ビジネスパーソンとして仕事をしていると、なにも全ての物事がうまくいくわけではありませんよね。数字の目標をなかなか達成できずに悩んだり、自分の企画が通らずに自己不信に陥ったり、理不尽な理由で上司に怒られてイライラしたり……。
こういったネガティブな感情が原因で目の前の仕事に集中できなくなってしまっては元も子もありませんし、ストレスとしてずっと放置していると、神経症やうつ病、統合失調症といった深刻な病気を招いてしまう危険性も高まってしまいます。
仕事の充実は、やはり心が整っていてこそ。そこで今回は、ネガティブな感情を解消する方法についてお伝えいたします。
ネガティブな感情が生まれる原因
悩み、不安、イライラ……。こういったネガティブな感情は、そもそもどのようにして生まれるのでしょうか。
医師の久賀谷亮氏はその原因について、自身の著書の中で以下のように述べています。
脳のすべての疲れやストレスは、過去や未来から生まれる。すでに終わったことを気に病んでいたり、これから起きることを不安に思っていたり、とにかく心がいまここにない。この状態が慢性化することで心が疲弊していく
(引用元:久賀谷亮 著 (2016),『世界のエリートがやっている 最高の休息法』, ダイヤモンド社.)
たとえば、まだ起こってもいない未来について「自分で発案したこの企画ははたして成功するだろうか」「次回の会議のプレゼンをうまくこなせるだろうか」と必要以上に不安がったり悩んだりしてはいないでしょうか。あるいは、仕事での些細なミスや上司からの叱責など、もう過ぎ去ってしまった過去の出来事をいつまでもずるずると気に病んでしまってはいないでしょうか。
ネガティブな感情が慢性的に心に巣くっている状態だと、人間は集中力を失ってしまいます。注意が散漫になったり忘れっぽくなったり、さらには創造力もしぼんでしまうのだそう。これでは仕事でも良いパフォーマンスを発揮できませんよね。
ネガティブな感情はどうしても生まれてきてしまうもの。だからこそ、適切に対処できる力をつける必要があるのです。
自分の中のネガティブな感情を見極めよう
ネガティブな感情は、いつもわかりやすいものであるとは限りません。特に不安やイライラなどは、「なんだかよくわからないけれど……」「うまく言えないけれど……」といったように、心の中にもやもやと浮かぶ場合が多いものですよね。したがって、これらに適切に対処できるようになるためには、この漠然とした感情をまずは整理して「自分が今、何を感じているのか」を具体的に知ることが肝心です。
ここではまず、自分の心の状態を知る方法を2つご紹介しましょう。どちらも、ちょっとした空き時間を使ってひとりでできる、お手軽な方法です。
1. フォーカシングを行なう
不安や焦りといった感情を「体の感覚」に焦点を当てながら探っていく方法です。
たとえば「スピーチの本番を想像すると胃が痛くなる」「職場の苦手な人に呼ばれると動悸が速くなる」といった経験がある方はいないでしょうか。このように、心で生まれた “言葉にできない感覚” が、身体感覚として発せられることがあるのです。この身体感覚に着目して自分の感情の正体を探すことがフォーカシングです。
体の感覚に変化が生じたら、それは何かを心で感じているのかもしれません。 「なぜスピーチ本番のことを考えると気が重くなるのか?」 「苦手な人を “苦手だ” と思う理由は何か?」 身体感覚に正直になり、その原因をこうして掘り下げていくことで、心の奥深くにある自分の本当の感情に気づくことができますよ。
2. 紙に書き出す
もやもやを言葉に表すと、自分の感情を客観的に見ることができるようになります。方法はいたってシンプル。どんなに些細な内容でもかまいませんので、ネガティブな感情の原因となっていそうな要素を紙に書き出していくのです。
たとえば会議でイライラしてしまった場合。「自分の発言を真剣に聞いてくれなかった」「失敗の責任を全て自分に押しつけられた」といったものから「終了予定時刻を大幅に超えた」「エアコンが効いていなくて部屋の空気が淀んでいた」といったものまで、いろいろあるかと思います。これらを言葉として心の外に出してあげましょう。
このとき、紙は自分だけのものですので、誰にも遠慮する必要はありません。躊躇することなく、思いついたままに書いていきましょう。頭の中が整理され、自分が今何に悩んでいるのかを冷静な気持ちになって眺めることができるようになるでしょう。
ネガティブな感情はときどき発散させてあげるのも大切
これら2つの方法を実践すれば、もやもやとした感情の正体がはっきりし、心が軽くなっていることに気づくはずです。とはいえ、それでもまだネガティブな感情が頭から離れないという方もいるかもしれませんね。
このような場合は、ネガティブな感情を思いきって外に発散させてあげるのも手です。そこで最後に、その方法を2つご紹介しましょう。
1. 人に話す
腹が立ったことを友だちに話したら案外すっきりしたという経験がある方も多いのではないでしょうか。いわゆる「愚痴を言う」というものですが、「言葉に出す」という点では、上で紹介した「紙に書き出す」と通ずる部分があり、同じような効果が期待されます。
さらに良いのは、ネガティブな感情を他者と分かち合えること。たとえば仕事の愚痴を誰かに言うのでしたら、あなたの気持ちに理解を示してくれる人がよいでしょう。大学時代の友人や親しい同僚などに、心の中を打ち明けてみてはいかがでしょうか。心の負担が軽減されるはずです。
2. 歌を歌う
歌には感情の発散効果があります。ネガティブな感情に苛まれて溜まってしまったストレスを発散するには、歌を歌うのも効果的ですよ。
楽しい曲を歌えば明るい気持ちになれるでしょうし、しんみりした曲を歌う場合でも、歌詞に共感したり歌に込められたメッセージに励まされたりして、ネガティブな感情が軽くなっていくでしょう。
また普通に声を出すのとは異なり、大きな声で歌を歌う際は自然と複式呼吸になります。複式呼吸で大量の酸素を摂取することは、ストレスで酸欠状態になっている脳に酸素を供給することにもつながりますから、ストレスが解消され、思考もポジティブになっていきますよ。
*** 仕事をするうえで、ネガティブな感情が起こってしまうのは仕方のないこと。重要なのは、それをどう対処するかです。ネガティブな感情をうまく解消して、仕事を充実させましょう!
(参考) 斎藤孝 著 (2016),『イライラしない本 ネガティブ感情の整理法』, 幻冬舎. のびのびねっと|ストレスがつくる心の病気 久賀谷亮 著 (2016),『世界のエリートがやっている 最高の休息法』, ダイヤモンド社. PRESIDENT Online|仕事の悪玉ストレスを退治する4つの習慣 自律神経失調症 完璧ガイド|フォーカシングとは? ITmedia|ストレスを書き出すことで自分の頭を空っぽにする ガジェット通信|カラオケでストレスが発散できる3つの理由