていきます。
やる気が出るには?
私たちが何かをするとき、またはやらなくてはならないときには、何らかの動機付けがなされています。動機づけとは心理学用語で以下の意味を持ちます。
生活体に行動を起こさせ、目標に向かわせる心理的な過程をいう。内的要因と外的要因の相互作用で成立する。モチベーション
出典:goo国語辞典
この動機づけには、内発的動機付けと外発的動機付けの二種類があります。前者は純粋に自分自身の楽しみや興味などによるもので、行動そのものが目的となります。一方後者は、報酬を求めたり罰や恥を避けようとして行動する時のもので、その行動はあくまで手段です。 心理学の実験では、外部の要因が大きな誘発剤となる外発的動機づけに比べ、前者の内発的動機付けされた時の方がよりやる気が出ることがわかっています。それでは次に、この二つを詳しく見ていきます。
外発的動機づけってどんなもの?
外発的動機づけの例を3つ挙げます。 1.「今月のノルマを達成しなければ怒られるから」というような罰や報酬によって完全に「やらされている」ものです。これが一番やる気が出づらいものです。 2.「これくらいできないと同僚に笑われるから」のような恥を回避するためのものです。これは2番目にやる気が出にくいものです。 3.「自分のためになるから」というような、行動が個人的にも重要であると認識しているものです。これは一見内発的動機に見えるかもしれませんが、行動そのものが目的とはなっていないのでやはり外発的なものなのです。これは3つの外発的動機付けの中では一番やる気が出るものです。
いかがでしょうか。上からやる気が出ない順に並んでいますが、思わず頷いた人もいるのではないでしょうか。心理学的には、こういった動機で行っていればやる気が出づらいと考えられています。
内発的動機づけを促進するには?
それではどうすれば内発的動機付けが促進されるのでしょうか。それには3つの欲求を満たすことが必要です。その3つとは 1.コンピテンス(有能感)欲求 2.自立性欲求 3.関係性欲求 です。
1の欲求は、自分の働きを言葉によって褒めてもらうことで満たすことができます。しかし、「誰も自分のことばど褒めてくれない」という人も大丈夫。そんな時には自分で自分を褒めてあげましょう。少し寂しいかもしれませんが、これにも同様に有能感を満たす効果があることがわかっています。 2の欲求は、行動を自分自身で決定していると思うことで満たすことができます。人間は他人やお金にコントロールされていると感じるとやる気が削がれます。常に、その行動は自分で決めたことだと感じることが重要です。 3の欲求は、親しい人間が存在すると満たされます。自分の事を気にかけてくれる人がいる、仲間がいる、認めてくれる人がいると感じることにより、内発的動機付けが促進されます。 上に挙げた三つの欲求が満たされれば満たされるほど、内発的動機付けは高まります。
*** いかがでしたか。やる気が出なかったとしても、それがあなたの性格やだらしなさではない、ということが理解頂けたのではないでしょうか。もし今あなたがやる気が出なくて悩んでいたら、次のことを考えてみてください。誰かにやれと言われたことばかりやっていませんか? 恥をかくことや罰を受けることばかりに気が行ってませんか? 思い当たることがあれば、行動自体に何かしらの意味を見出すようにしてやり終えた時にはしっかりと自分自身を褒めてあげてくださいね。
参考文献 岡市廣成・鈴木直人監修 青山謙二郎・神山貴弥・武藤祟・畑敏道編(2014),『心理学概論 第2版』, ナカニシヤ出版,157-162. goo国語辞典|「どうき‐づけ【動機付け】」