「やる気が出ない……」「上司に叱られたので、なんだか仕事に行きたくない……」そんな気持ちにとらわれてしまったら、オレキシン神経を活性化して、モチベーションを高めてみてはいかがでしょう。

オレキシンとは?

オレキシンは、眠りと目覚めをコントロールするといわれる、脳内の神経伝達物質のひとつです。1998年に筑波大学の柳沢正史教授が、櫻井武教授とともに米国で発見しました。オレキシン神経が活性化し、オレキシンが分泌されることによって「起きろ」という信号が発令され、私たちは覚醒します。

また、2009年には、自然科学研究機構・生理学研究所の箕越靖彦教授の研究グループが、オレキシンの分泌で筋肉の代謝が促進され、血糖の上がり過ぎを防止すると明らかにしています。

でも実は、それだけではないのです。オレキシンはモチベーションを高めることや、過剰な恐怖体験を和らげてくれることにも関与しています。

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オレキシンとドーパミン

柳沢正史教授とともにオレキシンの発見者であり、現在、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の教授として活躍する櫻井武氏は、「(あらゆる知見を総合すると)オレキシンが動物の覚醒レベルを高め、モチベーションを高くする作用を持っていることを示している」と、2003年に発表した論文において述べています。

でも、一般的にはモチベーションを高める神経伝達物質といったらドーパミンですよね。仕事や勉強にかかわらず、あらゆる行動を起こす際にも、私たちにはドーパミンが必要です。

しかし、報酬系と呼ばれるドーパミンは、何らかの行動によって脳が感動や喜びを覚えたときにも分泌し、快楽をもたらします。そのため、快楽への欲望が強くなるとドーパミンが過剰に分泌されるようになり、依存症になってしまう場合があるのです。そうなったら次第に快楽を得にくくなり、「もっともっと」という欲望だけが先走ってしまいます。

そうしたことから、「ドーパミンとモチベーションとの関係は単純ではなく、正にも負にも働く」と医学博士の大西睦子氏はいいます。

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オレキシンの効果

その点、オレキシン神経を活性化させる行動はドーパミンに比べると、かなりストイックです。なぜならば、オレキシンは規則正しく健康的な生活によって多く分泌されるから。負に傾く心配が少ないのです。

しかも最近、WPI-IIISの征矢晋吾助教、櫻井武教授らの研究グループは、オレキシンが恐怖を感じるレベルを制御していると明らかにしました。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などで見られる現象を、和らげると発見したのです。

それは、つまり、オレキシンは“やる気”を起こさせると同時に、仕事で負った軽い“トラウマ”などにも、良い効果をもたらしてくれる可能性があるということ……! では、さっそく、オレキシンを分泌させる方法をご紹介しましょう。

オレキシンを分泌させる方法

1.毎朝、同じ時間に起きる

オレキシンは規則正しい生活をすることで、しっかりと分泌されます。そのためにも、毎朝同じ時間に目覚めて朝日を浴び、体内リズムを整えましょう。

2.決まった時間に食事をする

規則正しく、決まった時間に食事をとることで、オレキシン神経が活性化されます。「その時間になったら、おいしい食事が味わえる……!」といった期待感が関与しています。

3.間食を頻繁にしない

空腹時にもオレキシン神経が活性化します。そのため、ダラダラ食べたり、頻繁に間食したりすることは、オレキシンの分泌量を減らすことに。食事時間を一定にして空腹時間をつくることは、高度な情報処理を行う脳の神経細胞を増やすことにもつながります。

4.よく噛んで、味わって食事をする

空腹で待ちに待った食事を、「おいしい、おいしい」と味わいながら、よく噛んで食べると味覚の刺激によってオレキシンの分泌が多くなります。脳の神経細胞も、しっかりと咀嚼することで増えますよ!

5.スポーツや趣味で気分を高める

自然科学研究機構・生理学研究所の箕越靖彦教授は、「オレキシンの分泌は強い動機を伴う行動において活発になる」と述べています。熱中しやすいスポーツや大好きな趣味で気分を高め、オレキシンを増やしましょう。

***
規則正しく生活し、おいしい3度のご飯をじっくり噛みしめ、好きなことに没頭してモチベーションを高めてくださいね!

(参考)
糖尿病ネットワーク|規則正しい生活が糖尿病を改善する オレキシンの働きで解明
自然科学研究機構 生理学研究所|「食事をよく味わいながら規則正しく摂ることは健康に良い」ことを証明―脳のホルモンオレキシン神経の活性化で筋肉の代謝が活発に―
自然科学研究機構 生理学研究所|第11回 肥満ホルモン「レプチン」と睡眠ホルモン「オレキシン」
Study Hacker|新たな神経細胞を育てよ。賢い大人でありつづけるための『神経新生』活性化のコツ
日経トレンディネット|“やる気”が起きない理由はドーパミン不足? オレキシン不足?
yomiDr.|睡眠障害の治療に期待…神経伝達物質「オレキシン」て何?
筑波大学|お知らせ・情報|注目の研究|過剰な恐怖を和らげるしくみ ~オレキシンによる新たな恐怖調節経路を発見、PTSD治療に光明~
桜井武(2003),『視床下部オレキシン産生神経の機能:エネルギーバランスに応じた適応行動の制御』,神経研究の進歩,筑波大学基礎医学系薬理学教室,Vol.47,No.3,pp. 425-431
長井敏弘著(2016),『医学で合格る勉強法』,すばる舎.