突然ですがみなさん、最近読んだ本を一冊思い浮かべ、その本の内容を具体的に説明してみてください。本を開いてはいけません。要点は何だったか、構成は……。どうですか? 思ったよりすらすらと出てこないのではないでしょうか。

せっかく時間をかけて本を読んでも、その内容を仕事に活かすどころか、書いてあったことを思い出すことさえできない。それではもったいないですよね。本で読んだ内容を、すらすら説明できるくらい身につけるには、どうしたらいいのでしょうか?

なぜ本の内容を思い出せないのか

そもそも、私たちはなぜ、本に書いてあったことをなかなか覚えられないのでしょう。その理由の一つは、読みっぱなしになっているから。読んだあとで何のアクションも起こさないことが、本の内容を思い出せない大きな原因なのです。

東京大学教授で脳研究者の池谷裕二教授は、どうすれば物事を忘れないかという問いにこう答えています。

忘れないためには「思い出す」訓練をすること。(中略)多くの人は「記憶」というと、詰め込むもの、覚えるもの、入力するものだと勘違いしています。しかし、記憶力は出力しないと鍛えられない。

(引用元:WEDGE Infinity|記憶力を鍛えるのは入力じゃなくて出力です

つまり、情報をいくら頭にインプット(入力)しても、その内容についてアウトプット(出力)しなければ、脳には記憶として定着しないのです。

池谷教授は、出力が記憶を定着させることを示した研究として、アメリカで行なわれた実験を挙げています。その実験では、ワシントン大学の学生を以下の4グループに分け、スワヒリ語40個を暗記させて、すべての単語を覚えられるまで確認テストを繰り返し行ないました。

1. 40個すべての復習と、40個の確認テストを繰り返すグループ。
2. 確認テストで間違った単語だけ復習し、40個の確認テストを繰り返すグループ。
3. 確認テストで間違った単語があったら40個すべてを復習し、間違った単語だけのテストを繰り返すグループ。
4. 確認テストで間違った単語のみを復習し、間違った単語だけのテストを繰り返すグループ。

実験によると、4つのグループはほぼ同じ速さで40個の単語を習得したのだそう。しかし、1週間後の再テストでは明らかな違いが出ました。1・2グループは約80点と高得点だったのに対し、3・4グループの得点は約35点。40個のテストを繰り返したグループのほうが、間違った単語だけのテストを繰り返したグループよりも、良い成績をあげたのです。つまり、復習(入力)を繰り返すよりも、テスト(出力)を繰り返すほうが、記憶の長期保存には有効だということ。

この結果から分かるように、記憶の鍵を握るのは、インプットではなくアウトプットです。読書にも同じことが言えます。本の内容を身につけるには、ただ読むだけでなく、読んだ情報を「使う」ことが重要なのです。ではどう使っていけばいいでしょうか。ここからは、読んだ本の内容が身につく「アウトプット読書術」を3つ紹介していきます。

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アウトプット読書術その1:意見を持つ

まず紹介するのは、本を読みながらできるアウトプット法。自分の意見を考えながら、本を読むというものです。

ベストセラー『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者・西岡壱誠氏は、偏差値35だった高校3年生の時、東大を受験するも玉砕。しかし浪人中に教科書や参考書の読み方を大きく変えたことで頭の使い方がガラリと変わり、見事東大合格を果たしました。西岡氏の本の読み方のキーワード、それは「能動的に読む」です。西岡氏は次のように語っています。

僕がまず変えたのは、教科書や参考書の読み方でした。どう変えたかというと、「能動的に読む」というものです。読書する際、本に書いていることだからと「へえ、そうなんだ」とそのまま受け入れてしまいがちですよね。でも、それでは「知識を活用する力」は育ちません。「これってどういうこと?」「これって本当かな?」と自分の頭で考え、さらにアウトプットするところまでやらないと、知識を活用するということはなかなかできるようにならないものなのです。

(引用元:STUDY HACKER|偏差値35から “読書で” 東大合格! 最強の『東大読書』の真髄を探る。

西岡氏は、「本の内容をそのまま受け入れてはいけない」、つまり「読者になってはいけない」と強調しています。代わりに勧めるのが、本の内容について、記者になったつもりで意見や疑問を持つこと。例えば文中に「ここは複数の説がありますが……」という箇所があったとします。そこを「そうなんだ」と流すのではなく、「なぜ諸説あるのか?」「他の説はどういったものか?」と追究して、読みを深めていくのです。

また西岡氏は、読みながら抱いた意見や疑問点は付箋に書き込んで本に貼り、読了後には感想をノートにまとめていると言います。

僕がおこなっているアウトプットは、「感想をノートにまとめる」というもの。僕の場合はマイテーマの複数の本を並行して読んでいるので、それらの感想をいっぺんにまとめることもあります。「この本にはこう書かれていた、こっちの本はこうだった、そして自分ではこう思う」ということをまとめています。そうすると、思考が整理され、理解と自分の考えをさらに深めることになるのです。

(引用元:STUDY HACKER|「身にならない読書」してませんか? 『“東大式” 選書法&読書法』で読書の質は劇的に上がる。

本の内容を深く理解できる「能動的な読書」。皆さんもぜひ実践してみてはいかがでしょう。

アウトプット読書術その2:人に伝える

本を読み終わった後にすべきアウトプットが、本について人に話すことです。冒頭でみなさんに試してもらいましたね。これを実践する時は、読了後数日中に行います。

『一瞬で人生が変わる!アウトプット速読法』の著者・小田全宏氏は、「何も見ないで、本の内容を5分間話す」ことを目標とすべきとしています。1分間なら簡単ですが、5分間となると本の内容をしっかり把握していないと話せませんよね。そこで、必要になるのが、「あとで人に話す」という意識を持って本を読み込むこと。人に伝えなければいけないという責任感を持って読むと、自ずと内容が頭に刻まれるのだとか。

また小田氏は、読んだ本の内容について話す前に「リーディング・マップ」を作ることを勧めています。本の内容をマインドマップや箇条書きなど好きな形式でまとめて、整理するのです。ただし、リーディング・マップを書く際は、本を見ながら書き写すのではためになりません。大切なのは読む段階で内容を頭にしっかり入れておくことなので、リーディング・マップはあくまでも話す準備のためのメモという位置づけ。もちろん実際に5分間話す時も、このリーディング・マップを見てはいけません。

論理立てて人に伝えるためには、内容を自分の頭で整理する必要があります。リーディング・マップを作ることは、知らないうちに読み飛ばしていた部分を押さえる機会にもなるでしょう。本の内容を、より正確・体系的に理解するのに役立ち、なおかつ確認テストがわりにもなります。

「リーディング・マップを書く」&「人に伝える」の“Wのアウトプット”が、本の理解に効くのです。

アウトプット読書術その3:実際に行動する

ビジネス書や自己啓発本などを読むことの最終目標は、いうまでもなく行動に移せること。本の内容をいくら理解し人に説明できても、それを自分で実践できなければ意味がありませんよね。

月20~30冊もの本を読み、多くのビジネス書も執筆している精神科医・樺沢紫苑氏は、自身の著書『読んだら忘れない読書術』で、読書の目的は「自己成長」であり、そのためには「行動の変化」が必要だと述べています。本の内容を仕事や生活に役立て、アウトプット(樺沢氏の場合は執筆)に直結させてこそ、読書による自己成長を果たしたことになるのです。

アウトプットとは、本の執筆をすることだけにとどまりません。企業に勤めるビジネスマンの方は、プレゼンテーションや企画提案などの機会があると思います。こういった場で、これまでの読書で得た知識や発見をアウトプットし、それが結果に結びつけば、その読書は本当にあなたの地となり肉となった、「本物の読書」だったといえるのです。

(引用元:樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.)

例えば、タイムマネジメント術についての本を読んだら、実際にその中で紹介されていた方法を日々のスケジュール管理で試してみる。著名人のエッセイを読んで感銘を受けたら、その人のマインドを行動や選択の参考にする。このように、「本を読んだら行動につなげる」ことを習慣化していってはいかがでしょう。

本によって考え方や行動が変わり、それが成果につながる。それこそが最も「本の内容が自分に身についた」と言える状態。“行動が最大のアウトプット”なのです。

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これまで「読書はインプット作業だ」と思っていた皆さん。今まで本の可能性を狭めていたかもしれませんよ。アウトプットを心がけて、最大限に本の内容が身につき、役立つ読書をしましょう!

(参考)
WEDGE Infinity|記憶力を鍛えるのは入力じゃなくて出力です
日経BP社|潜在“脳力”:【1】脳は「入力」より「出力」で覚える
STUDY HACKER|偏差値35から “読書で” 東大合格! 最強の『東大読書』の真髄を探る。
STUDY HACKER|「身にならない読書」してませんか? 『“東大式” 選書法&読書法』で読書の質は劇的に上がる。
SBCr Online|身になる! 仕事がはかどる! 本の内容を忘れない読書術の極意とは
樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.