以前、洋書を何冊かご紹介しましたが、洋書に限らず、読書というものにはたくさんの恩恵があります。 手軽に手にとって楽しむことができるのはやはり小説ですね。今回はそんな小説の中でも、特にミステリーに絞って個人的なオススメを5作品、ご紹介したいと思います。
個人的オススメ!ミステリー編
『火車』
著者:宮部 みゆき
20年近く前の作品だけれど、未だに現在の問題に通ずる作品です。 「多重債務」をテーマに、お金って怖いなぁ、人間って怖いなぁと思わせてくれます。 ちょっと長いけれど、1ページも、いや1文字も無駄が無い文章で綴られています。 社会問題を提起している一方で、エンターテイメントとしても最高峰の面白さです。 ラストシーンまで休憩無しでノンストップで読みたくなります。 僕が読んだ宮部みゆきさんの作品の中で順位を付けるとしたら、間違いなく1位の小説です。
『ゴールデンスランバー』
著者:伊坂 幸太郎
『火車』と比べてエンターテイメント色が強くなっている気もするけれど、これはこれで政府を始めとする「権力」が持つ問題について提起しているような気もする。 ……そんなまどろっこしいことはどうでもよく、とにかく面白いです。 エンターテイメント性で溢れています。 最初から最後までの疾走感がすごく、主人公と同じようにまるで何かに追われているように感じながら読めます。 個人的に、「痴漢は死ね」のくだりに感動しました。
『占星術殺人事件』
著者:島田 荘司
言わずとしれた、ミステリー界の重鎮、島田荘司さんの大作です。 名探偵・御手洗潔シリーズの第一作です。 これ、本当にすごいです。もはやすごいとしか言いようがありません。 この事件のトリックは現存する小説で唯一であるため、映像化を許可していないだとか。 いずれにせよ、処女作とは思えないほど完成度が高く、否応無しに作品に引き込まれます。 長くはありますが、一読の価値有りです。
『葉桜の季節に君を想うということ』
著者:歌野 晶午
いわゆる「叙述トリック」が使われています。 最後にどんでん返しがくるやつですね。 叙述トリックが使われている作品は、確かに最後は「おぉ!」となるけれど、そこにもっていくまでが冗長だし何よりあまりおもしろくないものが多いです。 しかし、この作品は叙述トリックでない部分、すなわちあらすじ通りの謎の解決部分もおもしろいです。これは叙述トリックなしでも十二分に楽しめる小説だと思います。
これからの人生を生きていくのが楽しみになるところもよかったです。 ちなみに、前述の島田荘司さんがペンネームを「晶午」と名付けました。
『儚い羊たちの祝宴』
著者:米澤 穂信
米澤穂信のミステリーのマスターピースです。 短編集ですが、全作品が緩やかに繋がっています。 叙述トリックかどうかは微妙ですが、全ての作品の最後の一行で持っていかれます。 一読しただけでは表面的な部分しか理解できないと思います。 2,3回読んで初めて「うわぁ……怖い!」と感じました。 読後のモヤモヤした気持ちというか、消化不良の感じがあるかもしれませんが、何度も読み返して、米澤穂信さんが本当に伝えたかったことを理解したとき、疑問は氷解して感動にかわります。僕の一押しの作品です。ぜひ、多くの人に読んでほしい作品です。
*** あくまで僕の個人的な好みですが、面白いミステリーを5作紹介しました。 秋の夜長に読書はぴったりだと思います。 受験生はあんまりハマりすぎてもよくありませんが(笑) 謎解きをしながら、続きが気になって眠れない夜を過ごしてくださいね。

